
コラム COLUMN
股関節 階段の上り下りで股関節が痛むときの原因と改善策

階段を上るときや下りるときに、股関節の痛みを感じたことはありませんか?
「なんとなく違和感がある」「最近、スムーズに動けなくなってきた」といった軽い症状も、放っておくと悪化する可能性があります。この記事では、階段動作で股関節が痛む原因や考えられる病気、そして再生医療を含めた改善策について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
階段で痛む股関節、その背景にある動きとは?
階段の上り下りは、日常生活の中でも股関節に大きな負担がかかる動作です。特に「片脚立ちで体重を支える」「脚を大きく動かす」「瞬間的に力を入れる」など、複雑な筋肉や関節の動きが求められます。そのため、股関節の関節軟骨や周囲の筋肉、腱、神経などに何らかのトラブルがあると、階段動作で痛みが表れやすくなるのです。
痛みの主な原因①:変形性股関節症
中高年の股関節痛で最も多いのが「変形性股関節症」です。これは、股関節の軟骨がすり減って、骨同士がこすれ合うことで炎症や痛みが起きる疾患です。階段の上り下りや立ち上がり、長時間歩いたときに痛みが強く出る傾向があります。初期は「なんとなく股関節がつまるような感じ」があり、徐々に動きが制限されていくのが特徴です。
特に女性に多く、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全(骨盤側の受け皿が浅い)がある方は要注意です。
痛みの主な原因②:腸腰筋炎や滑液包炎
股関節の前側に痛みを感じる場合、「腸腰筋炎」や「大腿直筋腱炎」「腸骨筋滑液包炎」が考えられます。腸腰筋は股関節を曲げる重要な筋肉で、階段を上るときに大きく使われます。この部分に炎症があると、階段を上がるときや脚を高く上げる動作で痛みが走るようになります。
炎症が強い場合には、夜間痛やズキズキする痛みが出ることもあり、急性期にはアイシングや安静が必要です。
痛みの主な原因③:梨状筋症候群や坐骨神経痛
階段を下りるとき、股関節からお尻や太もも裏にかけてビリビリした痛みやしびれがある場合、「梨状筋症候群」や「坐骨神経痛」の可能性も考えられます。これらは、股関節近くの筋肉や神経に圧迫が加わることで起こり、階段動作時の筋肉の収縮や伸展がトリガーになります。
坐骨神経痛は腰部から始まるため、股関節だけでなく腰や脚の広い範囲に症状が出ることが多いのが特徴です。
改善策①:股関節周囲の筋力トレーニング
筋力の低下は、股関節への負担を増やします。股関節まわり、特に中臀筋や腸腰筋、大腿四頭筋を鍛えることで、関節を安定させ、痛みを和らげる効果が期待できます。スクワットやヒップリフト、階段の昇降運動などが有効ですが、痛みが強い場合は理学療法士や専門医の指導のもとで行いましょう。
改善策②:体重管理と姿勢の見直し
体重が増えると、それだけ股関節にかかる負担も大きくなります。特に階段を下りるときには、自分の体重以上の衝撃がかかることもあるため、適正体重の維持はとても重要です。また、猫背や反り腰といった不良姿勢も股関節に負担をかける原因になるため、日常生活の姿勢にも注意が必要です。
改善策③:再生医療という選択肢
従来、変形性股関節症が進行すると、最終的には人工関節置換術が選択されることが多くありました。しかし、最近では手術をせずに、関節の修復を目指す「再生医療」が注目されています。
たとえば、自分の脂肪や血液から抽出した幹細胞やPRP(多血小板血漿)を注入し、軟骨の修復や炎症の改善を図る方法です。当院でもこのような再生医療を導入しており、階段の上り下りが辛かった患者さまが、数ヶ月後にはスムーズに動けるようになった例も少なくありません。
再生医療はすべての人に適応があるわけではありませんが、「できるだけ手術を避けたい」「元の関節を残したい」といった希望を持つ方には有力な選択肢となります。
まとめ
階段の上り下りで股関節が痛むとき、原因はさまざまですが、多くの場合は早期の対応で改善が可能です。自己判断で放置せず、まずは整形外科専門医に相談することが大切です。
症状が進行する前に、自分に合った治療法や生活改善を取り入れていきましょう。手術以外の選択肢として、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。


各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約