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膝 膝の骨壊死とは?軟骨下脆弱性骨折との関係と治療の考え方を解説

膝の骨壊死(こつえし)と診断されても、すぐに手術が必要とは限りません。従来「特発性膝骨壊死」と呼ばれてきた病態の多くには、軟骨の下の骨に小さな骨折が起こる「軟骨下脆弱性骨折」が関係しています。骨がつぶれていない早期には、体重の負担を減らす治療で回復を期待できる場合があります。一方、骨の陥没が進むと治療方針が変わります。突然の膝痛や夜間痛があるときは無理に歩かず、整形外科を受診しましょう。初期はレントゲンで分からず、MRIが必要になることがあります。
この記事の内容
膝の骨壊死とは?軟骨下脆弱性骨折との関係
骨壊死とは、骨の一部の組織が死んでしまった状態です。ただし、膝で「骨壊死」と説明される病気には、軟骨の下の骨折を出発点とする病態が含まれます。病名だけで、骨がどこまで傷んでいるかを判断することはできません。
軟骨を支える骨に小さな骨折が起こる
膝の骨の表面は、なめらかに動くための軟骨で覆われています。その直下で軟骨を支えているのが「軟骨下骨」です。
軟骨下脆弱性骨折(なんこつかぜいじゃくせいこっせつ、SIFK)とは、この部分が日常の体重負荷などに耐えきれず、小さな骨折を起こす病気です。転倒や衝突がなくても生じます。
以前は原因のはっきりしない骨壊死として扱われていましたが、現在は、まず骨折が起こり、治りきらない場合に骨壊死や関節面の陥没へ進む病態が重視されています。すべての軟骨下脆弱性骨折が骨壊死になるわけではありません。
「治るかどうか」は病気の段階で変わる
| 病気の状態 | 治療の考え方 |
|---|---|
| 骨折はあるが、関節面の形が保たれている | 負担を減らし、骨折の治癒と症状の改善を目指します。 |
| 骨壊死や骨の陥没を伴っている | 元の形への回復は難しくなります。痛みと生活機能を評価し、手術も検討します。 |
| 関節の広い範囲で変形・軟骨の傷みが進んでいる | 保存療法の効果と生活への支障を踏まえ、人工関節などを検討します。 |
「骨壊死だから治らない」「骨折だから自然に治る」のどちらかに決めつけず、画像と経過を確認することが大切です。
膝の骨壊死・軟骨下脆弱性骨折が起こる原因
軟骨下脆弱性骨折には、骨の状態に加えて、膝の一部分へ負担が集中することが関係します。骨粗しょう症だけが原因ではありません。
半月板の損傷やO脚による負担の偏り
半月板は、膝にかかる体重を分散するクッションです。とくに半月板の後ろ側の付け根が切れる「後根断裂」や、半月板が本来の位置から外へずれる「逸脱」があると、軟骨下骨に負担が集中しやすくなります。
変形性膝関節症やO脚も負担の偏りに関係します。ただし、半月板損傷が見つかった人全員に、この骨折が起こるわけではありません。
骨密度が正常でも起こる
中高年、とくに女性に多くみられますが、男性にも起こります。骨粗しょう症が関係する場合はあるものの、骨密度が正常でも発症するため、骨密度検査だけで否定することはできません。
ステロイドなどに関連する骨壊死とは区別する
膝には、ステロイド薬の全身投与や多量の飲酒などと関連する骨壊死もあります。軟骨下脆弱性骨折とは発症の仕組みや病変の広がりが異なるため、服薬歴・飲酒歴とMRI所見を合わせて判断します。処方薬は自己判断で中止せず、医師へ伝えてください。
どのような症状が出る?受診の目安
典型的なのは、大きなけがをしていないのに突然生じる膝の痛みです。体重をかけると痛み、安静時や夜間にも痛むことがあります。
太ももの骨の内側に多く生じるため、膝の内側が痛むことがよくあります。膝の腫れや水がたまる症状を伴う場合もありますが、痛む場所だけでは診断できません。
急な痛みや、それまでと違う痛みは早めに相談する
- 歩行中や立ち上がった際に、急に膝が強く痛くなった
- 休んでいても痛み、夜に目が覚める
- 従来の膝痛と比べ、急に歩きにくくなった
- レントゲンでは軽い変形と言われたのに、強い痛みが続く
このような場合は、痛みを我慢して運動を続けず、早めに整形外科を受診しましょう。
体重をかけられないほどの痛み、急速な腫れ、赤み・熱感や発熱がある場合は、当日中の受診が目安です。関節の感染など、急いで対応すべき病気との区別が必要です。発熱がなくても感染を完全には否定できません。
似た症状が出る病気
