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膝 膝の裏が腫れて曲げにくい|考えられる原因とベーカー嚢腫を解説

膝の裏の腫れやふくらみ、曲げにくさの原因には、関節液が袋状にたまる「ベーカー嚢腫」があります。背景には変形性膝関節症や半月板損傷などが隠れていることがあります。ただし、膝裏の腫れがすべてベーカー嚢腫とは限りません。まずは正座や深い屈伸を控え、ふくらみを強く揉まずに整形外科で原因を確認しましょう。とくに、片側のふくらはぎまで急に腫れた場合や、赤み・熱感・強い痛みがある場合は、血栓症などとの区別が必要なため、当日中の受診が必要です。
この記事の内容
膝の裏が腫れる「ベーカー嚢腫」とは
ベーカー嚢腫(のうしゅ)とは、膝の裏側にある滑液包という袋に関節液がたまって、ふくらんだ状態です。「膝窩嚢腫(しっかのうしゅ)」とも呼ばれます。ベーカー嚢腫そのものは、がんではありません。
関節液は膝の動きを滑らかにする液体です。成人では、膝関節内の炎症で増えた関節液が、関節とつながる膝裏の袋へ入り込み、戻りにくくなることが嚢腫の形成に関係します。
膝裏の内側寄りにふくらみができ、伸ばしたときの張りや、曲げたときの圧迫感を感じることがあります。一方、小さな嚢腫では症状がなく、検査で偶然見つかる場合もあります。[1]
膝の裏の腫れが起こる主な原因
成人のベーカー嚢腫では、膝裏の袋だけでなく、関節液が増える原因を調べることが大切です。主な背景には、変形性膝関節症、半月板損傷、関節リウマチなどがあります。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、軟骨や半月板などの変化に伴って、膝に痛みや炎症が起こる病気です。立ち上がりや歩き始めの痛み、膝に水がたまる症状などがみられます。中高年の膝裏の腫れでは、背景にあるかを確認します。[2]
半月板損傷
半月板は、膝の中で衝撃を和らげる組織です。損傷すると、曲げ伸ばしの痛みや引っかかり、関節液の増加が生じることがあります。スポーツ中のひねりがきっかけになるほか、中高年では年齢に伴う変化も関係します。[3]
関節リウマチなどの炎症性疾患
関節リウマチなどで関節内の炎症が続くと、関節液が増えて嚢腫ができることがあります。膝以外にも腫れがあるか、朝のこわばりが続くかなどを確認し、必要に応じて血液検査も行います。なお、子どものベーカー嚢腫は、成人と異なり明らかな原因疾患が見つからないこともあります。[1]
症状から考えられる疾患と、急いで受診する目安
膝裏の腫れは、見た目や触った感じだけでは診断できません。とくに急に片脚が腫れたときは、ベーカー嚢腫の破裂と深部静脈血栓症を区別する必要があります。
| 症状・特徴 | 考えられる原因 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 膝裏にふくらみがあり、張って曲げにくい | ベーカー嚢腫など | 新しく気づいた腫れや、続く症状は整形外科へ |
| ひねった後から痛み、引っかかりや腫れがある | 半月板損傷など | 早めに受診。膝が引っかかって動かせない場合は当日中に相談 |
| ふくらはぎまで急に腫れ、痛みや赤みがある | 嚢腫の破裂、深部静脈血栓症など | 当日中に医療機関へ |
| 強い痛みと熱感があり、発熱や歩行困難を伴う | 関節の感染など | 当日中に医療機関へ |
| 硬いしこりが大きくなる、拍動するふくらみがある | 軟部腫瘍、血管の病気など | 押したり揉んだりせず、早めに受診 |
深部静脈血栓症とは、脚の深い静脈に血のかたまりができる病気です。血栓が肺へ流れると、肺塞栓症を起こすことがあります。脚の腫れに加えて突然の息苦しさ、胸痛、失神がある場合は、119番で救急要請してください。[4]
ベーカー嚢腫が破れると、中の液がふくらはぎへ広がり、血栓症に似た症状が出ます。「以前ベーカー嚢腫と診断されたから、今回も同じ」と自己判断しないことが大切です。[5]
受診前に自分で確認しておきたいポイント
自分で確認する目的は、病名を決めることではなく、症状の経過を医師に伝えることです。無理に膝を曲げたり、ふくらみを強く押したりする必要はありません。
