コラム COLUMN
膝 膝を曲げると痛むときの原因とリハビリの進め方を専門医が解説

「しゃがむと膝が痛い」「階段を下りるときにズキッとする」「正座ができなくなった」──そんな膝の痛みを感じていませんか?年齢を重ねると多くの方が経験する症状ですが、そのまま放置してしまうと関節の変形や可動域の制限につながることもあります。今回は、膝を曲げると痛いときの主な原因と、自宅でもできるリハビリの進め方について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
この記事の内容
膝を曲げると痛いときによくある症状
膝を曲げたときの痛みは、人によって感じ方や場所が異なります。前側(お皿の下あたり)が痛い人もいれば、内側や後ろ側に痛みを感じる人もいます。階段の上り下り、立ち上がり動作、しゃがみこみなど、日常生活のちょっとした動作で痛みを感じるようになるのが特徴です。
また、「最初は軽い違和感だったのに、だんだん深く曲げられなくなってきた」「動かすとゴリゴリ音がする」といった訴えも多く聞かれます。これらは関節や軟骨、筋肉のバランスが崩れているサインかもしれません。
膝を曲げると痛む主な原因
① 変形性膝関節症
最も多い原因が「変形性膝関節症」です。軟骨がすり減り、関節のすき間が狭くなることで、動かしたときに骨同士がこすれて痛みが出ます。特に、階段を下りる動作や正座など、膝を深く曲げるときに痛みが強くなるのが特徴です。
② 半月板損傷
膝のクッションである半月板が傷つくと、曲げ伸ばしの際に引っかかりや痛みが生じます。転倒などの外傷だけでなく、加齢による変性(すり減り)でも起こることがあります。「膝を曲げたときにカクッとする」「ひっかかるような痛みがある」という方は要注意です。
③ 関節水腫(膝に水がたまる)
炎症が起こると関節内に水がたまり、膝が重く、曲げづらくなります。特に「膝がパンパンに張っている」「熱っぽい」と感じるときは、水腫の可能性があります。
④ 膝蓋下脂肪体炎(しぼうたいえん)
膝のお皿の下にある脂肪組織が炎症を起こし、曲げたときに痛みが出ることがあります。正座やしゃがみ動作で強く痛む場合、この炎症が関係していることが多いです。
⑤ 筋力低下や姿勢の乱れ
太ももやお尻の筋肉が弱ると、膝関節に過剰な負担がかかります。また、O脚などの姿勢の歪みも痛みの原因になります。特に女性や加齢層では、筋力バランスの崩れが痛みを引き起こすことがよくあります。
膝を曲げると痛むときのリハビリの進め方
膝の痛みを改善するには、「動かさない」よりも「正しく動かす」ことが大切です。以下のようなステップでリハビリを進めていきましょう。
1. 炎症期(痛みが強い時期)は安静と冷却
まずは炎症を鎮めることが最優先です。痛みや腫れが強い場合は無理に動かさず、患部を冷やして安静を保ちましょう。必要に応じて整形外科で鎮痛薬や関節注射を受けるのも有効です。
2. 可動域訓練(動きを取り戻す)
痛みが落ち着いたら、少しずつ膝を動かす練習を始めます。タオルを膝の下に置き、軽く押しつける「タオルギャザー運動」や、座って足を前に伸ばす「膝伸展運動」などが効果的です。痛みを我慢せず、気持ちいい範囲で行いましょう。
3. 筋力トレーニング(支える力をつける)
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることが膝の安定性を保つ鍵です。仰向けに寝て片足をゆっくり持ち上げる「ストレートレッグレイズ」や、椅子に座って膝を伸ばす「レッグエクステンション」など、自宅でも簡単に行えます。
4. バランス訓練と姿勢改善
膝への負担を減らすには、全身のバランスも大切です。立位での片足立ち訓練や、骨盤を意識した姿勢改善ストレッチを取り入れると、関節の使い方が安定します。
5. 再生医療による修復促進
軟骨や靭帯の損傷がある場合、PRP(多血小板血漿)療法や幹細胞治療といった再生医療が、自然な回復を助ける選択肢となります。注射のみで行えるため、体への負担が少なく、保存療法と組み合わせることで回復効果を高められます。
日常生活で気をつけたいポイント
・急にしゃがむ・立つなどの動作を避ける
・冷えを防ぎ、膝まわりの血流を良くする
・体重を適正に保つ(膝への負担を軽減)
・運動後はストレッチで筋肉をほぐす
これらを意識するだけでも、膝の痛みや再発を防ぐ効果があります。
よくある質問
Q. 膝が痛いときは運動しない方がいいですか?
A. 強い痛みがあるときは安静が必要ですが、痛みが落ち着いたら軽い運動を始めましょう。動かさないと筋力が低下し、痛みが長引く原因になります。
Q. サポーターは使ったほうがいいですか?
A. サポーターは一時的な安定に役立ちますが、長期的に頼りすぎると筋肉が弱くなることもあります。リハビリと併用して使いましょう。
Q. 再生医療はどんな人に向いていますか?
A. 軟骨のすり減りや半月板の損傷が軽度〜中等度の方に効果が期待できます。手術を避けたい方や自然な修復を目指す方におすすめです。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ:膝を曲げたときの痛みは「早めの対処」が鍵
膝の痛みは年齢のせいだけではありません。関節の負担や筋肉バランスの乱れを整えることで、多くの場合改善が期待できます。早めに原因を知り、適切なリハビリや治療を始めることが、快適に動ける未来への第一歩です。痛みを感じたら我慢せず、整形外科専門医に相談してみましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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