
コラム COLUMN
膝 立ち上がりで膝が痛いときに考えるべき3つの原因

「椅子から立ち上がるときに膝が痛い」「しゃがんだ後に膝がズキッとする」といった症状は、日常生活でよく見られるものです。一時的な疲れや加齢のせいと片付けてしまいがちですが、実は初期の関節疾患のサインかもしれません。
この記事では、立ち上がり動作で膝が痛むときに考えるべき3つの主な原因について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。早期に気づくことで、将来的な悪化を防ぐヒントにもなりますので、ぜひ参考にしてください。
原因① 変形性膝関節症の初期症状
立ち上がりで膝が痛む症状で、最も多い原因のひとつが変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。これは、加齢や使いすぎによって膝の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで炎症や痛みが起こる疾患です。
特に初期には「歩き出しの一歩目」「立ち上がるとき」など、関節に負荷がかかる瞬間にだけ痛みを感じることが多く、日常生活の中で見過ごされがちです。
軟骨のすり減りは年齢とともに進行するため、40代以降の方でこうした症状が出始めた場合、変形性膝関節症の可能性を疑ってみる必要があります。放置すると徐々に進行し、階段の昇り降りや歩行そのものにも支障をきたすようになります。
原因② 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
膝関節の中には「半月板」と呼ばれるクッションのような軟骨組織があります。この半月板は、関節にかかる衝撃を吸収する役割を果たしていますが、年齢とともに弱くなり、ふとした動作で傷ついてしまうことがあります。
特に、中高年でスポーツ歴がある方や、しゃがむ・立つといった動作が多い方に多くみられます。半月板が損傷していると、立ち上がり時にズキッと鋭い痛みが走ったり、関節の引っかかり感、膝が伸びきらないなどの症状を伴うこともあります。
MRI検査で診断がつきやすく、損傷の程度によっては保存療法(運動療法や注射治療)で改善するケースもあれば、場合によっては関節鏡手術が検討されることもあります。
原因③ 関節周囲の筋力低下と膝蓋下脂肪体の炎症
あまり知られていませんが、膝関節の周囲にある膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)という組織も、痛みの原因になることがあります。この脂肪体は、膝の動きに応じて滑らかに動く柔らかい組織ですが、繰り返しの負担や筋力低下によって炎症を起こすと、膝前方に痛みを感じやすくなります。
特に立ち上がりなどの動作で、膝のお皿の下あたりに痛みが集中する場合は、この脂肪体の炎症が疑われます。筋肉量が減ってきた中高年の方や、体重が増加傾向にある方に多く見られます。
リハビリテーションや筋トレ、ストレッチなどで改善することが多く、再生医療や注射療法などの選択肢もあります。
放置せず、専門医の診断を
「立ち上がりのときだけ痛いから、まだ大丈夫」と思ってしまうかもしれませんが、それは体が発している初期サインです。痛みを我慢したり、自己流の対処を続けることで、関節の状態が悪化するケースもあります。
整形外科専門医の診察を受けることで、原因を特定し、適切な治療を早期に始めることが可能です。特に変形性膝関節症や半月板損傷の初期段階であれば、手術を避けて保存療法や再生医療での改善が期待できます。
まとめ:日常の“違和感”が最初のサイン
立ち上がりの痛みは、膝関節からの小さな警告です。変形性膝関節症、半月板損傷、脂肪体炎症など、原因はさまざまですが、いずれも早期の診断と対処が重要です。
「いつもと違うな」と思ったときには、我慢せずに医療機関を受診することをおすすめします。将来の歩行能力を守るためにも、今の一歩が大切です。


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