- いつ気づいたか。急に腫れたか、徐々に大きくなったか
- 片脚だけか。ふくらはぎや足首まで腫れているか
- 正座、階段、歩行など、どの動作で困るか
- 赤み、熱感、発熱、しびれがあるか
- けが、長時間の移動、最近の手術、長く寝ていた期間があるか
腫れの変化は写真に残すと伝えやすくなります。ただし、急な腫れや強い痛みがある場合は、記録を優先して受診を遅らせないでください。
膝裏が腫れたときに自宅でできる対策
自宅では、痛みや張りを強める動作を減らすことが基本です。膝裏を揉んで液を散らす、強く伸ばして治すといった対処は避けましょう。急なふくらはぎの腫れは、セルフケアより受診を優先してください。
深い屈伸や長時間の正座を控える
正座やしゃがみ込みで圧迫感が強くなる場合は、椅子を使うなど生活動作を調整します。長距離の歩行や坂道で症状が増える場合も、距離や回数を減らしてください。診断後、歩行を制限する必要がないと確認できれば、痛みが増えない範囲の活動は続けられます。
熱っぽく腫れているときは短時間冷やす
熱感があるときは、保冷剤をタオルで包んで短時間当てると、痛みが和らぐ場合があります。皮膚へ直接当て続けたり、当てたまま眠ったりしないでください。赤みや腫れが強いときは、長風呂などで温めすぎないようにします。
運動やストレッチは原因を確認してから
原因がわからない腫れに、強いストレッチやスクワットを始めるのは控えましょう。炎症が落ち着いた後は、医師や理学療法士と相談して、膝を無理なく動かす練習や太ももの筋力訓練を行います。運動は膝の機能を保つためのもので、嚢腫を直接つぶすためのものではありません。体重が多い方では、無理のない体重管理も膝の負担軽減につながります。[2]
整形外科ではどのような検査をする?
診察に加えて、超音波(エコー)、レントゲン、MRIを目的に応じて使い分けます。すべての方にMRIが必要なわけではありません。
| 検査 | 主に確認すること |
|---|---|
| 診察 | 腫れの位置、痛む動作、膝の動く範囲、熱感、しびれなど |
| 超音波(エコー) | ふくらみが液体を含む袋か、位置や周囲との関係 |
| レントゲン | 骨の変形や関節の隙間など。嚢腫や半月板そのものの評価には不向き |
| MRI | 半月板など膝内部の病変、通常と異なるしこり、手術前の詳しい状態 |
ふくらはぎの腫れなどから血栓症が疑われる場合は、下肢静脈を調べる超音波検査などが必要です。膝裏に嚢腫が見つかっただけで、血栓症が否定できるわけではありません。[5]
画像に嚢腫があっても、痛みの原因とは限りません
診療では、「嚢腫があるか」と「何が今の症状を起こしているか」を分けて考えます。膝裏の圧迫感は嚢腫によるものでも、歩くときの膝内側の痛みには変形性膝関節症や半月板の病変が関係している場合があります。
このため、画像だけで治療を決めず、痛む場所、動作、診察所見が一致するかを確認します。嚢腫を小さくする治療だけでは、膝全体の痛みが残る可能性もあります。
ベーカー嚢腫の治療は、手術以外から検討します
治療は、症状の程度と背景にある膝の病気に合わせて選びます。ベーカー嚢腫と確認され、痛みや生活上の支障がなければ、経過観察が選択肢です。[1]
生活調整・運動療法・薬
膝への負担を減らしながら、必要に応じて運動療法や痛み止めの塗り薬・貼り薬・飲み薬を使います。飲み薬には胃腸障害や腎機能への影響などがあるため、持病や併用薬に応じた選択が必要です。
変形性膝関節症がある場合には、膝関節内へのヒアルロン酸注射が選ばれることもあります。ただし、ヒアルロン酸は嚢腫そのものをなくすための薬ではなく、背景にある膝の症状への治療です。[2]
穿刺で液を抜く治療と、再発する理由
張りや圧迫感が強い場合には、針を刺して液を抜く「穿刺(せんし)」を検討します。膝関節内にたまった液を抜く処置と、膝裏の嚢腫内の液を抜く処置は、針を入れる場所が異なります。膝裏では周囲の神経・血管に注意し、超音波で位置を確認しながら行う方法があります。
液を抜いても、関節内の炎症や液がたまる仕組みが残っていると再びふくらむことがあります。再発は単に「抜くと癖になる」ためではありません。繰り返す場合は、抜く回数だけを増やすのではなく、原因と治療方針を見直します。穿刺には感染や出血などのリスクもあります。[1][6]