| 症状や経過 | 主に確認する病気 |
|---|---|
| 突然の痛み、体重をかけると強く痛む、夜間痛 | 軟骨下脆弱性骨折、骨壊死など |
| 動き始めや歩行時の痛みが徐々に続く | 変形性膝関節症など |
| ひねった後の痛み、引っかかり、曲げ伸ばしの制限 | 半月板損傷など |
| 急な腫れ、赤み、熱感、強い痛み | 偽痛風、化膿性関節炎など |
複数の病気が重なることもあります。「いつから」「何をしていたときに」「どの動作で痛むか」をメモしておくと診察に役立ちます。痛みを確かめるための片脚立ちや深い屈伸は不要です。
検査はレントゲンだけで分かる?MRIの役割
発症初期の軟骨下脆弱性骨折は、レントゲンで異常が見えないことがあります。突然の強い膝痛があり、診察やレントゲンだけでは原因を説明できない場合は、MRIを検討します。
レントゲンは骨の形と関節全体を確認する
レントゲンでは、骨の陥没、関節のすき間、変形の程度などを調べます。必要に応じて、脚全体の並びも確認します。最初の検査で変化が乏しくても、経過をみて撮影し直すことがあります。
MRIで骨折・骨髄・半月板を評価する
MRIでは、軟骨下の骨折線、骨の内部の反応、病変の広がり、半月板損傷などを調べます。
MRIで骨の内部が白く見える「骨髄浮腫様の変化」があっても、それだけで骨壊死とは決まりません。骨折や関節症などでも似た変化が現れます。骨折線や関節面の状態、痛みの経過と合わせた判断が必要です。
整形外科で重要なのは、画像に異常があるかだけでなく、その異常が今回の痛みを説明するかという点です。半月板損傷があっても、急な強い痛みの主な原因は軟骨下の骨折という場合があります。
手術以外の治療は?まず膝への体重負荷を調整する
骨の陥没がない早期には、保存療法が選択肢になります。中心となるのは、傷んだ部分へかかる体重を減らし、回復を待ちながら経過を確認することです。
杖や歩行器などで骨を保護する
膝にかける体重を減らすことを「免荷」「荷重制限」といいます。松葉杖や歩行器などを使い、必要に応じて装具や足底板も検討します。
片手の杖だけでは十分に負担を減らせない場合があります。反対の脚の状態や転倒リスクも考慮して補助具を選び、使用方法を確認しましょう。
荷重制限は数週間単位で行うことがありますが、期間や許容する体重負荷は一律ではありません。立ち仕事、通勤、階段の多い住環境なども医師に伝え、実行できる方法を相談してください。
薬や注射は目的を区別する
痛み止めや湿布は、痛みを和らげるために用います。胃腸や腎臓の病気、併用薬などに配慮して選びます。
変形性膝関節症に伴う痛みに対して、ヒアルロン酸注射などを検討する場合もあります。ただし、注射で骨折そのものが治るわけではありません。骨折が疑われるときは、注射を繰り返す前に病態と荷重制限の必要性を確認します。
骨粗しょう症を合併していれば、その治療も検討します。ただし、骨粗しょう症の薬が軟骨下脆弱性骨折を確実に治したり、骨の陥没を防いだりするとはいえません。
リハビリは時期に合わせて変える
発症直後から、一般的な膝痛対策として歩行量を増やしたり、スクワットを始めたりすることは避けます。一方、必要以上に動かない生活が続くと筋力が低下します。
医師や理学療法士と相談し、骨折部を保護しながら行える運動を選びます。痛みと画像の経過を確認し、徐々に歩行や筋力訓練へ進めます。
自宅で気をつけることと、回復までの考え方
自宅では、治療のために歩く量を増やすのではなく、指示された負荷の範囲を守ることが大切です。痛みが軽くなったことと、骨が十分に回復したことは同じではありません。
- 長い散歩、坂道、階段の往復、重い荷物を持つ作業を控える
- 深くしゃがむ、正座から勢いよく立つなど、痛みを誘う動作を避ける
- 椅子や手すり、家族の助けを利用し、立っている時間を減らす
- 痛い部分を強くもんだり、無理なストレッチをしたりしない
- 減量のために無理に歩かず、食事の調整と必要な栄養の確保を相談する
腫れや熱感がある場合は、タオル越しに短時間冷やすと楽になることがあります。ただし、冷却や温熱で骨折を治すことはできません。
回復には数か月かかることがあり、MRIの変化が落ち着くまで、症状の改善より長くかかる場合もあります。痛み止めで歩けるようになっても、自己判断で負荷を戻さないでください。再診時に、歩行量、補助具の使用、運動再開の目安を確認しましょう。
手術を考えるタイミングは?
