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スポーツ外傷肩 ゴルフ後に肩甲骨まわりが痛い?疲労回復のポイントを専門医が解説

「ラウンドの翌日に肩甲骨のあたりがズキズキする」「スイングの後半から背中が張る感じがする」――そんな経験をされたことはありませんか? ゴルフは全身を使うスポーツですが、特に肩甲骨まわりの筋肉や関節には大きな負担がかかります。ここでは、整形外科の視点から、ゴルフ後に起こる肩甲骨まわりの痛みの原因と、効果的な疲労回復のポイントをわかりやすく解説します。
この記事の内容
ゴルフ後に肩甲骨まわりが痛くなるのはなぜ?
多くのゴルファーが訴える「肩甲骨の痛み」は、いわゆる“筋肉痛”だけではない場合もあります。スイング時の体のひねりやフォロースルーの動作によって、肩甲骨を動かす筋肉(肩甲挙筋・僧帽筋・菱形筋など)が過度に引き伸ばされ、炎症を起こすことがあるのです。
また、長年のプレーや姿勢のクセにより、筋肉のバランスが崩れている方も少なくありません。特にデスクワーク中心の方は、背中が丸くなり(猫背姿勢)、肩甲骨が外側に開いた状態が続くため、スイング時に無理がかかりやすくなります。
どんなときに痛みを感じやすい?
患者さんからよく聞かれるのは、「プレー中は気にならなかったが、翌朝起きたら痛い」「打ちっぱなしで100球以上打った後に背中が張る」「スイング中、フィニッシュで肩甲骨の内側が突っ張るように痛む」といった声です。
特に、肩甲骨の間の痛みや違和感は、首や肩の筋肉が同時に緊張しているサインです。放置すると、肩こりや背中の慢性的な痛み、さらにはスイングフォームの乱れにもつながりかねません。
整形外科的に考える肩甲骨痛の原因
① 筋肉の炎症・疲労
ゴルフスイングでは、肩甲骨を上下・回旋させる筋肉が繰り返し動きます。筋肉がオーバーワーク状態になると、微細な炎症(筋肉痛)や筋膜の癒着が起こり、痛みやこりとして感じられます。
② 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
肩の可動域が狭く、腕を大きく振る動作が制限されている方では、肩甲骨に負担が集中します。炎症が広がると肩の動きが悪くなり、スイング全体に影響が出ます。
③ 頚椎(けいつい)からの神経症状
首の骨(頚椎)に変形や椎間板の狭まりがあると、肩甲骨のまわりに放散痛(神経痛)が起こることがあります。痛みとともに「重だるさ」「しびれ」を感じる場合は、単なる筋肉疲労ではなく神経の圧迫が原因かもしれません。
④ 姿勢の悪化による肩甲骨の可動制限
猫背やストレートネックの方は、肩甲骨が常に外側に開いたままになります。この状態では背中の筋肉が硬くなり、スイングの回旋動作で引きつるような痛みが生じやすくなります。
痛みを軽減するための対処法と疲労回復のコツ
1. 温めて血流を促す
ラウンド後や翌日の筋肉痛には、温めることで回復を早められます。入浴や蒸しタオルなどで肩甲骨まわりを温めると、筋肉の緊張がほぐれ、疲労物質の排出が促されます。
2. 軽いストレッチを取り入れる
痛みが強くない場合は、軽いストレッチや肩回し運動がおすすめです。肩甲骨を寄せる動き(胸を張る姿勢)を意識して、ゆっくり大きく動かしましょう。呼吸を止めず、痛みを感じない範囲で行うのがポイントです。
3. マッサージガンやフォームローラーでセルフケア
背中や肩甲骨の内側は手が届きにくい部分です。マッサージガンやフォームローラーを使うと、深部の筋肉まで刺激できます。特に肩甲骨の内側を優しくほぐすことで血流が改善します。
4. リハビリ・運動療法
整形外科では、理学療法士による姿勢改善トレーニングやストレッチ指導が有効です。筋肉をほぐすだけでなく、肩甲骨の動きをスムーズにする筋力トレーニングを行うことで、再発を防ぐことができます。
5. 再生医療の選択肢
筋肉や腱の損傷が長引く場合には、PRP(多血小板血漿)治療などの再生医療も選択肢のひとつです。炎症を抑え、組織修復を促す作用があり、スポーツ愛好家の間でも注目されています。
日常でできる予防法
・スイング前に肩や背中のウォーミングアップを行う
・ラウンド後はアイシングで炎症を抑え、翌日に温める
・普段から肩甲骨を動かす習慣をつける(例:背伸びや肩回し)
・猫背姿勢を改善し、胸を開く姿勢を意識する
小さな習慣でも継続することで、筋肉の柔軟性と疲労回復力が高まります。
よくある質問
Q. 痛みがあるときは休んだ方がいいですか?
A. 強い痛みがある場合は無理せず休むことが大切です。ただし、完全に動かさないと筋肉が硬くなるため、痛みが落ち着いたら軽いストレッチを再開しましょう。
Q. 痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?
A. 一時的な炎症を抑えるために鎮痛薬を使用しても構いませんが、長期間の使用は避けましょう。痛みが続く場合は整形外科で原因を調べることをおすすめします。
Q. ゴルフをやめたほうがいいですか?
A. 多くの場合、フォームの見直しや筋肉のケアで改善できます。痛みの原因を明確にし、正しいリハビリを行えばプレーを続けることが可能です。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ:正しいケアで快適にゴルフを楽しもう
ゴルフ後の肩甲骨まわりの痛みは、筋肉の使いすぎや姿勢のクセが原因であることがほとんどです。放置せずに早めのケアを行えば、再発を防ぎ、より快適にゴルフを楽しむことができます。年齢を重ねても、正しい動きとケアを意識することで、体はしっかり応えてくれます。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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