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その他再生医療 関節の再生医療は高い?費用の相場と医療費控除の仕組みを院長が解説

関節の再生医療は高い?費用の相場と医療費控除の仕組みを院長が解説

「先生、再生医療って興味はあるんですが、すごく高いんですよね?」 「保険が効かないと聞きましたが、私でも払える金額なのでしょうか」

診察室で膝や股関節の痛みを相談される患者さんから、このような質問をいただくことが増えてきました。 長年続く関節の痛みから解放されたい、手術は避けたい、そう願って新しい治療法を探されている方にとって、一番のネックになるのが「費用」の問題だと思います。

どれほど良い治療法であっても、生活を圧迫するような無理な出費はおすすめできません。しかし、仕組みを正しく知ることで、賢く治療を選択できる場合もあります。 今回は、整形外科専門医の立場から、関節の再生医療にかかる費用の現実と、少しでも負担を減らすための「医療費控除」について、できるだけわかりやすく解説します。

なぜ再生医療の費用はクリニックによって違うの?

まず、一番の疑問である「なぜ費用が高いのか」「なぜ病院によって値段が違うのか」についてお話しします。

保険診療と自由診療の違い

私たちが普段、風邪や怪我で病院にかかるときは「保険診療」が適用されます。国が決めた一律の価格で、皆さんは窓口で1割〜3割の負担で済みます。 一方、関節の再生医療(PRP療法や幹細胞治療など)の多くは、現時点では「自由診療(自費診療)」に分類されます。これは、まだ国の保険制度の対象になっていない新しい治療法であるため、治療費の全額(10割)を患者さんが負担しなければならない仕組みです。

価格はクリニックが決めています

自由診療の場合、治療の価格は各医療機関が自由に設定できます。 「高いから良い」「安いから悪い」と一概には言えませんが、価格には以下の要素が含まれています。

使用するキット(血液を加工する道具)の質 細胞を培養する施設の維持費 医師やスタッフの技術料 安全管理のための体制

安さだけで選ぶのではなく、その費用の中に「安心・安全」が含まれているかをしっかり確認することが大切です。

具体的な費用の相場はどれくらい?

では、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。治療の種類によって大きく異なりますので、一般的な目安をご紹介します。

PRP療法(多血小板血漿療法)

ご自身の血液を採取し、修復成分を濃縮して関節に注射する治療です。 相場:1回あたり 10万円 〜 20万円程度 入院の必要がなく、外来で受けられるため、再生医療の中では比較的検討しやすい価格帯です。使用する精製キットの種類や、何回セットで行うかによって価格に幅があります。

幹細胞治療(脂肪由来幹細胞治療など)

お腹の脂肪などから幹細胞を取り出し、培養して数を増やしてから関節に戻す、より高度な治療です。 相場:100万円 〜 200万円以上 細胞を培養(育てて増やす)するために高度な設備と技術が必要なため、費用は高額になります。

これらの金額を見て「やっぱり高いな」と感じる方も多いでしょう。そこで知っておいていただきたいのが、次にお話しする税金の制度です。

必ず知っておきたい「医療費控除」の話

再生医療は保険が効きませんが、「医療費控除」の対象にはなります。これを知っているのと知らないのとでは、最終的な負担額が大きく変わってきます。

医療費控除とは?

1月1日から12月31日までの1年間に、ご自身やご家族のために支払った医療費が一定額(基本的には10万円)を超えた場合、確定申告をすることで、納めた税金の一部が戻ってくる(または安くなる)制度です。

関節の再生医療は対象になります

「医師の診療等の対価」として支払うものであれば、自由診療であっても医療費控除の対象として認められます。 関節の痛みを治すための再生医療は、美容目的の整形などとは異なり、身体の機能改善を目的とした正当な医療行為ですので、堂々と申告して大丈夫です。

どれくらい戻ってくるの?

戻ってくる金額(還付金)は、その方の所得税率によって異なります。 例えば、所得税率が20%の方が、再生医療などで年間50万円の医療費を支払った場合を単純計算すると、約8万円程度の税金が安くなる可能性があります(※住民税の減税分も含むイメージです。正確な計算は個人の条件によります)。

治療費そのものが安くなるわけではありませんが、後から税金として返ってくるお金を考えると、実質的な負担は表示価格より軽くなります。 領収書は再発行できないことが多いので、必ず大切に保管しておいてくださいね。

お金をかけずにできること・保険でできること

もちろん、いきなり高額な治療に踏み切る必要はありません。まずは保険診療の範囲内や、日常生活でできることから始めるのも賢い選択です。

ヒアルロン酸注射とリハビリ(保険診療)

変形性膝関節症などの場合、ヒアルロン酸の注射や痛み止めの処方、理学療法士によるリハビリテーションは保険が適用されます。 これらを行うことで痛みがコントロールできる方もいらっしゃいます。

適正体重の維持と筋力トレーニング

これは「無料」でできる、最も効果的な治療の一つです。 体重が1kg減ると、歩くときの膝への負担は5kg減ると言われています。また、太ももの筋肉を鍛えることで、関節への衝撃を和らげることができます。 当院でも、こうした生活習慣のアドバイスを丁寧に行うことを心がけています。

よくある質問・誤解にお答えします

費用のこととなると、なかなか医師には聞きづらいこともありますよね。よくいただく質問をまとめました。

Q. 高額療養費制度は使えますか?

A. 残念ながら、再生医療(自由診療)には使えません。 高額療養費制度は、あくまで「保険診療」の自己負担が高額になった場合に使える制度です。全額自己負担の自由診療には適用されないため、間違えないように注意が必要です。

Q. 医療費控除の申請は難しいですか?

A. 最近はスマホやパソコンから簡単に申告できるようになっています。 「e-Tax(イータックス)」を使えば、ご自宅から申請が可能です。年間の医療費の領収書(再生医療だけでなく、風邪薬や他の病院代、通院の交通費も含められます)をまとめておき、翌年の2月〜3月の確定申告期間に手続きをします。

Q. 民間の医療保険(生命保険)の手術給付金は出ますか?

A. ご加入の保険契約によりますが、出る場合と出ない場合があります。 「公的医療保険連動型」の保険だと出ないことが多いですが、契約内容によっては自由診療でも給付金が出るタイプがあります。治療を受ける前に、一度保険会社の担当者やコールセンターに「変形性関節症に対する自由診療の治療(具体的な治療名)は対象になりますか?」と問い合わせてみることを強くおすすめします。

まとめ:諦める前に、まずは正しい情報を

関節の痛みは、ご本人にしかわからない辛さがあります。「年のせいだから」と諦めてしまう前に、まずはご自身の痛みの原因を知り、どんな治療の選択肢があるのかを知ることが大切です。

再生医療は決して安い治療ではありません。しかし、長年の痛みから解放され、旅行や趣味を再び楽しめるようになるための「将来への投資」と考える患者さんも多くいらっしゃいます。 費用対効果に納得し、医療費控除などの制度を賢く利用することで、納得のいく治療を受けていただきたいと願っています。

当院では、無理に高額な治療を勧めることは決してありません。保険診療でできること、自由診療でできること、それぞれのメリットと費用を包み隠さずお話しし、患者さんと一緒にベストな方法を考えます。 費用のことも含めて、どうぞ気兼ねなくご相談ください。

札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。

院長 川上公誠

プロフィール


監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長

岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。

この記事を書いたのは

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