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膝 鵞足炎とは?膝の内側が痛む原因と正しい対処法

膝の内側がチクチク痛む、階段の上り下りや歩行時に違和感を覚える——そんな症状に悩まされている方はいませんか?それは「鵞足炎(がそくえん)」かもしれません。
膝関節の内側にある筋肉の付着部に炎症が起こるこの疾患は、日常生活に支障をきたすこともあり、放置すると慢性化する可能性もあります。本記事では、鵞足炎の原因や症状、正しい対処法について整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
鵞足とは?名前の由来と役割
「鵞足」とは、膝の内側にある3つの筋肉(縫工筋・薄筋・半腱様筋)が脛骨(すねの骨)の同じ部位に集まって付着する様子が、ガチョウの足のように見えることから名付けられた解剖学用語です。
この部位は膝の安定性に関与し、股関節の動きや膝の曲げ伸ばしにも関わっています。そのため、日常動作やスポーツ活動において負担がかかりやすい部位といえるでしょう。
鵞足炎の原因は?
鵞足炎は、以下のような原因で鵞足部に繰り返しのストレスや摩擦が加わることで発症します。
- スポーツ活動(ランニング・サッカー・バスケットボールなど)
- 急な運動開始や過度なトレーニング
- O脚やX脚などのアライメント異常
- 柔軟性の低下や筋力のアンバランス
- 体重増加による膝への負担
特に、ランニング初心者や運動習慣の少ない方が急に運動を始めた場合に多くみられます。
鵞足炎の主な症状
鵞足炎の症状は以下のようなものが一般的です。
- 膝の内側(脛骨の少し上)に痛みがある
- 階段の上り下りや椅子からの立ち上がりで痛む
- 押すとピンポイントで痛みがある
- 膝の動き自体は保たれている
初期には運動後に違和感を感じる程度ですが、進行すると日常生活でも痛みを感じるようになります。
鵞足炎の診断方法
診察では問診と触診に加え、鵞足部を押して痛みがあるかを確認します。必要に応じてX線やMRIを用いて、他の膝の疾患(半月板損傷や変形性膝関節症)との鑑別を行います。
鵞足炎は画像検査では明確に写らないこともあるため、症状の特徴と診察所見が重要です。
鵞足炎の治療とセルフケア
鵞足炎の治療は多くの場合、保存療法(手術以外の治療)で改善します。主な対処法は以下の通りです。
① 安静とアイシング
運動を控え、痛みのある部位を1回15~20分程度冷やすことで炎症を抑えます。
② ストレッチとリハビリ
太もも内側やハムストリングの柔軟性を高めるストレッチが有効です。理学療法士による指導のもと行うとより効果的です。
③ インソールや靴の見直し
O脚などアライメントの問題がある場合、インソールで膝の負荷を調整することもあります。
④ 炎症を抑える薬物療法
痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤の内服や塗り薬が処方されることがあります。
⑤ PRP治療・再生医療の選択肢
近年では、関節周囲の組織の修復を促すPRP治療(多血小板血漿療法)や、幹細胞治療といった再生医療も注目されています。慢性的な鵞足炎に対して、自然治癒力を高めるアプローチとして期待されています。
鵞足炎を予防するために
鵞足炎を予防するためには、日頃からのケアが大切です。
- 運動前のウォームアップとストレッチを丁寧に
- 股関節・膝周囲の筋力バランスを整える
- 体重管理を心がける
- 無理のない運動計画を立てる
特に40代以降は筋肉の柔軟性が低下しやすく、ちょっとしたことで膝を痛めやすくなります。普段から「痛くなる前のケア」を意識しましょう。
まとめ:膝の内側が痛むなら早めの対処を
膝の内側に痛みがある場合、それが鵞足炎かもしれません。軽い痛みでも放置すれば悪化するリスクがあります。まずは整形外科での正確な診断を受け、適切な対処を行うことが重要です。
当院では、保存療法に加え、再生医療を用いた新しい治療にも対応しています。膝の痛みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。


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