手術は、骨の陥没が進む場合や、適切な保存療法でも痛み・歩行障害が続く場合に検討します。「骨壊死」という病名だけ、あるいは年齢だけで決めるものではありません。
判断では、次の点を合わせて確認します。
- 病変の広さと、骨の陥没・欠損の有無
- 軟骨の傷み、半月板の状態、O脚などの脚の並び
- 痛みの程度と、睡眠・歩行・仕事への影響
- 保存療法を実施できているか、改善傾向があるか
- 年齢、活動量、持病、本人が望む生活
骨の陥没が進んでいる場合に、一定期間が過ぎるまで待ち続ける必要はありません。反対に、形が保たれて症状が改善していれば、経過を確認しながら保存療法を続ける場合があります。
代表的な手術と選び方
| 手術 | 目的・検討する状況 |
|---|---|
| 高位脛骨骨切り術 | すねの骨の角度を調整し、傷んだ内側への負担を減らします。脚の並びや、残っている関節の状態などから適応を判断します。 |
| 人工膝関節単顆置換術 | 傷みが主に内側など一部に限られ、ほかの関節面や靱帯の条件が合う場合に、傷んだ側を人工関節に置き換えます。 |
| 人工膝関節全置換術 | 関節の広い範囲に傷みや変形がある場合などに検討します。 |
手術には痛みや歩行機能の改善が期待できる一方、感染、血栓、術後の痛みなどのリスクがあり、リハビリも必要です。入院期間や復職時期は術式と生活条件で異なるため、個別に確認します。
半月板後根断裂への修復など、関節を温存する手術を検討する場合もあります。ただし、半月板損傷があるという理由だけで手術を決めず、骨折の段階や軟骨の状態を含めて判断します。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:膝の骨壊死は、病名より「今の骨の状態」が重要
膝の骨壊死と説明されたときは、軟骨下脆弱性骨折の段階なのか、骨の陥没があるのかを確認することが、治療を理解する第一歩です。
- 従来の特発性膝骨壊死の多くには、軟骨下脆弱性骨折が関係します。
- 初期はレントゲンで分からず、MRIが診断に役立ちます。
- 早期には、体重負荷を減らす保存療法で回復を期待できる場合があります。
- 痛みが軽くなっても、自己判断で歩行量や運動を増やさないことが大切です。
- 手術の必要性は、骨の陥没、病変の広がり、症状、活動性などを合わせて判断します。
突然の膝痛や、これまでと違う痛みが続く場合は、整形外科で原因を確認しましょう。
よくある質問
膝の骨壊死と言われました。脚を切断する病気ですか?
一般的な特発性膝骨壊死や軟骨下脆弱性骨折で、脚の切断が標準治療になることはありません。膝の一部の骨の病変であり、足全体への血流が途絶える病気とは異なります。進行した場合も、通常は骨切り術や人工関節などを検討します。
痛みがなくなったら、通院をやめてもよいですか?
自己判断では終了せず、骨の状態と負荷を戻す時期を確認しましょう。痛みの改善より画像上の回復が遅れることがあります。通院間隔や追加検査の必要性は、症状と病変の程度に応じて決めます。
プールや自転車なら運動しても大丈夫ですか?
膝への負担が比較的少なくても、発症早期から一律に安全とはいえません。自転車の抵抗やプールでの歩行でも膝に力がかかります。病変の段階と荷重制限に合わせ、開始時期・運動内容を医師に確認してください。
膝の骨壊死が反対の膝にうつることはありますか?
反対の膝にうつる病気ではありません。ただし、骨の状態や体質、薬の影響などによって両膝に病変が生じる場合はあります。かばっている側にも新しい痛みが出たら、負担のかけ方と原因を確認しましょう。
参考文献・参考情報
国内医療機関・医学専門媒体の解説を掲載しています。各施設の治療方針が、すべての患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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