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腰 朝の腰の痛み…寝具や姿勢が関係している?整形外科専門医が解説

「朝起きたときだけ腰が痛いんです。でも、しばらく動いていると楽になるんですよね」
こういった声は、整形外科の外来でもよく聞かれます。特に50代〜80代の方からは、「日中はそこまで痛くないのに、朝だけつらい」という訴えが多いです。
実は、この“朝だけ腰が痛い”現象には、寝具や寝る姿勢、体の硬さ、そして生活習慣まで、いくつもの要因が関わっています。この記事では、その原因と対策をわかりやすく解説します。
この記事の内容
朝の腰痛はどんなときに起こる?
・ベッドから起き上がる瞬間に腰がズキッとする
・しばらく歩くと痛みが軽くなる
・前かがみになるとつっぱるような感覚がある
・起床後の洗顔や靴下を履く動作がつらい
こうした症状が当てはまる場合、「夜から朝にかけての姿勢や環境」が腰に負担をかけている可能性があります。
原因1:寝具が体に合っていない
朝の腰痛で意外に多いのが、寝具の影響です。
・柔らかすぎるマットレス:腰が沈み込み、背骨が不自然に曲がる
・硬すぎるマットレス:腰とマットレスの間にすき間ができ、腰部が浮いてしまう
・枕の高さが合っていない:首や背中のバランスが崩れ、腰にも負担が波及
特に腰痛持ちの方は、腰が沈み込みすぎず、背骨が自然なS字カーブを保てる硬さが理想です。
原因2:寝る姿勢のクセ
仰向けで寝ると腰の反りが強くなり、うつ伏せは腰を反らせ続ける姿勢になります。
横向き寝は比較的腰にやさしいですが、体が丸まりすぎると筋肉がこわばります。
夜中に何度も寝返りを打つのは自然なことですが、同じ姿勢で長時間固まることが朝の痛みにつながります。
原因3:筋肉・関節のこわばり
年齢とともに、腰まわりの筋肉や関節は硬くなります。睡眠中は動きがほとんどないため、血流が低下し、起床直後は特にこわばりが強くなります。
また、腰椎(腰の背骨)の変形や椎間板の老化も、朝の動き始めに痛みを感じやすい原因です。
原因4:日中の生活習慣
・長時間の座り仕事
・運動不足による筋力低下
・前かがみ姿勢が多い
こうした日常の積み重ねが、夜間の腰への負担を増やします。
自宅でできる対策
1. 寝具の見直し
・マットレスは「柔らかすぎず硬すぎない」中程度の硬さを選ぶ
・腰の下にタオルを軽く入れて反りを防ぐ方法も有効
・枕は高さを調整して、首から腰まで自然なカーブを保つ
2. 寝る前と朝のストレッチ
寝る前に腰まわりや太ももの裏(ハムストリングス)を軽く伸ばすと、筋肉のこわばりを予防できます。朝はベッドの上で軽く膝を抱えるストレッチから始めると安全です。
3. 起き上がり方の工夫
腰をひねらず、横向きになってから腕で体を支えて起き上がる「ログロール法」が腰にやさしいです。
4. 日中の運動習慣
ウォーキングや軽い筋トレで体幹(お腹・背中の筋肉)を鍛えると、寝ている間の腰の負担も減ります。
医療機関での対応
症状が続く場合や、しびれ・足の力が入りにくいなどの神経症状がある場合は、整形外科を受診しましょう。
原因が椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気であれば、保存療法(薬・リハビリ・装具など)や必要に応じて注射・手術を検討します。
よくある質問(Q&A)
Q1. 朝の腰痛があっても運動していいの?
A. 痛みが軽く、日常動作で支障がない場合は、ウォーキングやストレッチを行ってOKです。ただし急な動きや重い物を持つことは避けましょう。
Q2. 湿布や温めはどちらが良いですか?
A. 起床時のこわばりは血流不足によることが多いため、温める方が効果的な場合が多いです。ただし炎症や腫れがある場合は冷却を優先します。
Q3. マットレスを変えるだけで改善しますか?
A. 寝具の改善は有効ですが、それだけで完治するとは限りません。日中の姿勢改善や運動習慣も合わせて取り入れることが大切です。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて「再生医療」という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体が本来持つ自然治癒力を引き出し、関節や組織の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を点滴で投与することで、膝や股関節だけでなく、腰痛などの慢性疼痛に対しても炎症を抑えたり、組織の修復を促したりする効果が期待されています。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無を医師がしっかり診断したうえで治療を検討することが大切です。
まとめ
朝の腰の痛みは、「年齢のせいだから仕方ない」と諦める必要はありません。寝具や姿勢の見直し、軽い運動を組み合わせることで改善できるケースが多くあります。
症状が長引く場合は、早めに医療機関へ相談し、原因をはっきりさせることが安心への第一歩です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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