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肩 肩関節周囲炎とは?五十肩との違いや予防法

肩の痛みが続くと、「五十肩かもしれない」と感じる方も多いのではないでしょうか。実はその症状、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれるものかもしれません。この記事では、肩関節周囲炎の基本的な理解から、五十肩との違い、原因、予防法、そして最新の治療法までを分かりやすく解説します。
肩関節周囲炎とは?
肩関節周囲炎とは、肩関節の周囲にある筋肉や腱、靭帯、関節包(かんせつほう)などに炎症が起こることで、痛みや動きの制限が生じる疾患です。主に40代〜60代の中高年層に多く発症し、自然に改善することもありますが、放置すると関節が固まり「凍結肩(フローズンショルダー)」になることもあります。
五十肩との違いとは?
「五十肩」は、実は肩関節周囲炎の一つの通称です。年齢的に50歳前後に起こりやすいことから、俗称として「五十肩」と呼ばれています。医学的には同じく「肩関節周囲炎」に分類されますが、次のような特徴があります。
- 五十肩:明確な外傷歴がなく、自然に始まる肩の痛みと可動域制限を指す。
- 肩関節周囲炎(広義):腱板炎、石灰沈着性腱炎、上腕二頭筋長頭炎など、肩周囲の炎症を広く含む。
つまり、五十肩は肩関節周囲炎の中でも典型的なパターンといえるでしょう。
肩関節周囲炎の主な原因
肩関節周囲炎は明確な原因が分からないこともありますが、いくつかのリスク因子が知られています。
- 加齢による変性:腱や靭帯の柔軟性が失われ、小さな傷が炎症を引き起こす。
- 肩の使い過ぎ:繰り返しの動作によって腱や筋肉が疲労し、炎症を招く。
- 生活習慣病:糖尿病などの持病があると、発症しやすく、治りにくい傾向があります。
- 長期間の不動:骨折後の固定や安静状態などで肩関節が動かされないままになると、拘縮(こうしゅく)が進行します。
症状と経過の3つの段階
肩関節周囲炎の症状は段階的に変化していきます。
- 急性期(炎症期):肩にズキズキとした強い痛みがあり、夜間痛も特徴です。
- 拘縮期:痛みは少し落ち着きますが、肩が固まり動かしにくくなります。
- 回復期:少しずつ可動域が戻り、日常生活の動作が楽になります。
診断方法
診断は主に問診と触診、そして画像検査を用います。
- X線検査:骨の変形や石灰化の有無を確認。
- 超音波検査:腱板の損傷や炎症の程度を評価。
- MRI:詳細な軟部組織の状態が分かります。
治療法の選択肢
症状の程度に応じて、次のような治療が行われます。
- 保存療法:消炎鎮痛剤、湿布、温熱療法、ストレッチなど。
- 注射治療:関節内ステロイド注射やヒアルロン酸注射。
- リハビリテーション:可動域を広げる運動療法が効果的です。
- 再生医療:PRP療法(多血小板血漿療法)や幹細胞治療も注目されています。自己組織の力を使って組織修復を促すため、副作用が少なく、手術を回避したい方に適しています。
肩関節周囲炎の予防法
日常生活で以下のようなポイントを意識することで、肩関節周囲炎の予防が期待できます。
- 肩を冷やさない:特に寒い季節は肩を保温しましょう。
- 適度な運動:肩回しやストレッチを習慣づけることで、柔軟性を維持できます。
- 姿勢を整える:猫背や長時間の前かがみ姿勢は肩の負担を増やします。
- 重い物を無理に持たない:肩に過度な負荷をかけないことも大切です。
いつ受診すべきか?
次のような症状がある場合は、整形外科の受診をおすすめします。
- 痛みで夜眠れない
- 肩がまったく上がらない
- 服の着脱が困難
- 痛みが1ヶ月以上続いている
早期の診断と適切な治療が、肩の可動域の回復と慢性化の予防につながります。
まとめ
肩関節周囲炎は、中高年に多く見られる一般的な肩のトラブルです。「そのうち治る」と放置せず、早めの対応とリハビリ、必要に応じた先進医療の選択によって、快適な日常生活を取り戻すことができます。五十肩だと思っていた症状も、詳しく検査すれば別の病態が隠れていることもあるため、自己判断は禁物です。肩の痛みや違和感がある方は、ぜひ整形外科専門医にご相談ください。


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