
コラム COLUMN
膝 ひざがカクカクする・抜けそうになる症状の原因と対処法

「歩いていたら、急にひざがカクッとなって怖かった」「階段を降りるときに、ひざが抜けそうで不安になる」このような経験をされたことはありませんか?この“ひざの不安定感”は、単なる疲れではなく、関節の異常や筋力の低下などが背景にある可能性があります。
今回は、ひざがカクカクする・抜けそうになる症状の原因や注意すべき疾患、整形外科専門医としての対処法と予防策について、わかりやすくご説明いたします。
ひざが「カクカクする」「抜けそうになる」とは?
まず、患者さんが「カクカクする」と表現する症状には2つのパターンがあります。
一つは、膝関節がしっかり固定されずにグラつくような感覚。もう一つは、関節が外れそうになるような“抜け感”です。どちらも「関節の不安定性」が関係していることが多く、日常生活での支障や転倒リスクにもつながります。
主な原因①:靭帯損傷(ACL・MCLなど)
ひざ関節は靭帯によって支えられています。特に前十字靭帯(ACL)は、ひざの安定性に深く関わる組織です。スポーツ中のケガや加齢による劣化などで靭帯が損傷すると、歩行時や方向転換時に「グラッ」「カクッ」とする感覚が出現します。
完全に断裂している場合は、MRIでの精密検査と、必要に応じて再建手術も検討されます。
主な原因②:半月板損傷
半月板は、ひざの骨と骨の間でクッションの役割を果たす軟骨組織です。加齢や運動によって損傷すると、関節内での引っかかり感や、急にひざが伸びなくなる「ロッキング現象」が起こることもあります。これも「カクカクする」と表現されやすい症状の一つです。
主な原因③:変形性膝関節症(OA)
中高年層に多いのが、関節軟骨のすり減りによって関節が変形していく変形性膝関節症です。軟骨が不均等に減ることで関節がうまくかみ合わず、歩行中に不安定感や抜けるような感覚が生じます。
この疾患は進行性であり、初期には違和感程度だったものが、進行すると階段の昇降や長時間の歩行が難しくなってきます。
主な原因④:筋力低下とバランス能力の低下
加齢や運動不足によって太ももの筋肉(大腿四頭筋)が弱くなると、ひざを安定させる力が低下します。また、バランス感覚が衰えると、小さな段差でもひざがグラつく原因となります。
特に高齢者においては、筋力低下と感覚機能の衰えが重なることで、転倒リスクが非常に高くなるため注意が必要です。
対処法:どうすればよい?
- 整形外科での診断を受ける
ひざの症状は、レントゲンやMRIによって原因を特定できます。自己判断せず、まずは医師の診察を受けましょう。 - 筋力トレーニングを取り入れる
太ももの筋肉を中心とした筋トレ(スクワットやレッグエクステンション)は、関節の安定化に有効です。 - サポーターの活用
歩行時や運動時にひざ用サポーターを使用することで、不安定感を軽減できます。ただし、長期間の使用は筋力低下を招くため注意が必要です。 - 再生医療という選択肢
関節の不安定感の原因が軟骨損傷や半月板の変性である場合、近年注目されているPRP療法や脂肪由来幹細胞治療といった再生医療も有効です。これらは、関節内の炎症を抑えたり、軟骨の再生を促す治療法であり、特に手術を避けたい方には選択肢となります。
放置するとどうなる?
ひざの不安定感を放置していると、関節内の構造にさらなる負担がかかり、損傷が進行してしまう恐れがあります。結果として、より高度な治療や人工関節置換術が必要になるケースもあるため、早期の対応が大切です。
まとめ
「ひざがカクカクする」「抜けそうになる」という症状は、加齢だけが原因ではありません。靭帯や半月板の損傷、関節軟骨の変性、筋力の低下など、さまざまな要因が考えられます。
放置せず、まずは整形外科を受診し、正しい診断と対処法を知ることが大切です。そして必要に応じて、リハビリや再生医療といった方法を組み合わせながら、快適な生活を目指していきましょう。


各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約