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その他膝 肥満が膝に与える影響とは?体重管理で痛みを軽減する方法

膝の痛みでお悩みの方の多くは、体重の影響を見逃しがちです。実は、体重がわずか1kg増えるだけで、膝への負担はその3〜5倍にもなると言われています。特に変形性膝関節症の患者さんにおいて、肥満は進行を早める大きな要因の一つです。本記事では、肥満が膝に与える影響と、体重管理によって膝の痛みを軽減する方法について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
膝関節にかかる負担と肥満の関係
膝関節は、体重を支えるために常に大きな負荷がかかっている部位です。歩行時には体重の約3倍、階段の昇降では約5倍、しゃがむ動作ではそれ以上の負担が膝にかかります。そのため、体重が増えれば増えるほど、膝にかかる負担も指数関数的に増加するのです。
例えば、60kgの人が5kg体重が増えて65kgになると、歩行時の膝への負荷は15kg分(3倍換算)増加する計算になります。日常生活で何千回と繰り返す膝の屈伸動作が、その都度重荷になることで、関節の軟骨がすり減りやすくなり、変形性膝関節症を引き起こすリスクが高まります。
肥満がもたらす関節への炎症反応
体重増加による物理的な負担だけでなく、肥満そのものが体内に炎症を引き起こすことも知られています。脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」という物質には、関節に炎症を起こす作用があるものも含まれています。こうした慢性炎症が、関節内の軟骨を徐々に破壊し、痛みや腫れを招くのです。
つまり、肥満は膝に対して「機械的負荷」と「炎症」の両面からダメージを与える二重のリスク因子だと言えます。
体重を減らすことで得られる膝へのメリット
体重管理によって膝への負担を軽減することは、科学的にも効果が証明されています。アメリカ整形外科学会の発表によれば、体重を5kg減らすと、膝の痛みが大幅に改善したというデータも報告されています。
また、膝の痛みが軽くなることで歩行が楽になり、活動量が自然と増え、基礎代謝も向上します。結果として**「体重が減る→動きやすくなる→さらに体重が減る」という良いサイクル**が生まれます。
痛みを和らげる体重管理の実践方法
「膝が痛いから運動できない」「だから痩せられない」とお悩みの方も多いでしょう。しかし、激しい運動でなくても体重管理は可能です。
以下の方法が特におすすめです:
- 食事の見直し
糖質や脂質の摂りすぎに注意し、野菜やたんぱく質中心の食事にシフトします。間食を減らすだけでも効果的です。 - 膝に優しい運動
ウォーキングや水中ウォーキング、エアロバイクなど、膝に負担をかけにくい有酸素運動を取り入れましょう。 - 筋力トレーニング
太ももの筋力(大腿四頭筋)を鍛えることで、膝関節の安定性が増し、痛みを感じにくくなります。椅子に座った状態での膝伸ばし運動など、簡単に始められるトレーニングから取り入れてください。 - 医師や理学療法士の指導を受ける
自己流の運動やダイエットはかえって膝を痛めることもあるため、専門家の指導を受けることが重要です。
膝の痛みを予防するためにできること
肥満による膝の負担は、早い段階での対処がカギになります。中高年になってから膝の痛みに悩まされる方の多くが、「もっと早く体重を落としておけばよかった」と口にされます。
毎日の体重測定、栄養バランスの意識、定期的な運動。こうした小さな積み重ねが、将来の「歩ける人生」を守る鍵となります。
膝の痛みが気になる方は、早めに整形外科を受診し、自分の関節の状態を確認することも大切です。当院でも、肥満と関節痛に悩む多くの方のサポートを行っており、再生医療による治療も選択肢の一つとして提供しています。
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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