
コラム COLUMN
膝 膝関節の変形は治る?保存療法と手術の選択肢

「最近、膝がまっすぐ伸びない気がする…」
「鏡で見ると、膝の形が少し外に曲がってきたような…」
こんな不安を抱えて受診される方は少なくありません。階段を降りるときや立ち上がるときに痛みを感じることが増え、病院で「膝関節の変形がありますね」と言われて驚く方もいます。
膝の変形は年齢とともに起こりやすいものですが、だからといって必ず悪化するわけではありません。早めに対処することで進行を抑え、生活の質を保つことができます。
この記事の内容
膝関節の変形とは?
膝関節は太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、そして膝蓋骨(お皿の骨)からできています。これらの骨の間には「軟骨」があり、クッションの役割を果たしています。
長年の使用やケガの影響で軟骨がすり減ると、骨同士が直接当たり、関節の形が少しずつ変わっていきます。これが「膝関節の変形」です。医学的には「変形性膝関節症」と呼ばれます。
どんな症状が出るの?
膝の変形による症状は人によって異なりますが、よくあるのは次のようなものです。
- 歩き始めや立ち上がりのときに痛む
- 長く歩くと膝が重く感じる
- 階段の上り下りがつらい
- 膝がまっすぐ伸びにくい、または曲げにくい
- O脚(外側に曲がる形)になってきた気がする
初期は「痛いけれど休めば治る」程度ですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたすようになります。
原因と進行の仕組み
膝の変形の主な原因は、加齢による軟骨のすり減りです。ただし、年齢だけが原因ではありません。
- 過去のスポーツや事故によるケガ
- 体重の増加による膝への負担
- O脚やX脚などの骨格の傾き
- 遺伝的な要因
軟骨は一度すり減ると元には戻りませんが、進行を遅らせることは可能です。早期の段階での生活習慣改善や運動療法が重要です。
膝関節の変形に対する保存療法
保存療法とは、手術をせずに症状を改善・進行を抑える方法のことです。主な方法は次の通りです。
1. 運動療法(ストレッチ・筋トレ)
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)やお尻の筋肉(殿筋)を鍛えることで膝の負担を軽くします。特に椅子に座って足を伸ばす運動や、ゆっくりとしたスクワットは効果的です。
2. 体重管理
体重が1kg減ると、歩行時に膝への負担は約3〜4kg軽くなると言われています。無理のない減量が膝の健康に直結します。
3. 装具療法
膝サポーターや足底板(インソール)で関節の安定性を高め、動作時の痛みを軽減します。
4. 薬物療法
痛みが強い場合は鎮痛薬や湿布が使われます。膝に直接ヒアルロン酸を注射する方法もありますが、効果は一時的です。
手術が必要になるのはどんなとき?
保存療法でも改善が見られず、日常生活が著しく制限される場合は手術が検討されます。主な手術は以下の通りです。
- 関節鏡手術:傷んだ軟骨や半月板の一部を取り除く
- 骨切り術:骨の角度を変えて荷重を分散させる
- 人工関節置換術:関節を人工のものに置き換える
手術にはそれぞれメリットとデメリットがあります。年齢、生活スタイル、膝の状態を総合的に考えて選択します。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q. 膝が痛いときは動かさないほうがいい?
A. 激しい痛みがあるときは安静が必要ですが、完全に動かさないと筋力が落ち、かえって悪化します。痛みのない範囲での運動が大切です。
Q. 保存療法だけで治せますか?
A. 初期〜中期であれば、進行を遅らせ症状を軽くできる可能性があります。ただし、変形を完全に元に戻すことは難しいです。
Q. サプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチンなどは一部の方に痛み軽減の効果が報告されていますが、個人差があります。医師と相談して使用しましょう。
まとめ:あきらめないことが大切
膝関節の変形は「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちですが、適切な治療と生活習慣の見直しで症状は改善できます。
早めに専門医に相談し、自分に合った方法を続けることで、これからの生活の質を守ることが可能です。
「痛みを減らして、また旅行や趣味を楽しみたい」——そんな前向きな気持ちが、改善への第一歩になります。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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