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膝 膝を曲げたときだけ痛いのはなぜ?専門医が解説

「歩くのは大丈夫だけど、しゃがんだときに膝が痛い」「階段の下りだけズキッとする」。このように、膝を曲げたときだけ痛みが出るという経験をされたことはありませんか?実はこのような症状には、いくつかの原因があり、放っておくと慢性化することもあります。
この記事では、関節の再生医療を専門とする整形外科専門医の立場から、膝を曲げたときに痛みが出る原因と対処法について、わかりやすく解説します。
曲げたときの痛み=膝関節にかかるストレスのサイン
膝は「屈伸」という複雑な動きができる関節です。曲げ伸ばしをするたびに、**軟骨・半月板・靭帯・筋肉・滑膜(かつまく)**などの組織が連動して働いています。
そのため、「曲げたときにだけ痛い」というのは、動的ストレスが加わったときに一部の組織に異常があるサインと考えられます。安静時や歩行時に痛みがないのに、屈曲動作でだけ痛みが出る場合、以下のような原因が考えられます。
原因① 半月板損傷
膝の中には「半月板(はんげつばん)」というクッションの役割をする軟骨組織があります。特に膝を曲げた状態では、半月板に圧力がかかります。
●損傷するとどうなる?
半月板に傷があると、屈伸やしゃがみ動作のたびに痛みや引っかかり感が出るようになります。スポーツや加齢で傷つくことが多く、自然に治ることは難しいため、放置は禁物です。
原因② 関節軟骨の摩耗(変形性膝関節症の初期)
加齢とともに、膝の関節軟骨は少しずつすり減っていきます。最初は動き始めや曲げたときだけ痛みが出ることが多く、安静時やまっすぐ立っているときは痛くないのが特徴です。
●軟骨のすり減りは要注意
この段階で対応しないと、やがて痛みが慢性化し、正座や階段の上り下り、ひざの屈伸が難しくなる可能性があります。
原因③ 膝蓋大腿関節(PF関節)の炎症
膝のお皿(膝蓋骨)と太ももの骨(大腿骨)の間にも関節があります。**膝蓋大腿関節(PF関節)**と呼ばれ、曲げたときにこすれやすい構造になっています。
●若年者〜中高年まで
スポーツや姿勢不良が原因で、この部分に炎症が起こると、階段の下りや椅子からの立ち上がりで膝前面に痛みが生じます。女性に多い症状です。
原因④ 関節の裏側の滑液包炎や筋膜の緊張
膝の裏側には「滑液包」という関節の潤滑を助ける袋があります。膝を曲げる動作で圧迫されやすく、長時間の正座や立ち仕事で腫れや痛みが出ることがあります。
また、太ももの裏の筋膜が緊張していても、屈伸動作に影響を与えるため、膝の曲げ伸ばしで違和感や痛みが出ることがあります。
対処法|早期の診断と適切な対応がカギ
「曲げたときにだけ痛いから大丈夫」と自己判断して放っておくと、症状が進行するおそれがあります。以下のような対処法を検討しましょう。
1. まずは整形外科での診断を
痛みの出る動作や部位を詳しく伝えることで、画像検査(レントゲン、MRI)で原因を特定できます。原因によって治療方針は大きく異なるため、早めの診察が重要です。
2. サポーターやテーピングで負担軽減
膝を曲げたときの痛みが出る動作を制限するために、サポーターやテーピングを利用するのも一つの方法です。特にスポーツをされる方は効果的です。
3. 再生医療での軟骨・半月板の修復を目指す
もしも関節の軟骨損傷や半月板損傷が原因の場合、PRP療法や脂肪由来幹細胞治療といった再生医療によって、損傷部の回復を促すことができます。
手術を回避したい方、早期に症状を改善したい方にとっては、これらの治療は非常に有効です。
膝を曲げたときの痛みは「放置しない」が正解
膝を曲げたときだけの痛みだからといって、軽視してはいけません。関節の異常や炎症の初期サインであることも多く、早期発見・早期対応がその後の人生の活動レベルに直結します。
日常生活や趣味を快適に楽しみ続けるためにも、「おかしいな」と感じたときには、ぜひ整形外科専門医の診察を受けてください。


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