
コラム COLUMN
膝 関節水腫とは?膝に水が溜まる原因と治療法

「膝が腫れている気がする」「膝のお皿の上がぷよぷよしている」「曲げ伸ばしがしづらい」——こうした症状に心当たりがある方は、**関節水腫(かんせつすいしゅ)**かもしれません。
特に中高年の方、運動やスポーツをする人、あるいは立ち仕事が多い人に多くみられるこの症状。病院で「膝に水がたまっていますね」と言われた経験がある方も少なくないでしょう。
この記事では、関節水腫の正体と原因、放置した場合のリスク、そして治療法やセルフケアのポイントまで、整形外科専門医がわかりやすく解説します。
関節水腫とは何か?
関節水腫とは、膝関節の中に「関節液」が過剰にたまった状態を指します。健康な膝にも関節液は存在し、軟骨や骨の摩擦を防いだり、栄養を運ぶ役割を担っています。しかし、何らかの原因で炎症が起こると、関節液が通常よりも多く分泌され、関節内にたまってしまうのです。
この状態が続くと、膝の腫れ・重だるさ・曲げ伸ばしの制限などの症状が現れます。
なぜ膝に水がたまるのか?主な原因
膝に水がたまる原因にはさまざまありますが、大きく分けて以下の3つが代表的です。
1. 変形性膝関節症
中高年にもっとも多い原因です。加齢や長年の使用により膝の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きることで水がたまります。痛みをともなうことが多く、放置すると関節の変形が進行する可能性もあります。
2. 半月板損傷・靱帯損傷
スポーツや転倒などで膝の中の構造物(半月板や靱帯)を損傷すると、炎症反応によって水がたまります。若い世代やスポーツ愛好者に多くみられるタイプです。
3. 関節リウマチや痛風
免疫の異常や尿酸の結晶によって関節に炎症が起こり、水がたまることもあります。両膝に症状が出たり、手指の関節にも違和感がある場合は、これらの全身疾患の可能性も疑います。
関節水腫を放っておくとどうなる?
「痛くないからそのままにしている」という方もいますが、関節水腫は放置すべきではありません。
水がたまるということは、関節内で何らかの異常(炎症や損傷)が起きている証拠です。原因を取り除かずに放置すれば、以下のようなリスクが生じます:
- 軟骨のすり減りが進み、関節の変形が加速する
- 水が慢性的にたまり、何度も抜く必要が出てくる
- 関節の動きが悪くなり、日常生活に支障をきたす
関節水腫の診断と治療法
診断方法
整形外科では、触診・レントゲン・エコー・MRIなどを使って膝の状態を確認します。また、水がたまっている場合は、穿刺(注射器で水を抜く)して、液の性状(透明・濁り・血が混じっているなど)を調べることもあります。
主な治療法
- 穿刺(関節液の除去)
膝の腫れが強い場合、まず水を抜いて圧迫や不快感を軽減します。感染や出血の兆候があれば、検査に回すこともあります。 - ヒアルロン酸注射
水を抜いたあとに行われることが多い治療で、関節の潤滑性を高め、炎症を抑える効果があります。 - 消炎鎮痛剤の内服や湿布
炎症を抑えるために短期間使用することがあります。 - 再生医療(PRP療法・幹細胞治療)
再発を繰り返す場合や、変形性膝関節症が進行している場合には、自己修復力を活かす再生医療が有効です。PRP療法では血液から成長因子を抽出し、膝に注射することで炎症を抑え、組織の修復を促します。
セルフケアと予防のポイント
関節水腫の再発を防ぐためには、日常生活での予防とセルフケアも重要です。
- 膝を冷やす(アイシング)
運動後や長時間歩いた日の夜に15分ほど冷やすと、炎症の拡大を防げます。 - 太ももの筋力をつける
特に大腿四頭筋を鍛えることで、膝関節への負担が減り、炎症も起きにくくなります。 - 体重管理
体重が1kg増えると、膝にかかる負担は3〜4倍になるとも言われています。適正体重を保つことが膝への最大の優しさです。 - 正しい靴を選ぶ
クッション性の高い靴や、インソールを使って膝への負荷を軽減しましょう。
まとめ
関節水腫は、膝関節内に炎症が起きているサインです。単なる「水がたまる」だけで済ませず、その原因を明らかにし、早めの対応を取ることが重要です。
水を抜くだけでは根本的な解決にはならないこともあります。再発を繰り返す場合や、ヒアルロン酸注射でも改善しない場合は、再生医療などの新しい治療法も視野に入れて、専門医に相談してみましょう。


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