コラム COLUMN
膝の痛み膝 膝の裏が腫れた!ベーカー嚢腫とは?
ベーカー嚢腫(のうしゅ、またはベーカー嚢胞)は、膝の裏側に位置する滑液包と呼ばれる袋に炎症が起き、関節液が溜まって膨らんだ状態を指します。主に膝の裏が腫れ、圧迫感や動かしづらさを感じることが特徴です。この腫瘤は、悪性の腫瘍ではないため、生命に危険を及ぼすものではありませんが、症状によっては生活の質に影響を与えることがあります。
ベーカー嚢腫の原因
ベーカー嚢腫は、膝関節の異常や疾患に伴って発生することが多いです。代表的な原因には以下のようなものがあります。
- 関節リウマチ:関節の炎症が原因で関節液の分泌が増加し、滑液包に溜まります。
- 変形性関節症:軟骨のすり減りや摩耗により関節液の分泌が増加し、滑液包に圧力がかかります。
- 半月板損傷や軟骨損傷:膝関節に負担がかかることで炎症が起こり、関節液が滑液包に溜まります。
- 運動や過度な膝の使用:スポーツや日常の活動で膝を酷使することで、滑液包が炎症を起こしやすくなります。
ベーカー嚢腫の症状
ベーカー嚢腫の主な症状は以下の通りです。
- 膝の裏側の腫れや膨らみ
- 膝を曲げたり伸ばしたりする際の圧迫感や違和感
- 膝の裏の痛み(特に嚢腫が大きくなると痛みが強くなることがあります)
- 腫瘤の大きさが増すとふくらはぎに広がり、筋肉の中に入り込むこともあります
ベーカー嚢腫の診断
ベーカー嚢腫の診断は、医師が膝の裏やふくらはぎの腫れを触診することによって行います。触診だけで診断が難しい場合、以下のような画像検査を用いることがあります。
- 超音波検査:滑液包の内部の状態を確認し、他の腫瘍との鑑別に役立ちます。
- MRI検査:嚢腫の広がりや周囲の組織の状態を詳細に把握するために用いられます。
- 関節造影検査:関節内の構造を詳しく見るための検査で、深部静脈血栓症との区別にも役立ちます。
ベーカー嚢腫の治療法
ベーカー嚢腫の治療は、症状の程度や原因に応じて異なります。一般的な治療法には以下のものがあります。
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):炎症を抑え、痛みを緩和するために使用されます。
- 穿刺と吸引:注射器を用いて滑液包内の液体を吸引する方法です。一時的に症状が改善することがありますが、再発することもあります。
- ステロイドの注射:穿刺後に炎症を抑えるためのステロイド薬を注射することがあります。
- 手術:痛みが非常に強い場合や他の治療法が効果を示さない場合、滑液包を手術で切除することがあります。ただし、侵襲が大きく再発のリスクもあるため、手術は最後の手段とされます。
ベーカー嚢腫の予防と管理
ベーカー嚢腫の予防には、膝への過度な負担を避けることが重要です。日常生活で以下の点に注意することで、発症や再発のリスクを減らすことができます。
- 適度な運動:膝に過度な負担をかけない範囲での運動を心がけることが大切です。特に、ウォーキングや水泳などの低負荷の運動が推奨されます。
- 体重管理:適正体重を維持することで、膝への負担を軽減できます。
- ストレッチ:膝周辺の筋肉を柔軟に保つために、定期的なストレッチを行いましょう。
まとめ
ベーカー嚢腫は膝の裏側に生じる滑液包の炎症による腫瘤で、主に関節リウマチや変形性関節症などが原因となります。診断には触診や画像検査が用いられ、治療法には非ステロイド系抗炎症薬、穿刺と吸引、ステロイドの注射、そして場合によっては手術が選ばれます。日常生活で膝への負担を減らし、適度な運動や体重管理を行うことで、ベーカー嚢腫の予防に努めましょう。
以上が、ベーカー嚢腫についての解説です。膝の裏に違和感や腫れを感じた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約