炎症を抑えるステロイド注射
炎症や症状に応じて、ステロイド注射を検討することがあります。注射する場所や必要性は状態によって異なり、再発を完全に防ぐものではありません。感染が疑われる場合は行わず、糖尿病の方では一時的な血糖上昇などにも注意します。[6]
ベーカー嚢腫で手術を考えるタイミング
手術は、保存療法でも痛みや曲げにくさが続き、日常生活に支障がある場合などに検討します。嚢腫があることや、大きさだけで手術が決まるわけではありません。
繰り返す再発で生活に困る場合や、神経・血管への圧迫が疑われる場合は、手術を含めた評価が必要です。手術には、関節鏡を用いて膝内部の病変や嚢腫との通り道を処置する方法、嚢腫を切除する方法などがあります。手術にも再発、感染、神経・血管損傷などのリスクがあり、利益と負担を比較します。
MRIで半月板損傷が見つかっても、直ちに手術とは限りません。症状との関係や保存療法の経過を確認します。一方、膝が引っかかって伸びない状態や、進行するしびれ・筋力低下がある場合は、長く様子を見ず相談してください。年齢だけではなく、歩行や仕事、スポーツへの影響、これまでの治療歴も踏まえて判断します。[3]
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ|膝の裏の腫れは、原因の確認が第一です
膝の裏の腫れでは、ベーカー嚢腫の有無とともに、背景にある膝の病気や緊急性を確認することが大切です。
- ベーカー嚢腫は、膝裏の袋に関節液がたまった状態です。
- 変形性膝関節症や半月板損傷など、液が増える原因も調べます。
- 急なふくらはぎの腫れでは、血栓症との区別が必要です。
- 治療は経過観察や保存療法から検討し、症状と生活への影響に応じて選びます。
腫れや曲げにくさが続く場合は、無理に揉んだり伸ばしたりせず、整形外科で原因を確認しましょう。
よくある質問
受診時によく迷う、痛みのない腫れや日常生活についてお答えします。
Q1.膝の裏が腫れていますが、痛くなければ放置しても大丈夫ですか?
初めて気づいた腫れは、一度整形外科で確認しましょう。ベーカー嚢腫と診断され、症状がなければ経過観察できる場合があります。ただし、大きくなる、硬くなる、ふくらはぎも腫れるなどの変化があれば再受診してください。
Q2.膝裏のふくらみが、曲げると小さくなるのはなぜですか?
膝の角度で袋の張り方が変わるため、ベーカー嚢腫では曲げると柔らかく、目立ちにくくなることがあります。小さく見えても治ったとは限らず、この特徴だけで病名は決められません。
Q3.ベーカー嚢腫があってもウォーキングしてよいですか?
診断がつき、歩行で痛みや腫れが増えなければ、短い距離から続けられる場合があります。歩いた後まで張りが強く残る場合は距離を減らしましょう。急にふくらはぎが腫れたときは、運動を中止して受診してください。
Q4.ベーカー嚢腫はどれくらいの期間で治りますか?
一律の期間ではいえません。膝の炎症が落ち着くと自然に小さくなる場合も、長く残る場合もあります。ふくらみの大きさだけでなく、痛み、曲げ伸ばし、歩行が改善しているかを主治医と確認します。
参考資料
疾患の説明と受診・治療の考え方について、以下の国内資料を参考にしています。
- 健診会 メディカルコラム「ベーカー嚢腫(のうしゅ)」
- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」
- 日本整形外科学会「半月(板)損傷」および同ページ掲載の日本スポーツ整形外科学会資料
- 国立循環器病研究センター「静脈血栓塞栓症(急性肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症)」
- 目黒外科「深部静脈血栓症と間違いやすい病気、ベーカー嚢腫」
- 大垣中央病院「ベーカー嚢腫(のうしゅ)」
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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