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膝 階段や立ち上がりが辛い膝の痛み、自宅でできる治し方は?おすすめサポーターやストレッチを専門医が解説

「昔はスタスタ歩けたのに、最近は階段の上り下りが億劫で……」 「椅子から立ち上がる時に、つい『よいしょ』と声が出てしまう」 「朝、起き抜けの一歩目が痛くて、スムーズに動けない」
膝の痛みがあると、外出が怖くなり、お友達との旅行や趣味の散歩も控えるようになってしまいますよね。 「もう年だから仕方ない」と、痛みを我慢しながら生活している方も多いのではないでしょうか。
しかし、整形外科専門医として、そして日々多くの患者さんの膝を診ている立場として、はっきりとお伝えしたいことがあります。 膝の痛みは、適切な知識を持ち、正しく対処すれば、自宅でも十分に和らげることが可能です。 痛みで制限されていた日常を取り戻すために、まずは「なぜ痛むのか」を知り、今日からできる一歩を踏み出してみませんか?
このコラムでは、階段や立ち上がりが辛いと感じる方に向けて、医学的な根拠に基づいた「自宅でできる治し方」を分かりやすく解説していきます。
この記事の内容
なぜ階段や立ち上がりで膝が痛むのか
膝の関節は、体重を支えながらスムーズに動くための、非常に精密な構造をしています。 特に階段の昇り降りや、椅子からの立ち上がりといった動作は、膝に大きな負担がかかる場面です。
階段は平地の数倍の負担がかかる
平らな道を歩いているとき、膝には体重の約2倍から3倍の重さがかかると言われています。 これが階段の上り下りになると、なんと体重の5倍から7倍もの負荷が膝にかかるのです。 立ち上がりの動作も同様で、曲がった状態から一気に体重を支えるため、膝の関節内部に強い圧力がかかります。
痛みの主な原因は「クッション」のすり減り
多くの場合、加齢とともに膝の関節にある「軟骨(なんこつ)」というクッションが少しずつすり減っていきます。 これを医学的には「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」と呼びます。
クッションが薄くなると、骨と骨の隙間が狭くなり、周囲の組織が炎症を起こして痛みを感じるようになります。 特に膝の内側に負担が集中しやすいため、日本人の多くは膝の内側が痛む傾向にあります。
イメージしてみてください。 滑りの悪くなったドアの蝶番(ちょうつがい)を無理に動かそうとすると、ギィギィと音が鳴り、抵抗を感じますよね。 膝も同じで、クッションの機能が低下すると、滑らかな動きができなくなり、痛みというサインを出してくるのです。

自宅でできる膝の痛みの治し方:3つのアプローチ
病院での治療も大切ですが、膝の健康を維持する主役は「毎日の生活」です。 自宅でできる保存療法(手術をしない治療法)の基本をご紹介します。
1. 膝を支える「天然のサポーター」筋肉を鍛える
膝の痛みを取り除く一番の近道は、膝の周りの筋肉を鍛えることです。 特に、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」という大きな筋肉は、膝関節を安定させ、衝撃を吸収してくれる重要な役割を持っています。
おすすめの運動:座ったまま足上げ体操
- 椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばします。
- 片方の足をゆっくりと水平になるまで持ち上げ、膝をピンと伸ばします。
- つま先を天井に向けた状態で5秒間キープします。
- ゆっくりと足を下ろします。 これを左右10回ずつ、朝晩に行うだけで、膝の安定感が変わってきます。
2. 固まった関節をほぐすストレッチ
膝が痛いと、どうしても動かさないようにしてしまいがちです。 しかし、動かさないでいると、膝の裏側やふくらはぎの筋肉が硬くなり、さらに膝が伸びにくくなって痛みが悪化するという悪循環に陥ります。
おすすめのストレッチ:タオルを使った裏側伸ばし
- 床に座って足を伸ばします。
- 足の裏にタオルを引っかけ、両手でタオルの端を持ちます。
- 手前にゆっくりとタオルを引き、膝の裏が気持ちよく伸びているのを感じながら20秒キープします。 膝の裏をしっかり伸ばすことで、歩くときの蹴り出しがスムーズになります。
3. 正しいサポーターの選び方と活用法
サポーターは、膝の負担を減らすための強力な味方です。 しかし、選び方を間違えると効果が半減してしまいます。
おすすめの選び方 ・立ち上がりや階段が特に辛い場合:左右に「支柱(ボーン)」が入ったタイプがおすすめです。膝の横揺れを防ぎ、立ち上がる際に力を入れやすくしてくれます。 ・冷えると痛む、重だるい場合:保温性の高い「筒状のニットタイプ」が適しています。血行を良くし、筋肉のこわばりを解いてくれます。
サポーターは「一生使い続けるもの」ではなく、運動をサポートしたり、外出時の安心感を得たりするためのツールとして活用しましょう。

