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膝 正座ができないのはなぜ?ひざの違和感・痛みの原因と治療法

「正座をするとひざが痛い」「以前はできていた正座が、最近つらくなってきた」――このような悩みを抱えている方は少なくありません。正座は、日常生活の中ではあまり意識されない動作ですが、日本の生活文化の中では特に重要な姿勢です。本記事では、正座ができない原因やひざの違和感・痛みの正体、そして有効な治療法について、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
正座ができない原因とは?
正座ができなくなる背景には、大きく分けて3つの要因が考えられます。
- 加齢による関節の変化 年齢を重ねることで、ひざ関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が起こることがあります。特に中高年以降に多くみられる「変形性ひざ関節症」は、正座が難しくなる代表的な疾患です。初期には「違和感」や「曲げづらさ」程度の症状ですが、進行すると痛みが強くなり、正座どころか歩行も困難になるケースもあります。
- ひざ周囲の筋力低下 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の筋力が低下すると、ひざを安定させる力が弱まり、曲げ伸ばしの動きに支障が出やすくなります。運動不足や加齢による筋肉量の減少が主な原因です。
- 過去のけがや手術の影響 靭帯損傷や半月板損傷、またはひざの手術歴がある場合、関節の可動域が制限されていることがあります。これも正座ができない一因となります。
ひざの違和感・痛みを引き起こす疾患とは?
正座がしづらい、または痛みを感じる場合、考えられる主な疾患には以下があります。
- 変形性ひざ関節症
中高年に多く、軟骨がすり減ることで関節が変形し、痛みや腫れを引き起こす疾患です。特に正座や階段の昇り降り時に強く痛みが出る傾向があります。 - 半月板損傷
ひざをひねったり急にしゃがみ込んだりした際に起こりやすいけがで、関節の中にあるクッションのような半月板が損傷します。痛みやひっかかり感があり、正座が困難になります。 - 関節リウマチ
自己免疫の異常により関節に炎症が起こる病気です。朝のこわばりや腫れ、痛みが特徴で、進行すると関節破壊を伴い、正座は困難になります。
ひざの痛みを我慢しないで!受診のタイミング
「少し違和感があるだけだから」「年齢のせいだろう」と自己判断で放置してしまう方も多いですが、症状があるときは早めに整形外科を受診することが大切です。初期の段階であれば、運動療法や注射治療などで進行を抑えられることもあります。
次のような症状がある場合は、受診をおすすめします。
- 正座ができない、または極端に痛い
- 階段の昇り降りでひざが痛む
- ひざに腫れや熱感がある
- 動き始めに強いこわばりを感じる
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
自宅でできる正座対策・予防法
日常生活でも、正座をしやすくするためにできることがあります。
- 太もも周りの筋力を保つトレーニング
- 体重管理(ひざの負担を減らす)
- 正座以外の座り方に変える(椅子を使うなど)
一時的に正座を避けてひざを休ませることも大切です。痛みを無理に我慢せず、症状が続くようであれば医療機関での相談をおすすめします。
まとめ
正座ができなくなる背景には、ひざの軟骨のすり減りや筋力低下、過去のけがなどが関係しています。違和感や痛みを放置せず、早めに専門医を受診することで、治療の選択肢も広がります。再生医療といった新しい治療法も登場しており、選択肢は確実に増えています。大切なのは、「もう年だから仕方ない」とあきらめずに、ひざの健康を見直す第一歩を踏み出すことです。


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