
コラム COLUMN
膝 膝に水がたまるのは自然に治る?治療が必要なケースとは

ふとした時に「膝が腫れている」「膝が熱を持っている」「動かしにくい」と感じたことはありませんか?これらの症状は、膝に“水がたまる”状態、すなわち「関節水腫」のサインかもしれません。
膝に水がたまるのは、一見すると自然に引いていくように感じるかもしれませんが、原因によっては放置することで悪化し、慢性化してしまう可能性もあります。本記事では、膝に水がたまる原因や放置してもよいケースと治療が必要なケースについて、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
膝に水がたまるとはどういう状態?
「膝に水がたまる」とは、医学的には膝関節内に存在する関節液が過剰に分泌され、関節包内に貯留する状態を指します。通常、関節液は関節の動きをスムーズにし、軟骨や組織を保護する潤滑油のような役割を果たしています。しかし、関節に炎症や負担がかかると、この関節液が過剰に分泌され、腫れや熱感、痛みを引き起こすのです。
水がたまる原因とは?
膝に水がたまる原因として、以下のような疾患や状態が挙げられます。
1. 変形性膝関節症
中高年に多く見られる疾患で、関節軟骨のすり減りにより炎症が起こり、水がたまりやすくなります。
2. 関節リウマチ
自己免疫の異常によって関節に慢性的な炎症が起き、水が慢性的にたまるケースがあります。
3. 半月板損傷や靱帯損傷
スポーツや転倒による膝の外傷でも、水が急激にたまることがあります。これらはMRIなどでの診断が必要です。
4. 感染性関節炎(化膿性関節炎)
細菌感染により関節内に膿のような液体がたまる危険な状態で、早急な治療が必要です。
5. 痛風・偽痛風
尿酸やピロリン酸カルシウム結晶の沈着によって急激な炎症と関節液の貯留が起こります。
自然に治ることもある?放置してもいいケースとは
軽度の関節炎や一時的な膝への負担による水たまりであれば、安静・冷却・圧迫・挙上(RICE処置)などによって自然に引いていくこともあります。若年層で外傷のない軽度の腫れなどで、痛みや可動域制限がなければ、様子を見ることもあります。
ただし、数日経っても腫れが引かない、痛みが増す、熱を持つといった症状がある場合は、原因を明らかにする必要があります。見た目では判断できない疾患が隠れている場合があるため、早期の受診が重要です。
治療が必要なケースとは?
以下のようなケースでは、専門医による診断と治療が必要です。
- 膝がパンパンに腫れている
- 強い痛みや熱感がある
- 発熱を伴っている
- 関節が動かしにくくなった
- 水が繰り返したまる
このような場合、関節液を注射器で抜いて検査を行うことがあります(関節穿刺)。細菌感染が疑われる場合は、すぐに抗菌薬の投与や入院治療が必要になることもあります。
また、変形性膝関節症や関節リウマチが原因の場合は、根本疾患への治療も並行して行います。近年では、再生医療やPRP療法といった「切らない治療」の選択肢も増えており、注目を集めています。
早めの受診が膝を守る第一歩
「膝に水がたまっても、そのうち治るだろう」と放置してしまうと、関節の炎症が慢性化し、軟骨や靱帯に悪影響を及ぼすことがあります。早期の診断と治療によって、将来的な関節の変形や機能障害を防ぐことができます。
気になる腫れや違和感がある方は、早めに整形外科を受診し、専門医の診断を受けることをおすすめします。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ
膝に水がたまるのは体からの「何かがおかしい」というサインです。自然に治る場合もありますが、原因を見極め、適切に対処することが何より大切です。慢性化を防ぎ、健康な膝で日常生活を快適に過ごすためにも、早めの対応を心がけましょう。


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