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腰膝 膝や腰が痛む中高年に多い整形外科疾患とは?専門医がわかりやすく解説

「最近、膝が痛くて正座がつらい」「腰が重だるくて長時間歩けない」。50代以降になると、このような声を多く耳にします。年齢を重ねると仕方ないと思い込んでいる方も少なくありませんが、実は膝や腰の痛みには明確な原因があり、適切な治療や生活改善によって和らげることができます。本記事では、中高年に多い膝や腰の整形外科疾患を、わかりやすく解説します。
この記事の内容
症状や悩みの背景
膝や腰の痛みは日常生活に大きな影響を与えます。階段の上り下り、立ち上がる動作、長時間の歩行や立ち仕事など、当たり前にできていた動作が困難になると、外出や趣味を控えるようになり、生活の質が低下してしまいます。また「痛いから動かさない方がよいのでは」と考える方も多いのですが、それがかえって筋力低下や関節のこわばりにつながることもあります。
中高年に多い整形外科疾患と原因
膝や腰の痛みの背景には、いくつか代表的な疾患があります。
変形性膝関節症
最も多い疾患の一つです。膝の軟骨がすり減って関節の隙間が狭くなり、動かすと痛みが出ます。正座ができない、階段がつらい、といった訴えが典型的です。加齢に加え、肥満や筋力低下も進行の要因です。
腰部脊柱管狭窄症
腰の神経の通り道が狭くなり、腰痛に加えて足のしびれや歩行困難を伴います。「少し休むと歩けるが、長く続けるとまた痛む」という間欠性跛行が特徴です。
椎間板ヘルニア
比較的若い世代にもみられますが、中高年でも発症します。椎間板が飛び出して神経を圧迫し、腰や足に痛みやしびれを引き起こします。
骨粗鬆症による圧迫骨折
骨がもろくなり、転倒や軽い衝撃で背骨が潰れるように折れてしまいます。急な背中や腰の痛みで発症し、放置すると背中が曲がりやすくなります。
その他の疾患
股関節の変形性関節症や筋肉・靱帯の損傷も、膝・腰の痛みの原因となります。
治療法と対策
膝や腰の疾患には、段階的な治療法があります。
保存療法
まずは体への負担を減らす工夫が大切です。
- 生活習慣の見直し:体重管理や正しい姿勢の意識
- 装具療法:膝サポーターや杖の活用
- 薬物療法:鎮痛薬や湿布
- 関節注射:ヒアルロン酸などの関節注射で炎症や痛みを和らげる
運動療法
筋力低下を防ぐためには適度な運動が必要です。特に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を鍛えることで膝の安定性が増します。腰痛にはストレッチや体幹トレーニングが効果的です。
手術
保存療法で改善が乏しい場合、人工関節置換術や内視鏡手術が検討されます。ただし、すべての人が手術を必要とするわけではなく、病状や生活背景に応じて選択します。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
よくある質問と誤解
Q. 痛みがあるときは安静にした方がいいですか?
A. 完全に動かさないと筋力が落ちてしまいます。痛みが強い時期は無理せず、可能な範囲で軽い運動やストレッチを行うことが大切です。
Q. 膝や腰の痛みは年齢のせいだから仕方ない?
A. 年齢だけが原因ではありません。筋力や姿勢、生活習慣の改善によって多くの方が痛みを軽減できます。
Q. 痛み止めは飲み続けても大丈夫?
A. 医師の指導のもとで適切に使用すれば問題ありません。ただし長期的な使用は副作用のリスクがあるため、他の治療法と併用することが推奨されます。
Q. 注射や手術は必ず必要ですか?
A. 多くの方は保存療法で改善します。進行度や症状に応じて、医師と相談しながら治療法を選びましょう。
まとめ
膝や腰の痛みは、中高年に多い整形外科疾患の代表的な症状です。原因を理解し、適切な治療や生活改善を行うことで、痛みを和らげ日常生活を取り戻すことが可能です。「年齢のせい」とあきらめず、早めに専門医に相談することが大切です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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