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スポーツ外傷膝 運動中に膝がぐらつく?靭帯損傷の可能性と治療法を専門医が解説

「歩いているときや運動中に膝がガクッとする」「踏ん張ろうとすると膝が安定せず不安になる」――そんな経験はありませんか?多くの方がこの“膝のぐらつき”に不安を覚え、放っておいてよいのか病院へ行くべきか迷います。実際には靭帯(じんたい)の損傷が関わっていることがあり、適切な対処をしなければ長引く原因となることもあります。この記事では整形外科専門医の立場から、症状の特徴や原因、治療法についてわかりやすくご紹介します。
膝がぐらつくときに見られる症状
膝のぐらつきはスポーツ中だけでなく、日常生活でも感じることがあります。階段を降りるときに膝が安定せず怖い思いをする、買い物の帰り道で膝が抜けそうになり転びそうになる、といった声をよく聞きます。中には痛みが強くなくても「膝が信頼できない感じ」と表現される方もいます。こうした違和感や不安定さは、膝の靭帯に問題が生じているサインかもしれません。
膝の靭帯とぐらつきの関係
膝関節には4本の大きな靭帯があり、関節を安定させる役割を果たしています。前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯です。これらの靭帯がケガや加齢によって傷つくと、膝の動きをコントロールできずにぐらつきが起こります。特にスポーツ中の急な方向転換や転倒で前十字靭帯を傷めるケースが多く、日常生活の中でも膝に負担がかかりやすくなります。
靭帯損傷の主な原因
・スポーツや運動中の急な動作(ジャンプや方向転換)
・転倒や交通事故などの外傷
・加齢による靭帯の弱化や関節の不安定化
・変形性膝関節症による二次的なぐらつき
これらの要因が重なって靭帯に負担がかかると、痛みや腫れとともに不安定さが生じます。
診断と検査方法
膝のぐらつきが気になるときは整形外科での診察が必要です。医師が関節を動かして靭帯の安定性を確認するほか、必要に応じてMRI検査で靭帯の損傷具合を調べます。早期に診断を受けることで、治療法の選択肢が広がり予後も良くなります。
治療法と対策
靭帯損傷といってもすべてが手術になるわけではありません。多くの場合、保存療法で改善を目指します。
- 保存療法
安静、冷却、膝を支える装具(サポーターやブレース)の使用、リハビリ運動が基本です。筋力を回復させることで膝の安定性を取り戻せます。 - 薬物療法
痛みや炎症が強い場合は消炎鎮痛薬を用います。ヒアルロン酸注射などが行われることもあります。 - リハビリテーション
太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリング)を鍛えることで、靭帯をサポートし膝の安定性を高めます。ストレッチや軽い運動も再発防止に効果的です。 - 手術療法
重度の前十字靭帯損傷などでは再建手術が検討されます。ただし高齢の方や日常生活レベルで困らない方は保存療法で十分なことも多いです。
予防のためにできること
膝の靭帯を守るには、日常生活での工夫も大切です。
・転倒予防のために段差や滑りやすい床に注意する
・ウォーキングや軽い筋トレで下肢の筋力を維持する
・体重管理で膝の負担を減らす
こうした習慣は関節を守り、ぐらつきを予防するのに役立ちます。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
よくある質問Q&A
Q:膝にぐらつきがあるとき、運動してはいけませんか?
A:強い痛みや腫れがあるときは控えた方が良いですが、医師や理学療法士の指導のもとで安全な運動を続けることは回復に役立ちます。完全な安静は筋力低下につながるので注意が必要です。
Q:サポーターはずっとつけた方がよいですか?
A:症状が安定するまでは有効ですが、長期的には筋肉を使うことが重要です。必要な場面だけ使い、徐々に外していくのが理想です。
Q:年齢が高いと治らないのですか?
A:年齢に関係なく適切な治療とリハビリで改善が期待できます。痛みや不安定さがあるからといって「年のせい」と諦める必要はありません。
まとめ
運動中に膝がぐらつく症状は、靭帯損傷や関節の不安定性が原因であることがあります。適切な診断と保存療法で改善できるケースは多く、予防や生活習慣の工夫でもぐらつきを減らすことが可能です。気になる症状がある方は一人で抱え込まず、早めに整形外科を受診しましょう。「もう年だから仕方ない」と諦めるのではなく、改善できる方法を一緒に見つけていくことが大切です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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