
コラム COLUMN
スポーツ外傷膝 運動で膝を痛める原因とは?障害別の予防と対策

「運動中に膝をひねった」「ジョギングのあとに膝が痛む」――運動が健康に良いことは分かっていても、膝に痛みを感じて継続をためらう人は少なくありません。実は膝は、体の中でもとくに負担のかかりやすい関節であり、適切な対策をしなければ運動で簡単に痛めてしまうリスクがあるのです。
この記事では、運動によって起こる膝の痛みの原因を障害ごとに解説し、それぞれに対する予防法と対処法を整形外科専門医の視点でわかりやすく紹介します。
膝関節はなぜ痛めやすいのか?
膝は、大腿骨(太ももの骨)・脛骨(すねの骨)・膝蓋骨(お皿の骨)からなる複雑な関節で、歩行・ランニング・ジャンプなど、あらゆる動作に関わっています。日常的な動きであっても、膝には体重の3倍以上の負荷がかかることもあり、運動での繰り返し動作や外力によって障害を起こしやすくなります。
特に、以下のような要因が膝の痛みのリスクを高めます。
- 筋力不足や柔軟性の低下
- ウォームアップやクールダウンの不足
- 誤ったフォーム
- 急激な運動量の増加
- 不適切な靴や地面
主な膝のスポーツ障害とその特徴
1. ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
ジャンプやランニングを繰り返す競技で発生しやすく、膝のお皿の下が痛くなるのが特徴です。膝蓋腱に繰り返しストレスがかかることで炎症が起こります。
予防・対策:
太ももの前(大腿四頭筋)の柔軟性を高めるストレッチや、筋力バランスを整えるエクササイズが有効です。また、練習量の調整も重要です。
2. 腸脛靱帯炎(ランナー膝)
膝の外側に痛みが出るタイプの障害で、ランニングやサイクリングでよく見られます。大腿筋膜張筋から膝外側にかけて伸びる腸脛靱帯が、膝の骨に擦れて炎症を起こします。
予防・対策:
股関節周囲や大腿外側のストレッチに加え、体幹や中殿筋を鍛えることで膝の安定性が向上します。
3. 半月板損傷
膝の曲げ伸ばしやひねり動作で、クッションの役割を果たす半月板が損傷することがあります。膝の引っかかり感や、体重をかけたときの痛みが特徴です。
予防・対策:
股関節・足関節の柔軟性を保ち、膝だけに負担が集中しないようなフォームを身につけましょう。中高年では加齢による変性も関係するため、運動前の準備運動は欠かせません。
4. 靭帯損傷(前十字・内側側副靱帯など)
急な方向転換やジャンプの着地時に、膝に強いストレスがかかることで発生します。膝の不安定感や腫れ、激しい痛みを伴います。
予防・対策:
正しい着地や切り返し動作を身につけることが大切です。体幹の安定性と下肢の協調性を高めるトレーニングが効果的です。
痛みを予防するための基本習慣
膝のトラブルを防ぐためには、日頃の意識と習慣が重要です。
- ウォーミングアップを丁寧に
軽い有酸素運動やダイナミックストレッチで、筋肉と関節をあたためてから運動に入ることが大切です。 - 筋力トレーニングを継続的に
膝を支える大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋、そして体幹をしっかり鍛えておくことが、ケガの予防につながります。 - クールダウンも忘れずに
運動後の静的ストレッチは、疲労物質の排出を促し、筋肉の回復を助けます。 - 痛みを我慢しない
「少し痛いだけ」と放置せず、違和感があるときは早めに運動を中止し、必要なら整形外科で診断を受けましょう。 - 適切な用具の使用
シューズのクッション性やフィット感は、膝への負担軽減に直結します。古くなった靴は早めに交換するのが望ましいです。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ
膝の障害は「軽い痛みだから大丈夫」と思って続けることで、慢性化しやすくなります。とくに成長期の子どもや中高年では、早めの対応が回復のカギとなります。再生医療を含めた膝の保存的治療も、近年では選択肢が広がってきています。
症状が長引いたり、繰り返すようであれば、整形外科専門医にご相談ください。症状に応じた画像診断や、関節の状態に合わせた治療計画をご提案いたします。


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