
コラム COLUMN
手指のこわばりや痛みから考える整形外科的アプローチ|年齢のせいとあきらめないで

この記事の内容
朝、手が動かしにくい…そんな経験ありませんか?
「朝起きたとき、指がこわばって曲げ伸ばしがしにくい」「ペットボトルのキャップを開けるときに痛みが走る」――そんな悩みを抱えて来院される方が、50代以降の方を中心に増えています。
「年だから仕方ない」と思っている方も少なくありませんが、実は整形外科で適切な診断と対策をとることで、改善が見込めるケースも多いのです。
本記事では、手指のこわばりや痛みの原因、考えられる病気、そして整形外科での治療や日常でできる対策について、わかりやすくご紹介します。
症状が出やすい場面と日常での困りごと
手指のこわばりは、多くの方が朝起きた直後に感じます。しばらくすると動かせるようになるため放置されがちですが、進行すると以下のような日常動作にも支障が出ます。
- お箸やペンをうまく持てない
- ドアノブが回しにくい
- 洗濯ばさみをつまむと痛い
- 細かい作業が苦痛になる
また、痛みや腫れ、動かしづらさを伴うこともあり、関節が変形してくることもあるため、早めの対応が大切です。
考えられる主な原因と病気
整形外科の視点から、手指のこわばりや痛みに関連する代表的な疾患をいくつかご紹介します。
1. へバーデン結節・ブシャール結節
中高年の女性に多く見られる指の関節の変形性疾患です。へバーデン結節は第1関節(指先)、ブシャール結節は第2関節に生じます。痛みや腫れ、変形を伴い、徐々に進行します。
2. 手根管症候群
手のひらにある「正中神経」が圧迫されることで、親指〜中指にかけてのしびれや痛み、夜間のこわばりが起こる疾患です。更年期以降の女性に多く見られます。
3. 関節リウマチ
免疫の異常により、関節が炎症を起こす病気です。朝の強いこわばりや、複数の関節の腫れ・痛みが特徴です。放置すると関節の破壊や変形が進行するため、早期発見と治療がカギとなります。
4. ばね指(弾発指)
指の腱の通り道で炎症が起こり、腱が引っかかって指がスムーズに動かせなくなる状態です。「曲げるとカクッと戻る」「痛みが強い」といった症状があります。
整形外科での治療法と対策
症状や疾患によって治療法は異なりますが、一般的には次のようなアプローチが取られます。
1. 保存療法(手術以外の治療)
- 消炎鎮痛剤や塗り薬
痛みや腫れを抑えるために用いられます。 - 装具療法
指を保護し、過度な動きを制限するためにサポーターやテーピングを使用します。 - 関節注射
ステロイドやヒアルロン酸の注射で、痛みや炎症を抑えます。 - リハビリやストレッチ
可動域を維持し、筋力低下を防ぐために行います。
2. 手術療法
保存療法で改善しない場合や、日常生活に大きな支障がある場合には、腱鞘の切開や人工関節置換術などの手術が検討されます。
3. 生活習慣の見直し
- 手指を冷やさないよう手袋を活用する
- 長時間の同じ作業を避け、こまめに休憩やストレッチを取り入れる
- 栄養バランスを意識した食生活も、炎症を抑える助けになります
よくある質問と誤解
Q. 痛いときは動かさない方がいいですか?
A. 急な強い痛みがあるときは安静が必要ですが、ずっと動かさないと関節が固まってしまいます。医師の指導のもと、適度な運動やストレッチを続けることが大切です。
Q. リウマチじゃなければ心配しなくていい?
A. へバーデン結節や手根管症候群も放置すると進行し、生活の質を大きく下げることがあります。症状が軽いうちに医師に相談しましょう。
Q. 治療しても完全には元に戻らない?
A. 完全に元の状態に戻すことが難しい場合もありますが、痛みの軽減や機能の維持・改善は十分可能です。症状に合わせた早めの対策が重要です。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ:年齢のせいと諦めず、手をいたわる一歩を
手指のこわばりや痛みは、日常の小さな動作にも影響を与える厄介な症状です。「年だから仕方ない」と放置せず、気になる症状がある方は、整形外科での診断を受けることをおすすめします。
正しい知識とケアを身につけることで、これからの生活をより快適に、前向きに過ごすことができます。気になる症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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