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腰 椅子から立ち上がると腰が痛い?原因とセルフケア法を専門医が解説

「椅子から立ち上がると腰にズキッと痛みが走る」「少し前かがみになったあとがつらい」――こんな経験はありませんか。特に50代から80代の方の中には、日常生活のちょっとした動作で腰痛を感じる方が少なくありません。痛みがあると「年齢のせいかな」と思ってしまいがちですが、実は原因を理解し、適切な対策を取れば改善が期待できます。この記事では、椅子から立ち上がると腰が痛むときに考えられる原因とセルフケア法を、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
症状や悩みの背景
腰痛は日本人が抱える代表的な症状の一つです。とくに椅子から立ち上がる動作は、腰の筋肉や関節に負担がかかりやすく、多くの方が「その瞬間」に痛みを訴えます。食卓から立ち上がるとき、車から降りるとき、トイレやソファから立つときなど、日常の動作で繰り返し起きるため、「また痛くなるのでは」と不安を感じる方も少なくありません。この不安が活動量の低下につながり、さらに筋力低下を招くという悪循環に陥ることもあります。
原因や医学的な解説
椅子から立ち上がると腰が痛む原因はいくつか考えられます。
- 腰椎や椎間板の加齢変化
加齢により椎間板(背骨のクッション)が弾力を失い、動作時に負担が増えます。これが痛みの背景となることがあります。 - 筋肉の緊張やこわばり
長時間座った後、腰や太ももの筋肉が硬くなっていると、立ち上がるときに一気に引き伸ばされ痛みを感じやすくなります。 - 姿勢の崩れ
猫背や骨盤の後傾が習慣になると、腰の関節に不均衡な負担がかかりやすく、立ち上がり動作で痛みが出ることがあります。 - 腰椎すべり症・脊柱管狭窄症
腰の骨がずれたり、神経の通り道が狭くなったりすることで、特定の動作時に痛みやしびれが出る場合もあります。 - 股関節や膝の障害
実は腰ではなく、股関節や膝の動きの悪さが原因で腰に負担が集中していることもあります。
具体的な治療法・対策・予防法
保存療法
まずは安静や湿布、鎮痛薬などで炎症や痛みを抑えることが一般的です。ただし「痛みがあるからといって動かさない」ことは逆効果になる場合があります。無理のない範囲で少しずつ体を動かすことが回復につながります。
セルフケアの工夫
- 立ち上がり動作の工夫
足を少し前に出し、手で太ももを押すようにして立つと、腰への負担を軽減できます。 - ストレッチと体操
腰回りや太ももの筋肉をやさしく伸ばすストレッチは有効です。特に「太もも前の筋肉(大腿四頭筋)」を柔らかく保つことが大切です。 - 筋力トレーニング
腹筋や背筋を支える体幹トレーニング、椅子に浅く腰かけてゆっくり立ち上がるスクワットなどが効果的です。 - 生活習慣の改善
長時間同じ姿勢を避ける、体重を適正に保つ、柔らかすぎない椅子やベッドを選ぶといった工夫も重要です。
医療機関での治療
保存療法で改善しない場合は、ブロック注射やリハビリテーションを行うこともあります。さらに症状によっては幹細胞治療といった再生医療が選択肢になることもありますが、まずは基本的な保存療法を行い、専門医と相談しながら進めることが大切です。
よくある質問・誤解への回答
Q1. 痛みがあるときは安静にした方がいいですか?
A. 完全な安静は筋力低下を招きます。無理のない範囲で体を動かすことが回復に役立ちます。
Q2. 椅子から立ち上がるときに音が鳴るのは大丈夫?
A. 関節や靭帯の動きによることが多く、痛みがなければ大きな問題はありません。ただし強い痛みやしびれを伴う場合は受診をおすすめします。
Q3. 年齢のせいだから仕方ないのでしょうか?
A. 加齢による変化はありますが、筋力や姿勢を整えることで痛みの改善や予防は十分可能です。
Q4. 痛みが強いときにストレッチをしても大丈夫?
A. 強い痛みがあるときは無理をせず、まずは安静や冷却で炎症を抑えましょう。痛みが落ち着いたら軽いストレッチを始めてください。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて「再生医療」という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体が本来持つ自然治癒力を引き出し、関節や組織の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を点滴で投与することで、膝や股関節だけでなく、腰痛などの慢性疼痛に対しても炎症を抑えたり、組織の修復を促したりする効果が期待されています。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無を医師がしっかり診断したうえで治療を検討することが大切です。
まとめ
椅子から立ち上がると腰が痛いという症状は、年齢とともに多くの方が経験します。しかし、原因を知り、正しいセルフケアや治療を行うことで改善を目指すことができます。「もう年だから仕方ない」と諦める必要はありません。腰は日常生活を支える大切な部分です。少しずつでもケアを続けることで、快適に立ち上がり、自由に動ける日常を取り戻しましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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