コラム COLUMN
膝 手術もヒアルロン酸も避けたい方へ!膝の痛みを根本から見直す最新治療と歩ける体づくり

この記事の内容
毎週の注射に通い続ける日々に疑問を感じていませんか
階段の上り下りで顔をしかめ、立ち上がるたびに「よいしょ」と声が出てしまう。そんな膝の痛みを抱え、整形外科で毎週のようにヒアルロン酸注射を打っている方は少なくありません。
私のクリニックへ相談に来られる患者さんの多くも、最初はそうでした。
「もう何ヶ月も注射を打っているけれど、その場しのぎでちっとも良くならない」 「先生からは次は手術ですねと言われたけれど、どうしても踏ん切りがつかない」
こうした切実な悩みを聞くたびに、私は専門医として、そして医療の現場に携わる者として、もっと別の選択肢があることを伝えなければならないと感じます。
膝の痛みは、ただ注射で「油」を足せば解決するほど単純なものではありません。むしろ、効果を感じにくい治療を漫然と続けることで、大切な治療のタイミングを逃してしまうことさえあるのです。
この記事では、膝の再生医療を専門とする整形外科医の視点から、なぜこれまでの治療で満足できなかったのか、そして手術を選ばずに再び自分の足で力強く歩き出すためには何が必要なのかを、わかりやすく紐解いていきます。
なぜ膝が痛むのか?その背景にある「膝の悲鳴」
まずは、あなたの膝の中で何が起きているのかを整理してみましょう。50代から80代にかけて多くの方が経験するのが、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。
膝の関節は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)が組み合わさってできています。その骨の表面を、厚さ数ミリの「軟骨(なんこつ)」が覆っています。
この軟骨は、歩くときの衝撃を吸収するクッションであり、骨同士が滑らかに動くための潤滑剤の役割も果たしています。しかし、長い年月の使用や体重による負担、筋力の低下などによって、この軟骨が少しずつ毛羽立ち、すり減っていくのです。
実は、軟骨そのものには痛みを感じる神経がありません。ではなぜ痛むのかというと、すり減った軟骨のかけらが関節の中にある「滑膜(かつまく)」という膜を刺激し、火事のような状態、つまり炎症(えんしょう)を起こすからです。
水が溜まるのも、膝が熱を持って腫れるのも、すべてはこの炎症を抑えようとする体の防御反応です。この火事を放置したまま、ただ「油」を注し続けても、根本的な解決にならないのは想像がつくのではないでしょうか。
ヒアルロン酸注射の限界を知る
これまで一般的とされてきた治療の代表格が、ヒアルロン酸の関節内注射です。しかし、専門医の立場からあえて率直に申し上げると、ヒアルロン酸注射には明確な限界があります。
1. それは「修復」ではなく「潤滑」にすぎない
ヒアルロン酸はもともと関節液に含まれる成分で、確かに関節の動きを滑らかにする効果はあります。しかし、それはあくまで一時的な「潤滑油(じゅんかつゆ)」の補充であって、すり減ってしまった軟骨を再生させたり、変形した骨を元に戻したりする力はありません。
例えるなら、すり減ったタイヤにワックスを塗って滑りを良くしているようなものです。タイヤそのものの溝がなくなっているという根本的な問題は、解決されていないのです。
2. 重症化すると効果が期待しにくい
軟骨のすり減りが進行し、骨と骨が直接ぶつかり合うような段階になると、ヒアルロン酸を注入してもクッションとしての役割を果たせなくなります。
多くの患者さんが「最初は効いていた気がするけれど、最近は打っても全然変わらない」と感じるのは、膝の状態が注射という手段では対応できない段階まで進んでしまったサインかもしれません。
3. 注射の回数が増えることによるリスク
毎週のように関節に針を刺すことは、少なからず体への負担になります。稀ではありますが、注射の針から細菌が関節内に入り込む感染症のリスクもゼロではありません。
「いつまでこの注射を続ければいいのか」という精神的な負担も大きいでしょう。もしあなたが今、漫然とした治療に疑問を感じているのなら、その直感は大切にすべきです。

