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膝 膝が痛くて立ち上がれない時は何科に行くべき?整形外科専門医が教える早期受診の目安と原因・対策

最近、椅子から立ち上がろうとした時や、床から腰を浮かした瞬間に「イタタ……」と思わず口に出してしまうことはありませんか。
私のクリニックにも、このようなお悩みで来院される方がとても多くいらっしゃいます。 「最初はたまに痛む程度だったけれど、最近は毎回痛くて立ち上がるのが億劫になってきた」 「階段の昇り降りも辛いし、このまま歩けなくなったらどうしよう」
そんな不安を抱えながら、どこに相談すればいいのか分からず、湿布を貼って我慢している方も少なくありません。特に50代から80代にかけては、長年頑張ってくれた膝に少しずつ変化が出てくる時期です。
この記事では、膝が痛くて立ち上がれない時にまず何科を受診すべきか、そしてその痛みの正体は何なのかについて、整形外科専門医の視点から優しく丁寧にお伝えしていきます。あなたの膝の健康を守るための第一歩として、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事の内容
膝が痛くて立ち上がれない時に選ぶべきは「整形外科」です
結論からお伝えします。膝の痛みを感じた時、最初に行くべきなのは「整形外科」です。
街中には「整骨院」や「接骨院」、「整体」など、似たような名前の施設がたくさんあって迷ってしまいますよね。まずは、なぜ最初に整形外科を受診すべきなのか、その理由を分かりやすく整理してみましょう。
医師による正確な診断ができる
整形外科は、医師が診察を行う医療機関です。一番の大きな違いは、レントゲン検査やMRI検査、血液検査などを用いて、膝の内部がどのような状態になっているのかを科学的に診断できる点にあります。
膝の痛みの原因は、単なる筋肉の疲れだけではありません。骨が変形していたり、クッションの役割をする組織が傷ついていたり、時には炎症が起きて水が溜まっていることもあります。
「どこが、どう痛んでいるのか」を正確に知ることは、適切な治療を始めるための地図を手に入れるようなものです。地図がないまま歩き出すよりも、まずはしっかりと現状を把握することが、改善への一番の近道になります。
根本的な治療の選択肢が広い
整形外科では、痛み止めの処方だけでなく、膝の動きを滑らかにする注射や、専門の理学療法士によるリハビリテーションなど、医学的な根拠に基づいた幅広い治療を受けることができます。
また、もし症状が進行していたとしても、早期に発見できれば手術を避けるための保存療法(手術をしない治療法)をじっくりと検討することが可能です。
立ち上がるときに膝が痛むのはなぜ?考えられる原因
では、なぜ立ち上がる瞬間を狙ったかのように膝が痛むのでしょうか。50代以降の方に最も多く見られる原因を中心に、専門用語を噛み砕いて解説します。
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
立ち上がりの痛みで最も多い原因が、この「変形性膝関節症」です。これは、膝の骨と骨の間でクッションの役割をしている「軟骨」が、加齢や長年の負担によって少しずつすり減っていく状態を指します。
イメージしてみてください。新品のクッションはふかふかで衝撃を吸収してくれますが、長年使い続けると薄くなって硬くなりますよね。膝でも同じようなことが起きています。
軟骨が薄くなると、立ち上がる時の強い負荷が直接骨に伝わったり、周囲の膜を刺激したりして痛みが生じます。特に動き出しの瞬間は、関節が「固まった状態」から急に動かされるため、痛みを感じやすいのです。
半月板(はんげつばん)の傷み
膝の中には、半月板という三日月のような形をした板があります。これもクッションや安定性を高める役割を持っています。
若い頃の怪我が原因になることもありますが、年齢を重ねると、ちょっとした動作(椅子から立ち上がろうと捻った時など)でこの半月板に亀裂が入ったり、形が崩れたりすることがあります。これが引っかかるような痛みや、鋭い痛みを引き起こすことがあります。
筋力の低下と柔軟性の不足
膝を支えているのは、太ももの筋肉(大腿四頭筋)です。この筋肉が弱くなってくると、膝の関節にかかる負担をカバーできなくなります。
また、お尻やふくらはぎの筋肉が硬くなっていると、立ち上がる時の体の連動がスムーズにいかず、結果として膝だけに無理な力が集中してしまいます。これも大きな原因の一つです。

病院に行くべき「早期受診の目安」チェックリスト
「まだ我慢できるから大丈夫」と先延ばしにしているうちに、症状が悪化してしまうのはもったいないことです。以下のような症状がある場合は、早めに整形外科を受診することをお勧めします。
- 椅子から立ち上がる時に毎回、または頻繁に痛む
- 階段の昇り降り、特に「降りる時」に不安や痛みがある
- 朝、起きて歩き出す時に膝がこわばる感じがする
- 膝が腫れている、または熱を持っている感じがする
- 膝を動かした時に「パキッ」「ゴリッ」という音がして痛む
- 正座ができなくなってきた、または膝が最後まで伸びない
これらのサインは、膝からの「少し休ませて、ケアしてほしい」というメッセージです。早めに適切な対処をすることで、将来的に自分の足で元気に歩き続ける可能性を大きく広げることができます。