日常生活で意識したいポイント
ちょっとした工夫で、膝への負担は劇的に減らすことができます。
椅子とベッドの生活へ
床に座る「畳の生活」は、立ち座りのたびに膝に強い負荷がかかります。 できるだけ椅子とテーブルの生活に変え、寝るときも布団ではなくベッドを使用することをおすすめします。
靴選びを見直す
クッション性の高い靴を選ぶだけで、歩行時の膝への衝撃は緩和されます。 また、靴の底が内側や外側ばかりすり減っている場合は、歩き方のバランスが崩れているサインです。 インソール(中敷き)を活用して、足元のバランスを整えることも検討してみましょう。

よくある質問と誤解
患者さんからよく受ける質問をまとめました。
Q1:膝に痛みがあるときは、安静にしていたほうが良いですか?
A:激しい腫れや熱、急激な激痛がある場合は安静が必要ですが、基本的には「痛みのない範囲で動かす」ことが推奨されます。 安静にしすぎると、膝を支える筋肉がさらに衰え、関節が固まってしまいます。 「少し痛いけれど、動かしているうちに楽になる」程度であれば、無理のない範囲で散歩や体操を続けましょう。
Q2:温めるのと冷やすの、どちらが正しいのでしょうか?
A:急に痛みが出た、赤く腫れている、熱を持っているという場合は、氷嚢などで「冷やす」のが正解です。 一方で、慢性的に重だるい、雨の日に痛む、お風呂に入ると楽になるという場合は、血行を良くするために「温める」のが効果的です。 多くの方は後者の「温める」タイプであることが多いですね。
Q3:グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントで膝は治りますか?
A:サプリメントはあくまで「食品」であり、それだけで劇的に軟骨が再生したり、形が元に戻ったりすることはありません。 飲むことで安心感を得られるという心理的なメリットはありますが、医学的に最も確実なのは、やはり「適度な運動」と「体重管理」です。 サプリメントに頼りすぎず、まずは足腰の筋肉を維持することを優先しましょう。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:これからの人生を自分の足で歩くために
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 階段の上り下りや立ち上がりの痛みは、体が発している「少しケアをしてほしい」という大切なメッセージです。
「もう年だから」「手術しかないと言われたら怖いから」と、病院に行くのを先延ばしにする方もいらっしゃいますが、最近の医療は非常に進化しています。 今回ご紹介したようなストレッチや筋力トレーニング、適切な装具の使用といった「保存療法」を地道に続けるだけで、手術を回避できたり、痛みが劇的に改善したりするケースは決して珍しくありません。
もし、自宅でのケアを数週間続けても痛みが変わらない場合や、夜も眠れないほど痛む場合は、一度お近くの整形外科を受診してください。 レントゲンなどの検査で原因をはっきりさせることも、不安を解消する大きな一歩になります。
膝の痛みと上手に付き合い、コントロールできるようになれば、行きたい場所へ行き、会いたい人に会うという当たり前の幸せを、これからもずっと守り続けることができます。 あなたの膝は、まだまだ頑張れます。 今日から始める小さな一歩が、数ヶ月後の軽やかな足取りに繋がっていますよ。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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