
コラム COLUMN
再生医療股関節 注射で治る?股関節のヒアルロン酸・PRP治療の効果と違い

股関節の痛みで日常生活がつらい…でも手術には抵抗がある、という方は多いのではないでしょうか。そんな方に注目されているのが、「関節内注射による治療」です。特にヒアルロン酸注射とPRP(多血小板血漿)注射は、変形性股関節症の進行を抑えたり、痛みを和らげる可能性がある治療法として注目されています。
この記事では、整形外科専門医としての視点から、ヒアルロン酸注射とPRP注射の違い、効果、選び方について、わかりやすく解説します。
股関節の痛みの原因とは?
股関節の痛みの多くは、変形性股関節症という病気によるものです。これは関節の軟骨がすり減って炎症が起き、痛みや動きにくさが出てくる疾患です。加齢や過去のけが、先天的な形成不全が原因になることもあります。
初期では「立ち上がるときに痛い」「長時間歩けない」といった症状から始まり、進行すると「夜間も痛む」「杖が必要になる」といった生活への影響が大きくなります。
このような状態に対して、手術ではなく注射による保存療法を選択する人も増えてきています。
ヒアルロン酸注射とは?
ヒアルロン酸は、関節内に本来存在する「潤滑液」に含まれる成分で、関節の動きをなめらかにする役割を果たしています。ヒアルロン酸注射は、関節内に人工のヒアルロン酸を直接注入することで、摩擦を減らし、炎症を抑えて痛みを和らげる治療です。
整形外科ではひざの治療で広く使われていますが、股関節にも応用されており、初期から中期の変形性股関節症に対しては一定の効果が期待できます。
ただし、ヒアルロン酸は体内で徐々に吸収されてしまうため、繰り返しの注射が必要になる点がデメリットです。
PRP注射とは?
PRP(Platelet-Rich Plasma)注射は、自分の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、関節内に注入する治療法です。血小板には、組織修復や炎症を抑える「成長因子」が多く含まれており、自己修復力を活かした再生医療の一種として注目されています。
PRPは副作用が少なく、ナチュラルな治療法として支持されています。ヒアルロン酸とは異なり、組織の再生や炎症の抑制が期待できることから、スポーツ選手を中心に急速に広がってきました。
股関節へのPRP注射も、初期から中期の関節症に対して効果を感じる方が多いのが特徴です。1回の注射で長期間効果が続くこともあり、注射の回数を減らしたい方にも向いています。
ヒアルロン酸とPRPの違いを比較
項目 | ヒアルロン酸注射 | PRP注射 |
---|---|---|
効果の仕組み | 潤滑・炎症の緩和 | 組織修復・炎症の抑制 |
対象 | 初期〜中期の関節症 | 初期〜中期の関節症 |
注射の頻度 | 定期的に継続が必要 | 1回でも長期間持続する場合あり |
使用成分 | 合成ヒアルロン酸 | 自分の血液から抽出 |
安全性 | 高い(アレルギーの心配はほぼなし) | 自己血由来で非常に高い |
どちらの治療を選ぶべき?
ヒアルロン酸注射とPRP注射にはそれぞれのメリットがあります。
まずは手軽に始めたい方にはヒアルロン酸が向いていることが多いですが、より根本的な改善を目指したい方や、注射の回数を減らしたい方にはPRPの方が適していることもあります。
当院では、患者様の年齢、症状の進行度、ライフスタイルに合わせて最適な治療をご提案しています。初回カウンセリングではレントゲンなどの画像診断も行い、納得いただいた上で治療を開始します。
手術以外の選択肢としての注射治療
「股関節が痛いけど、手術は避けたい」「なるべく自分の力で治したい」という方にとって、ヒアルロン酸注射やPRP注射は、体にやさしい治療法として有効な選択肢です。
すべての方に効果があるわけではありませんが、早めに治療を開始することで、手術を回避できるケースもあります。
まずは専門の医師にご相談ください。変形性股関節症は早期の対処が肝心です。


各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約