クリニックで行われる一般的な治療法と自宅での対策
整形外科を受診すると、まずはあなたの痛みの段階に合わせた治療(保存療法)が提案されます。
クリニックでの主な治療
まずは「痛みを取り除くこと」と「進行を遅らせること」が目的となります。
- お薬や湿布の処方 炎症を抑え、痛みを和らげる内服薬や外用薬を使用します。最近の湿布は浸透力が良く、痛みを抑える力が強いものも増えています。
- 関節内注射(ヒアルロン酸など) 膝の関節の中に、潤滑油のような役割を果たすヒアルロン酸を注入します。これにより、膝の動きが滑らかになり、軟骨の摩耗を抑える効果が期待できます。
- リハビリテーション 理学療法士などの専門スタッフが、膝に負担をかけない歩き方や、必要な筋肉の鍛え方を指導します。また、物理療法(電気を当てたり温めたりする処置)で血行を促進します。
自宅でできる膝へのセルフケア
受診と並行して、日々の生活習慣を少し見直すだけでも膝は喜びます。
・太ももの筋肉を優しく鍛える 椅子に座ったまま、片足をまっすぐ伸ばして5秒キープ。これを左右数回ずつ繰り返すだけで、膝を支える「大腿四頭筋」という筋肉が刺激されます。
・温めて血行を良くする お風呂でゆっくり膝を温めるのはとても効果的です。血行が良くなると、痛みの物質が流れやすくなり、筋肉の緊張もほぐれます。ただし、急に腫れて熱を持っている時は、逆に冷やす必要があるため注意が必要です。
・負担の少ない靴を選ぶ クッション性の高い靴を履くことで、地面からの衝撃を和らげることができます。家の中でも、底の厚いスリッパを履くなどの工夫が有効です。

よくある質問・誤解への回答
膝の痛みに関して、患者さんからよくいただく質問にお答えします。
痛みがあるときは、無理に動かさないほうがいいですか?
基本的には、痛みが強い時期は安静が第一です。しかし、全く動かさないでいると、膝の周りの筋肉がどんどん衰え、逆に関節が硬くなってしまいます。 「痛みが強く出るような動作」は避けるべきですが、痛みの出ない範囲でのストレッチや軽いウォーキングは、むしろ回復を助けます。主治医や理学療法士と相談しながら、少しずつ動かしていくのがベストです。
膝の痛みは「歳のせい」だから治らないのでしょうか?
確かに加齢は原因の一つですが、「歳のせいだから仕方ない」と諦める必要はありません。変形した骨を元通りにすることは難しくても、痛みを和らげたり、今よりも楽に歩けるようになったりする方法はたくさんあります。 適切なケアを始めれば、80代からでも膝の状態が改善し、旅行に行けるようになった患者さんを私はたくさん見てきました。諦めずに一歩踏み出すことが大切です。
湿布を貼っていれば、病院に行かなくても大丈夫ですか?
湿布はあくまで「今の痛みを抑える」ためのもので、根本的な原因を解決するものではありません。 例えば、膝の中に水が溜まっていたり、半月板が損傷していたりする場合、湿布だけでは悪化を防げないことがあります。原因が分からないまま放置すると、変形がどんどん進んでしまうリスクもあります。まずは一度、整形外科で「なぜ痛いのか」を確認しておくことを強くお勧めします。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:一歩踏み出すことが、あなたの未来を明るくします
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 椅子から立ち上がる時に膝が痛むと、何をするにも億劫になり、気持ちまで沈んでしまいがちですよね。でも、今この記事を読んで「どうすればいいか」を知ろうとしているあなたは、すでに改善への大きな一歩を踏み出しています。
膝の痛みは、早めに対処すればするほど、手術をせずに改善できる可能性が高まります。「もう歳だから」「みんな痛いって言っているし」と諦めないでください。現代の整形外科医療は日々進歩しており、あなたをサポートする手段はたくさん用意されています。
まずは、お近くの整形外科クリニックの門を叩いてみてください。レントゲンを撮って今の自分の状態を知るだけでも、これからの生活に安心感が生まれるはずです。
あなたが再び、痛みへの不安なくスッと立ち上がり、行きたい場所へ軽やかに歩いていける日が来ることを、心から応援しています。
次のステップとして、まずは今日の夜、お風呂上がりにゆっくりと膝をなでて、労わってあげるところから始めてみてはいかがでしょうか。それだけでも、体はきっと応えてくれますよ。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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