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膝 変形性膝関節症の運動療法|自宅で行う筋トレと痛みが出たときの対応

変形性膝関節症の運動療法は、太ももやお尻の筋肉を鍛える運動と、膝の曲げ伸ばし、無理のない歩行を組み合わせることが基本です。膝の痛みには、軟骨や骨の変化だけでなく、炎症、筋力低下、動作時の負担などが関わります。まずは座って行う軽い運動などを少量から始め、翌朝に痛みや腫れが増えていないか確認しましょう。痛みを我慢して回数を増やす必要はありません。急な強い痛み、体重をかけられない状態、赤く熱を持つ腫れがある場合は、運動よりも受診を優先してください。
この記事の内容
変形性膝関節症に運動療法が大切な理由
運動療法は、膝の痛みを和らげ、歩く・立ち上がるといった動作を保つための基本的な治療です。日本整形外科学会の診療ガイドライン2023でも、運動療法の実施が推奨されています。ただし、効果の大きさには個人差があります。[1]
変形性膝関節症とは、膝の軟骨や骨などに変化が生じ、痛み、腫れ、曲げ伸ばしのしにくさなどを来す病気です。加齢のほか、体重、過去のけが、膝にかかる負担などが関係します。[2]
痛みを避けて動かない生活が続くと、筋力や柔軟性が低下し、日常動作がさらに難しくなることがあります。運動療法では、この悪循環を減らすことを目指します。
一方、筋トレで骨の変形そのものを元に戻せるわけではありません。「画像を正常にすること」だけを目標にせず、「買い物で歩ける」「椅子から楽に立てる」といった生活上の目標を決めることが大切です。
自宅で始める前に確認したいこと
初めての膝痛や、いつもと違う痛みがある場合は、自己判断で筋トレを始めず、原因を確認しましょう。以下の運動は、変形性膝関節症と診断され、運動を制限されていない方を想定しています。
- 普段より腫れていないか、熱を持っていないか
- 立ち上がりや歩行で、急に痛みが強くなっていないか
- 膝が引っかかり、伸ばせなくなっていないか
- 転びそうなふらつきや、膝がガクッと折れる感じがないか
骨折や手術後などで医師から運動・体重のかけ方を指示されている方は、その指示を優先してください。立位が不安定な方は、寝た姿勢や座った姿勢で行う運動から選びます。
自宅でできる筋トレと膝の曲げ伸ばし
まずは「太ももに力を入れる運動」か「椅子での膝伸ばし」から、取り組みやすいものを選びましょう。すべての種目を一度に行う必要はありません。太ももだけでなく、お尻の筋肉や膝の動きにも目を向けます。[3・4]
以下の回数は、運動に慣れていない方が少量から試すための例です。ガイドラインで全員に指定された回数ではありません。呼吸を止めず、反動をつけずに行ってください。
1.太ももに力を入れる運動
膝を大きく動かさずに、太ももの前の筋肉を使う方法です。
- 安定したベッドなどに仰向けになり、片方の膝の下に丸めたタオルを入れます。
- 膝の裏でタオルを軽く押すつもりで、太ももの前に力を入れます。
- 5秒ほど保ち、ゆっくり力を抜きます。
開始の例:左右それぞれ5回。膝の裏や関節に痛みが出るほど押し込まないでください。
2.椅子に座って膝を伸ばす運動
立って体重をかける運動がつらい方でも、取り組める場合があります。
- キャスターのない安定した椅子に座り、必要なら座面を手で支えます。
- 片方の足をゆっくり持ち上げ、痛みのない範囲で膝を伸ばします。
- 3〜5秒ほど保ち、ゆっくり下ろします。
開始の例:左右それぞれ5回。まっすぐ伸ばすと痛む場合は、少し曲がった位置までにします。最初から足首に重りをつける必要はありません。
3.横向きで脚を上げる運動
お尻の横の筋肉を使い、立つ・歩くときに骨盤を支える働きを養います。
- 横向きに寝て、下側の膝を軽く曲げて体を安定させます。
- 上側の脚を伸ばし、体が後ろへ倒れない範囲で少し持ち上げます。
- ゆっくり下ろします。
開始の例:左右それぞれ5回。脚を高く上げることより、腰を反らさず動かすことを優先します。股関節や腰に痛みが出る場合は中止してください。
4.椅子からの立ち座り
立ち上がりが大きな痛みなくできる方は、生活動作に近い筋トレとして取り入れられます。
- 椅子を壁につけて固定し、両足を腰幅程度に開きます。
- 上体を少し前に倒し、ゆっくり立ちます。必要なら肘掛けを使います。
- 膝を内側に倒さず、お尻を後ろへ引くようにゆっくり座ります。
開始の例:3〜5回。低い椅子がつらい場合は、座面の高い安定した椅子を選びます。膝に鋭い痛みがある方や、ふらつく方は無理に行わないでください。
5.かかとを滑らせる曲げ伸ばし
膝の動きを保つための運動です。筋トレと組み合わせて行います。
- 仰向けになり、かかとをベッドなどにつけます。
- かかとをゆっくりお尻の方向へ滑らせ、膝を曲げます。
- 痛みのない範囲で、ゆっくり元に戻します。
開始の例:左右それぞれ5〜10回。深く曲げることにこだわらず、手で強く押したり、反動をつけたりしないでください。
筋トレの回数・頻度はどのくらいがよい?
