
コラム COLUMN
再生医療肩 腱板断裂に対する再生医療の可能性とは?手術以外の方法を解説

肩の痛みが続く…それ、腱板断裂かもしれません。
中高年の方やスポーツ愛好家の間で増えている「腱板断裂」は、肩の運動機能に大きな影響を与える疾患です。従来は手術が一般的な治療法とされてきましたが、近年は再生医療という新しい選択肢が注目されています。本記事では、腱板断裂の基礎知識から、手術以外の再生医療によるアプローチまで、整形外科専門医の視点でわかりやすく解説します。
腱板断裂とは?——肩の痛みと動かしづらさの正体
腱板とは、肩の奥深くにある「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょくかきん)」「小円筋(しょうえんきん)」「肩甲下筋(けんこうかきん)」の4つの筋肉が作る腱の集合体です。これらは肩関節の安定性と運動を支える重要な役割を担っています。
腱板が断裂すると、次のような症状が現れます。
- 肩の上げ下げや回旋で痛みが出る
- 腕が上がらない、力が入らない
- 夜間痛で眠れないこともある
加齢に伴う変性、転倒やスポーツによる外傷が主な原因です。MRIやエコー検査で診断されます。
腱板断裂の従来の治療法
腱板断裂の治療は、断裂の大きさや症状の程度によって異なります。主に以下の方法が行われてきました。
- 保存療法(リハビリ・薬物療法)
痛み止めや運動療法で症状を軽減するアプローチです。ただし、断裂そのものを修復することはできません。 - 手術療法(関節鏡視下腱板縫合術など)
完全断裂や保存療法で効果がない場合には、腱を縫合する手術が選択されます。しかし、高齢者では術後の回復が遅く、再断裂のリスクもあります。
そこで登場したのが、再生医療という新しい治療の選択肢です。
再生医療による新しいアプローチ
近年、腱板断裂に対してPRP療法や幹細胞治療といった再生医療が注目を集めています。
PRP療法(多血小板血漿療法)
患者さん自身の血液から、成長因子を多く含む血漿を抽出し、損傷部位に注射する治療法です。炎症を抑えながら組織の修復を促すことが期待されます。軽度の部分断裂や術後の回復促進に活用されており、外来で行えるのもメリットです。
幹細胞治療(脂肪由来幹細胞など)
腹部などから採取した**脂肪組織由来の幹細胞(ADSCs)**を精製し、腱板の損傷部位に注入することで、腱組織の再生を促すという画期的な方法です。手術に頼らず自己組織の力で修復を目指せるため、体への負担が少なく高齢者にも適応しやすい点が特徴です。
再生医療のメリットと注意点
再生医療には以下のような利点があります。
- 手術を回避できる可能性がある
- 自己組織を活用するため拒絶反応の心配がない
- 外来治療が可能なケースも多い
一方で、以下の注意点もあります。
- 保険適用外の自由診療となる
- 症例によっては手術が必要な場合もある
- 医療機関ごとの実績や技術差がある
治療の選択肢として再生医療を検討する際は、信頼できる専門医の診察を受けることが重要です。
まとめ:腱板断裂でも“切らずに治す”可能性が広がっている
腱板断裂と診断されると「手術しかない」と思い込んでしまう方も多いかもしれません。しかし、現代医療では再生医療という手術以外の新たな選択肢が存在します。症状の程度や年齢、生活スタイルに応じて、最適な治療法を選ぶことで、より早く、そして負担の少ない回復が期待できます。
肩の痛みでお悩みの方は、まずは専門医に相談して、最新の治療法について知ることから始めてみてはいかがでしょうか。


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