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スポーツ外傷膝 ジャンパー膝とは?膝の前側が痛いときの原因と治し方

膝の前側がズキズキ痛む…特にジャンプや階段の上り下りで痛みを感じる方は、「ジャンパー膝(膝蓋腱炎)」の可能性があります。スポーツをしている若い世代に多いこの症状ですが、実は40代以降でも発症することがあります。この記事では、ジャンパー膝の原因、症状、診断方法、治療法、予防法について、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
ジャンパー膝とは?名前の由来と病態
ジャンパー膝は医学的には「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)」と呼ばれ、膝のお皿(膝蓋骨)とすねの骨(脛骨)をつなぐ「膝蓋腱」に炎症が起きることで生じます。名前の通り、バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプを繰り返すスポーツ選手によく見られるため「ジャンパー膝」と呼ばれます。
ジャンプの着地やダッシュ、方向転換といった動作の際、膝蓋腱には強い牽引力がかかります。これが繰り返されると、腱に微細な損傷が起き、炎症や痛みにつながるのです。
主な原因とリスク要因
ジャンパー膝の主な原因は、膝蓋腱への過度な負担です。特に以下のような状況ではリスクが高まります。
- 繰り返しジャンプや着地を行うスポーツ(例:バレー、バスケ、サッカー)
- 下半身の筋力バランスの崩れ(特に太もも前面の大腿四頭筋)
- 柔軟性の低下(ハムストリングやふくらはぎの筋肉の硬さ)
- 不適切なシューズや硬いグラウンドでの運動
- 成長期で骨と筋肉のバランスが不安定な時期
中高生の運動部員だけでなく、社会人になってから運動を再開した方や、体重が増えたことで膝への負担が増した40代以降の方にも見られます。
症状の特徴
ジャンパー膝の主な症状は以下の通りです。
- 膝のお皿の下(膝蓋腱)の痛みや違和感
- ジャンプや階段昇降、正座の時に痛む
- 進行すると安静時にも痛みが出る
- 腫れや熱感を伴うことは少ない
早期では運動後のみ痛む「違和感レベル」ですが、進行すると日常生活にも支障をきたすことがあります。放置すると、腱に微細な断裂が蓄積し、慢性炎症や断裂リスクも高まります。
診断方法
医師による診察では、まず問診と触診により、膝蓋腱の圧痛の有無を確認します。必要に応じて以下の検査が行われます。
- 超音波検査(エコー):腱の腫れや損傷の程度をリアルタイムで確認
- MRI検査:慢性化や他疾患との鑑別が必要な場合に有効
- X線検査:骨の異常やオスグッド病との違いを確認
治療法:まずは保存療法が基本
ジャンパー膝の治療は、**保存療法(手術をしない治療)**が基本です。
- 運動制限と安静
痛みの原因となる動作を一時的に中止します。症状に応じてテーピングやサポーターを併用することもあります。 - アイシングと消炎鎮痛薬の使用
炎症を抑え、痛みを軽減します。 - ストレッチと筋力トレーニング
大腿四頭筋のストレッチと、臀部や体幹の筋力強化が重要です。正しいフォームでのリハビリが回復のカギです。 - 物理療法(超音波治療・電気治療)
痛みの緩和や血流促進を目的に行われます。 - 再生医療(PRP療法・幹細胞治療)
近年では、自己血液由来のPRP(多血小板血漿)を注射し、腱の修復を促す治療法も注目されています。慢性化して治りにくいジャンパー膝に対して効果が期待されています。
手術は必要?
保存療法を3〜6ヶ月行っても改善しない場合、稀に手術が検討されます。手術では、炎症を起こした腱の一部を切除・縫合する方法がとられますが、術後のリハビリが長期に及ぶため、慎重な判断が必要です。
予防のポイント
ジャンパー膝を予防するためには、以下のポイントを意識することが大切です。
- ウォームアップとクールダウンを丁寧に行う
- 太ももの前後、ふくらはぎのストレッチを習慣化する
- 正しいフォームでジャンプや着地を行う
- 運動量を急激に増やさない
- クッション性のあるシューズを選ぶ
特に部活動に励む中高生や、急に運動を再開した方は要注意です。日々のケアと予防が、膝の健康を守ります。
まとめ
ジャンパー膝は、膝の前側の痛みの原因としてよく見られる疾患のひとつです。放置せず、早期の対応と正しいケアを行うことで、多くの場合は手術をせずに改善できます。
もし膝の痛みが長引いている場合は、整形外科専門医や再生医療を扱うクリニックに相談してみましょう。当院でもPRP療法をはじめとする再生医療による膝の治療に対応しています。膝の痛みでお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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