手術を回避し、痛みを抑えて歩くための最新アプローチ
では、手術以外にどのような道があるのでしょうか。最新の知見に基づいた、膝の健康を取り戻すための3つの柱をご紹介します。
1. 膝を支える「天然のガードル」を再建する
膝への負担を減らす最も確実な方法は、膝を支える筋肉、特に太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」を鍛えることです。
この筋肉がしっかり機能していれば、着地の衝撃を筋肉が吸収してくれるため、関節内の軟骨にかかる負担が劇的に減ります。
専門の理学療法士による指導を受けるのが理想ですが、自宅でも「座ったまま足をまっすぐ伸ばして5秒キープ」といった簡単な運動から始められます。これは、どんな高価な注射よりも、あなたの膝を長期的に守ってくれる「天然のサポーター」になります。
2. 炎症の元を絶つ生活習慣の改善
膝の中で起きている「火事(炎症)」を鎮めるためには、外部からの刺激を減らすことが不可欠です。
まずは体重の管理です。歩くとき、膝には体重の3倍から5倍の負荷がかかると言われています。わずか1キロ減量するだけで、膝への負担は3キロから5キロも軽くなるのです。
また、靴の選び方も重要です。クッション性の高い靴を選んだり、必要に応じて足の形に合わせたインソール(靴の中敷き)を作製したりすることで、膝への衝撃を和らげ、変形の進行を抑えることができます。
3. 最新の保存療法という選択肢
近年では、これまでのヒアルロン酸注射とは全く異なるアプローチの治療も登場しています。
例えば、ご自身の血液や組織から抽出した成分を利用して、関節内の炎症を強力に抑え、傷んだ組織の環境を整える「再生医療」といった選択肢です。
これらは、単に足りないものを補うのではなく、体本来が持つ「治る力」をサポートすることを目指したものです。従来の治療で効果が出なかった方でも、こうした最新の選択肢によって、手術を回避しながら日常生活を取り戻せるケースが増えています。

よくある質問・誤解への回答
膝の悩みについて、患者さんからよくいただく質問をまとめました。
膝に水が溜まったとき、抜くと癖になるというのは本当ですか?
これは代表的な誤解の一つです。
水が溜まるのは「膝の中で炎症が起きている結果」であって、水を抜いたからまた溜まるわけではありません。むしろ、炎症によって生じた有害な成分が含まれる水をそのままにしておくと、軟骨の破壊を早めてしまうことがあります。
大切なのは「なぜ水が溜まっているのか」という原因を見極め、炎症を根本から鎮める治療を行うことです。原因が解決すれば、水は自然に溜まらなくなります。
痛いときは無理にでも歩いて鍛えたほうがいいですか?
「歩かないと足が弱る」という焦りから、強い痛みがあるのに無理をしてウォーキングを続ける方がいらっしゃいますが、これはおすすめできません。
強い痛みがある状態で無理に歩くと、かえって炎症を悪化させ、膝の状態を悪くしてしまいます。痛みが強いときは、まず炎症を抑えることを優先し、水中ウォーキングや座ったままでの筋力トレーニングなど、膝に過重負担をかけない形での運動から始めるのが正解です。
軟骨のサプリメントを飲めば、すり減った軟骨は戻りますか?
残念ながら、市販のサプリメントを飲んで、すでに失われた軟骨が元通りに再生するという医学的なデータは確認されていません。
サプリメントはあくまで「食品」であり、特定の成分を補う補助的なものです。痛みを根本から解決したいのであれば、サプリメントに頼りすぎるのではなく、適切な医療機関を受診し、医学的根拠に基づいた治療とリハビリを組み合わせることが、改善への一番の近道です。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

「年齢のせい」と諦めず、未来の自分のために一歩を
「もう歳だから膝が痛いのは当たり前」 「手術が嫌なら、痛みを我慢して注射に通い続けるしかない」
そんなふうに自分に言い聞かせているとしたら、どうかその考えを一度置いてみてください。
医学は常に進歩しています。そして私たちの体には、いくつになっても環境に適応し、良くなろうとする力が備わっています。適切な知識を持ち、正しい対策を選び直すだけで、膝の痛みとの付き合い方は劇的に変わります。
手術はあくまで最終手段です。その前にできることは、私たちが考えている以上にたくさんあります。
膝の痛みを抑え、再び自分の足でしっかりと地面を踏みしめて歩く。その喜びを取り戻すことは、決して不可能なことではありません。
10年後も20年後も、あなたが笑顔でやりたいことを楽しみ、行きたい場所へ出かけられるように。そのための第一歩として、まずは今の治療を見直す勇気を持ってみませんか。
あなたの膝の痛みに寄り添い、共に最善の道を考えてくれる専門医が必ずいます。諦める前に、ぜひ一度、新しい可能性について相談してみてください。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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