運動量は「何回できたか」だけでなく、運動後と翌朝の膝の状態で決めます。軽い曲げ伸ばしと、筋肉が疲れる筋トレでは、休み方も変わります。
| 運動の種類 | 始め方の例 | 慣れてきたら |
|---|---|---|
| 軽い曲げ伸ばし | 1日1回、5〜10回から | 症状が増えなければ毎日の習慣にする |
| 筋トレ | 2種目程度を選び、各3〜5回から。まず週2〜3日 | 翌朝に悪化がなければ、各5〜10回へ少しずつ増やす |
| ウォーキングなど | 短時間から。歩行なら5分程度を試す方法もある | 休憩を挟み、時間を少しずつ延ばす |
この表は開始時の一例で、達成しなければならないノルマではありません。軽い筋肉の力入れは毎日行える場合もありますが、強い筋肉痛や疲れが残る日は休みを入れます。
余裕が出ても、回数・重り・運動時間を一度に増やさないでください。まずはどれか一つだけを少し増やし、膝の反応を確認します。
効果は1〜2回で判断せず、数週間単位で「歩ける時間」「立ち上がりやすさ」を見直します。ただし、悪化しているのに決めた期間まで我慢する必要はありません。
運動中や翌朝に膝が痛くなったときの対応
軽い違和感が出ても直ちに関節が傷んだとは限りませんが、痛みを我慢して続ける必要はありません。痛みの強さに加えて、腫れ、歩き方、翌朝の変化を確認してください。
| 膝の状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 軽い違和感が短時間で落ち着き、翌朝も普段と同じ | 同じ量を目安に続け、急に増やさない |
| 翌朝も普段より痛い、歩くときにかばう | 負担の大きい種目を休み、落ち着いてから回数や時間を減らして再開する |
| 鋭い痛み、引っかかり、新たな腫れが出る | その運動を中止する。症状が続く場合は整形外科へ相談する |
| 体重をかけられない、急な強い腫れ、赤み・熱感と発熱がある | 運動をやめ、当日中の受診を検討する |
たとえば、10回で翌朝に痛みが増えた場合は、症状が落ち着いてから5回に減らす方法があります。立ち座りがつらければ、座位の膝伸ばしなどへ変更します。これは調整例であり、腫れや強い痛みが続く場合は再開を急がないでください。
買い物、階段、長時間の立ち仕事も、その日の膝への負担に含まれます。外出でよく歩いた日は、自宅の筋トレを減らして構いません。
太ももの広い範囲に感じる張りと、膝関節の腫れ・熱感・鋭い痛みは区別して考えます。自分では判断しにくい場合は、「筋肉痛だろう」と決めつけず相談しましょう。
ウォーキング・ストレッチと生活の工夫
筋トレに加え、無理のない全身運動と生活動作の調整を組み合わせることが大切です。一度に長く歩くことや、膝を深く曲げることを目標にする必要はありません。[3・5]
ウォーキングは歩数より膝の反応を優先する
平らで歩きやすい場所を選び、会話ができる程度の速さで始めます。「毎日1万歩」などの一律の目標に合わせず、翌日に痛みが増えない量を探してください。
歩くと痛みが増す場合は、軽い負荷の室内自転車や水中歩行に替えられることがあります。自転車では、膝が深く曲がりすぎないようサドルを調整します。札幌の積雪・凍結期は、屋外歩行にこだわらず、転倒しにくい室内で続けましょう。
ストレッチは強く伸ばさない
太ももの裏やふくらはぎなどを、心地よく伸びる範囲でゆっくり伸ばします。膝関節が痛む、しびれるといった場合は中止してください。正座や深いしゃがみ込みで、無理に膝を曲げる必要はありません。
体重や日常動作も見直す
体重が多い方は、無理のない体重管理も膝の負担を減らす対策になります。ただし、高齢の方が食事を極端に減らすと筋肉も落ちやすいため、運動と食事の両方を調整します。
低い椅子を避ける、階段で手すりを使う、必要に応じて杖を使うなど、痛みを増やさず動ける環境を整えてください。
整形外科を受診した方がよい症状と検査
急な強い痛みや腫れがある場合、運動量を減らしても症状が続く場合は、膝の状態を再評価する必要があります。以前に変形性膝関節症と診断されていても、新しい痛みまで同じ原因とは限りません。
早めに受診したい症状
- 急に痛くなり、体重をかけられない
- 膝が赤く、熱を持って大きく腫れ、発熱もある
- 膝が引っかかって伸ばせない
- 転倒やひねった後から痛みが強い
- 夜間や安静時の痛みが続き、睡眠に支障がある
- 運動を軽くしても悪化し、歩ける距離が短くなっている
