右だけ股関節が痛い」「片脚だけ違和感が続く」――そんな悩みを抱えている方は少なくありません。年齢を重ねると「仕方ない」と思ってしまいがちですが、実は片側の股関節の痛みには原因となる病気が隠れていることがあります。今回は、片脚だけ股関節が痛いときに考えられる疾患と、その対処法について専門医の立場からわかりやすく解説します。

片脚の股関節が痛むときの症状と日常での困りごと

片脚の股関節痛は、歩行や立ち上がり、階段の上り下りといった日常の動作で顕著に現れます。特に長時間歩いた後や座っていて立ち上がるときに痛みを感じる方が多いです。また、片方だけに負担がかかるため、姿勢の崩れや腰の痛みを併発することもあります。「朝は痛みが強い」「夜寝返りを打つと痛む」といった訴えもよく聞かれます。

考えられる原因と代表的な疾患

片脚の股関節痛には、いくつかの代表的な病気が関わっていることがあります。

変形性股関節症

最も多いのが変形性股関節症です。股関節の軟骨がすり減ることで炎症や痛みが生じます。進行すると可動域が狭くなり、歩幅が小さくなるのが特徴です。

大腿骨頭壊死症

骨への血流が途絶えて壊死（えし）する病気です。初期は軽い痛みですが、進行すると強い痛みや脚の短縮が起こることがあります。特にステロイド治療や大量の飲酒歴がある方にみられることが多いです。

関節唇損傷

股関節の縁にある「関節唇」という組織が傷つくことで、引っかかるような痛みや動作時の違和感が出ます。若い世代やスポーツをされている方にも起こり得ます。

腰椎や膝からの影響

股関節自体ではなく、腰の神経や膝の病気が原因で片脚に痛みが出ることもあります。股関節痛と勘違いされやすいので注意が必要です。

治療法と対処法

治療は原因や進行度によって異なりますが、まずは保存療法から始めるのが一般的です。

• 薬物療法：痛み止めや湿布で炎症を和らげる
• リハビリ・運動療法：太ももやお尻の筋肉を鍛え、関節への負担を減らす
• 装具や杖の使用：痛みが強い時期に歩行を助ける
• 体重管理：股関節への負担を軽減するため、適正体重を維持する

症状が進行して日常生活に支障をきたす場合は、関節注射や手術（人工股関節置換術など）が検討されます。近年では、PRP治療や幹細胞治療といった再生医療を選択する方も増えていますが、まずは基本的な保存療法をしっかり行うことが大切です。

よくある質問と誤解

Q. 股関節が痛いときは安静にしたほうがいいですか？
A. 強い痛みがあるときは無理を避けるべきですが、完全に動かさないと筋力が落ちてしまいます。医師や理学療法士の指導のもと、負担の少ない運動を続けることが勧められます。

Q. 片脚だけ痛いなら、もう片方は大丈夫？
A. 実際には反対側の股関節に負担がかかり、将来的に両側に症状が出ることもあります。早めの診断と予防が重要です。

Q. 年齢のせいだから治らないのでは？
A. 年齢は一因ですが「治らない」とは限りません。保存療法や適切なリハビリで改善するケースも多くあります。

再生医療という新しい選択肢

近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP（多血小板血漿）治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。

例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。

ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ

片脚だけの股関節痛は「年のせい」や「疲れ」で片づけられるものではなく、原因となる疾患が隠れていることが少なくありません。早めに整形外科を受診すれば、病気の進行を防ぎ、日常生活の質を保つことができます。「もう仕方ない」と諦める必要はありません。改善のための方法は必ずありますので、不安を感じたら一度ご相談ください。