コラム COLUMN
膝 なぜ人工膝関節置換術の術後の満足度が高くないのか?
人工膝関節置換術(TKA: Total Knee Arthroplasty)の術後の満足度は、人工股関節置換術と比較するとかなり低いものとなっています。痛みの軽減や生活の質の改善を感じることはあるものの、調査によると手術後に満足している患者は約70%に過ぎず、依然として20~30%の患者が手術結果に満足していないという現状があります。
満足度が低い理由
以下のような要因が、満足度の低さに寄与しています。
1. 術後の痛みや不快感の持続
一部の患者は、TKA後も痛みや違和感を感じることがあります。関節自体は置換されているものの、周囲の筋肉や神経、軟部組織に問題が残っている場合、術後も痛みが持続することがあります。特に、神経障害性疼痛などの持続的な痛みが満足度を低下させる要因となります。
2. 期待と現実のギャップ
患者が手術前に持っている期待が過度に高い場合、術後の現実とのギャップが生じ、満足度を下げることがあります。特に、「痛みが完全になくなる」「若い頃のように動ける」といった過度な期待を抱いていると、手術後のわずかな痛みや制限でも不満を感じやすくなります。
3. 可動域の回復不足
TKA後、膝の可動域が期待通りに回復しないことがあります。術前の状態が悪かった場合や、リハビリが適切に行われない場合、膝の屈伸や日常の動作に制限が生じ、これが満足度の低下につながります。
4. 膝関節の「自然な感覚」の欠如
人工膝関節は、元の膝関節と比べて「自然な感覚」を持たないことがあります。この人工的な感覚や膝の硬さ、ぎこちなさが、患者にとって不快に感じられることがあり、特に敏感な患者では満足度の低下に繋がります。
5. 心理的および精神的要因
心理的な要素も術後の満足度に影響します。例えば、手術や術後のリハビリに対する不安、手術後の生活の変化に適応するのが難しいと感じる患者は、術後の満足度が低い傾向にあります。また、術後に抑うつ状態や孤独感を感じる患者もおり、これが回復を遅らせ、満足度を低下させます。
6. 合併症や再手術の必要性
TKAには感染症や血栓、関節の不安定性などの術後合併症のリスクがあります。これらの合併症が発生した場合、生活の質が低下し、結果的に満足度が低くなります。また、場合によっては再手術が必要になることもあり、患者にとって大きな負担となります。
満足度に関する統計と研究
“Factors Influencing Patient Satisfaction after Total Knee Arthroplasty: A Systematic Review”
- 概要:TKA後の患者の満足度に影響を与える因子を調査した研究で、痛みの持続や心理的要因が満足度の低さに影響していることが指摘されています。
“Patient Satisfaction after Total Knee Arthroplasty: Comparison with Hip Arthroplasty and Predictors of Dissatisfaction”
- 出典: Journal of Bone and Joint Surgery, 2016. この研究では、TKAの術後における満足度が低い理由として術前の期待と現実のギャップや可動域の回復不足が指摘されています。
“Pain and Satisfaction after Total Knee Arthroplasty”
- 出典: The Journal of Arthroplasty, 2019. この研究では、患者の期待が現実と合わない場合、術後の痛みが残っている場合に満足度が低いことが確認されています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
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