
コラム COLUMN
肩 肩が上がらない…痛みの原因とリハビリの進め方を専門医が解説

この記事の内容
「肩が痛くて腕が上がらない…これって年のせい?」
ある日突然、腕を上げようとしたら「うっ…痛い!」と感じたことはありませんか?
洗濯物を干す、髪を結ぶ、電車のつり革をつかむ。今まで普通にできていた動作が、ある日からつらくなる。
そんな「肩が上がらない」という症状、実は50代以上の方にとってとても多い悩みです。
「五十肩かな?」「でも病院に行くほどじゃないし…」と様子を見ているうちに、痛みが長引いてしまうケースも。
今回は、そんな“肩が上がらない”症状の原因と、リハビリのポイントについて、整形外科専門医の立場からわかりやすくお伝えします。
どんなときに「肩が上がらない」と感じる?
患者さんの声を聞くと、次のような場面で困ることが多いようです。
- 上の棚に手が届かない
- 洋服を着替えるときに肩が痛む
- 夜中、肩の痛みで目が覚める
- お風呂で背中を洗うのが難しい
日常生活の動きが制限されると、それだけで大きなストレスになります。特に夜間の痛みや動きの制限があると、睡眠不足や気分の落ち込みにもつながります。
肩が上がらなくなる原因とは?
「肩が上がらない=五十肩」と思われがちですが、実は原因はひとつではありません。主な原因は以下の通りです。
1. 五十肩(凍結肩)
もっとも多い原因です。肩の関節周囲が炎症を起こし、関節がかたくなることで動きが制限されます。正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。40代後半~60代に多く見られ、特に原因がなく徐々に進行するのが特徴です。
2. 腱板損傷(けんばんそんしょう)
肩の深い部分には「腱板(けんばん)」という筋肉と腱の集合体があり、腕をスムーズに動かすのに欠かせません。これが加齢や使いすぎで部分的に切れたり、炎症を起こすと、力が入らず腕が上がらなくなります。
3. 石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃく)
腱板の中にカルシウムの塊(石灰)がたまって炎症を起こす疾患です。急に強い痛みが出て腕を動かせなくなることがあります。
4. 頸椎の異常(首からくる神経圧迫)
実は肩の問題ではなく、首の神経の圧迫によって肩や腕が動きにくくなることもあります。しびれや首のこりを伴う場合は、この可能性も考えられます。
肩が上がらないときの治療とリハビリのポイント
肩が動かないからといって、ずっと安静にしていると、逆に肩が固まってしまうことがあります。大切なのは、「痛みを避けつつ、少しずつ動かす」ことです。
1. 保存療法(まずは負担を減らす)
・炎症が強い時期は、無理に動かさずに冷やしたり、湿布・内服で痛みを抑えます。
・安静にしすぎないよう、痛みのない範囲で日常動作を意識して行いましょう。
2. ストレッチ・体操
医師やリハビリスタッフの指導のもと、ゆっくりと肩を動かす練習を行います。タオル体操や壁を使ったストレッチなど、痛みを悪化させない範囲で継続することが大切です。
3. リハビリ通院
関節が固くなっている場合は、理学療法士による可動域訓練や、筋力トレーニングが有効です。自宅だけでは難しい場合も、通院リハビリで効果的に改善が見込めます。
4. その他の治療(注射や再生医療)
五十肩や腱板損傷には、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)や、PRP注射といった再生医療を用いることもあります。当院でも、強い炎症が続く方には選択肢としてご案内することがあります。
よくある質問とその答え(FAQ)
Q. 肩が痛いときは、まったく動かさない方がいいですか?
A. 強い痛みがあるときは無理をしないことが大切ですが、まったく動かさないと肩が固まってしまうことがあります。痛みのない範囲で少しずつ動かすようにしましょう。
Q. 五十肩は自然に治ると聞いたのですが本当ですか?
A. 自然に良くなるケースもありますが、回復には1~2年かかることが多く、早めに適切なリハビリを行うことで期間を短縮できます。
Q. 湿布や痛み止めだけでよくなりますか?
A. 炎症を抑える意味では有効ですが、根本的な改善にはリハビリや運動療法の併用が重要です。医師の指導のもとで取り組むことをおすすめします。
「年のせい」とあきらめずに、一歩を踏み出してみてください
肩が上がらないという症状は、加齢のせいと片づけられがちですが、きちんと対応すれば改善できるケースが多くあります。
「そのうち良くなるだろう」と放っておかず、早めに原因を知り、適切な対処をすることが何より大切です。
ご自身の肩の状態に合わせたリハビリや治療を続けることで、痛みのない日常を取り戻すことができます。
肩の痛みにお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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