急な症状では、骨折、半月板の損傷、関節の感染、結晶による関節炎など、運動を続ける前に確認すべき原因もあります。
画像だけで運動の可否を決めない
診察では、痛みの経過、腫れ、膝の動き、筋力、歩き方を確認します。レントゲンで関節の隙間や骨の変化を調べ、症状と検査結果を合わせて判断します。[2]
レントゲンの変形が強くても、痛みが比較的軽い方はいます。反対に、変形が軽く見えても痛みが強い場合があります。画像の見た目だけを理由に「運動できない」「もっと鍛えればよい」とは決めません。
MRIは全員に必要な検査ではありません。レントゲンだけでは説明しにくい強い痛みや、骨・半月板などの病変が疑われる場合に検討します。超音波は、関節にたまった液体や周囲の組織の確認に役立つ場合があります。
運動療法だけでは改善しない場合の治療
痛みで運動を続けられない場合は、運動の内容を見直し、必要に応じて薬や装具などを組み合わせます。運動できないことを、本人の努力不足と考える必要はありません。
医師・理学療法士による動作指導のほか、外用薬や内服薬、杖・装具などを検討します。症状に応じて関節内注射を選ぶ場合もありますが、治療ごとの効果と注意点を確認して決めます。[2]
適切な保存療法を続けても、歩行、仕事、睡眠などへの支障が大きい場合は、人工膝関節置換術や骨切り術などの手術を相談する段階になることがあります。手術の判断には、変形の程度だけでなく、年齢、活動性、生活上の困りごと、本人の希望を含めます。
強い痛みを我慢しながら筋トレだけを続ける必要はありません。手術を検討する場合も、可能な範囲で筋力や体力を保つことが大切です。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ
変形性膝関節症の運動療法は、膝の状態に合わせて量を調整し、継続することが基本です。
- 太もも・お尻の筋トレ、膝の曲げ伸ばし、無理のない全身運動を組み合わせる
- 回数は少量から始め、運動後と翌朝の痛み・腫れを確認する
- 痛みが増えたら、回数、時間、種目を見直す
- 急な強い痛み、体重をかけられない状態、赤く熱を持つ腫れは受診を優先する
- 改善しない場合は、運動の方法や診断、治療方針を再評価する
症状が続く場合は整形外科で原因を確認し、自分の膝と生活に合った運動を相談しましょう。
よくある質問
Q1.変形性膝関節症の運動療法は、80代からでも始められますか?
年齢だけで運動療法ができないとは決まりません。筋力、ふらつき、持病に合わせて、座位や寝た姿勢の軽い運動から始められる場合があります。転倒が心配な方は、医師や理学療法士と安全な方法を確認しましょう。
Q2.膝がポキポキ鳴っても筋トレをしてよいですか?
音だけで、痛みや腫れがなければ、必ずしも運動を中止する必要はありません。ただし、音と一緒に痛みが出る、引っかかる、膝が伸びない場合は、その運動をやめて診察を受けてください。
Q3.歩いていれば、膝の筋トレはしなくてもよいですか?
歩行だけで必要な筋力を十分に鍛えられるとは限りません。ウォーキングは体力維持に役立ちますが、太ももやお尻の筋トレとは役割が異なります。膝の状態に合わせて両方を組み合わせましょう。
Q4.痛みがなくなったら運動療法をやめてもよいですか?
痛みが落ち着いても、筋力や膝の動きを保つため、無理のない運動を続けることが勧められます。同じメニューを続ける必要はなく、生活に取り入れやすい内容へ調整してください。
参考文献・参考資料
- 日本整形外科学会『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』第4章 CQ2(Minds掲載)。
- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」。
- 日本整形外科学会「変形性ひざ関節症の運動療法」。
- 日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ7 変形性膝関節症:自宅でできる運動療法」(2020年版・アーカイブ)。
- 日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ7 変形性膝関節症:生活の工夫」(2020年版・アーカイブ)。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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