
コラム COLUMN
その他 滑液包炎とは?

滑液包炎(かつえきほうえん)は、関節周囲に存在する滑液包と呼ばれる液体で満たされた小さな袋が炎症を起こす状態です。滑液包は、関節の動きを滑らかにし、摩擦を減らすクッションの役割を果たしています。しかし、過度の使用や外傷、感染などにより炎症が生じ、痛みや腫れを引き起こすことがあります。
滑液包炎の主な原因
滑液包炎の原因は多岐にわたりますが、主なものは以下のとおりです。
過度の使用や反復動作
特定の関節や筋肉を繰り返し使用することで、滑液包に過度の負担がかかり、炎症を引き起こすことがあります。例えば、長時間の膝立ち作業や、肩を頻繁に動かすスポーツ(野球の投球、テニスのサーブなど)が該当します。
外傷
関節やその周囲を強く打撲することで、滑液包が損傷し、炎症を起こすことがあります。膝をぶつけたり、肘を強打したりすることが例として挙げられます。
感染
傷口から細菌が侵入し、滑液包が感染することがあります。特に、黄色ブドウ球菌による感染が一般的です。
基礎疾患
痛風や偽痛風、関節リウマチなどの疾患が原因で滑液包炎を引き起こすことがあります。
滑液包炎が起こりやすい部位
滑液包炎は体のさまざまな部位で発生しますが、特に以下の部位でよく見られます。
肩関節(肩峰下滑液包炎)
肩関節の滑液包が炎症を起こすと、腕を上げる動作(ジャケットを着るときのような動作)で痛みが生じ、動きが制限されることがあります。
肘(肘頭滑液包炎)
肘の先端部分にある滑液包が炎症を起こすと、腫れが見られますが、痛みや動きの制限は軽度の場合が多いです。
膝(膝蓋前滑液包炎)
膝蓋骨(ひざのお皿)の上や下にある滑液包が炎症を起こすと、膝の前面に腫れや痛みが生じます。
股関節(転子部滑液包炎)
股関節の外側にある滑液包が炎症を起こすと、歩行時や横向きに寝たときに痛みを感じることがあります。
踵(アキレス腱滑液包炎)
踵の後ろ側に炎症が発生し、歩くと痛みを感じることがあります。
滑液包炎の症状
滑液包炎の症状は、炎症の程度や部位によって異なりますが、一般的には以下のような症状が見られます。
- 痛み:炎症を起こした部位を動かしたり、触れたりすると痛みを感じます。痛みの強さは軽度から重度までさまざまです。
- 腫れ:皮膚の近くにある滑液包が炎症を起こすと、腫れが目立つことがあります。
- 発赤と熱感:感染が原因の場合、患部の皮膚が赤くなり、熱を持つことがあります。
- 可動域の制限:痛みや腫れにより、関節の動きが制限されることがあります。
滑液包炎の診断
医師は、患者の症状や身体検査の結果から滑液包炎を疑います。特に、患部の圧痛や腫れ、関節の動きに伴う痛みが診断の手がかりとなります。
問診・視診・触診
- 症状の発生状況や痛みの程度を確認します。
- 触診によって腫れや圧痛の有無を調べます。
滑液の採取(関節穿刺)
滑液包から液体を採取し、感染や痛風・偽痛風の可能性を確認します。
画像検査
- X線検査:骨の異常や関節炎の有無を確認します。
- MRI・超音波検査:滑液包の状態を詳細に評価するために実施します。
滑液包炎の治療
滑液包炎の治療は、原因や症状の重さによって異なります。
保存療法(軽度の場合)
- 安静と保護:患部の関節を休ませ、サポーターや包帯で固定します。
- 冷却療法:炎症を抑えるため、アイスパックで冷やします。
- 薬物療法:NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)を服用し、痛みや炎症を軽減します。
- 理学療法:痛みが和らいだ後、ストレッチや筋力強化を行います。
注射療法(痛みが強い場合)
- コルチコステロイド注射:炎症を抑えるために患部にステロイドを注射。
- 滑液穿刺:腫れがひどい場合、滑液を抜くことで症状を緩和。
感染が原因の場合の治療
- 抗生物質の投与:細菌感染が疑われる場合は、適切な抗生剤を使用します。
- 排膿処置:感染が進行している場合は、膿を排出する処置を行います。
手術(重症例)
慢性化して改善が見られない場合や、感染が重度の場合には滑液包を取り除く手術が検討されます。
滑液包炎の予防
滑液包炎を予防するためには、以下の点に注意しましょう。
- 過度な負荷を避ける:反復的な動作を減らし、適度な休息を取る。
- ストレッチと筋力トレーニング:関節周囲の筋肉を強化し、負担を軽減する。
- 適切なサポートを利用:スポーツ時にはサポーターやクッションを活用。
- 感染予防:傷口から細菌が侵入しないように清潔を保つ。
まとめ
滑液包炎は、関節の動きを滑らかにする「滑液包」に炎症が起こる疾患で、肩・肘・膝・股関節・踵などに多く見られます。主な原因は使いすぎや外傷、感染、基礎疾患によるものです。
治療は、安静・冷却・薬物療法などの保存療法が基本ですが、症状が強い場合にはコルチコステロイド注射や滑液穿刺、感染時には抗生物質の投与が必要になります。重症の場合は手術が検討されることもあります。
適切な治療と予防策を講じることで、滑液包炎の再発を防ぐことが可能です。違和感を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)


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