コラム COLUMN
膝 膝を曲げると痛いのは何科?受診のタイミングと原因別の対策を専門医が詳しく解説

階段を上るとき、あるいは椅子から立ち上がろうとしたとき、ふとした瞬間に膝にズキッとした痛みを感じることはありませんか。 「以前はなんともなかったのに、最近膝を曲げるのがつらい」 「正座ができなくなってきたけれど、これは年のせいだろうか」 クリニックの診察室では、日々このようなお悩みを抱えた方々とお会いします。
膝の痛みは、日常生活の質に直結する大きな問題です。痛みを我慢して歩くのが億劫になると、筋力が落ち、さらに膝への負担が増えるという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。 この記事では、膝を曲げたときに痛みを感じる方が、まず何科を受診すべきか、そしてその痛みの裏側にどのような原因が隠れているのかを、専門医の視点から分かりやすくお伝えします。
この記事の内容
結論:膝の痛みは何科を受診すべき?
膝を曲げたときに痛みがある場合、結論からお伝えすると、受診すべきは「整形外科」です。
街中には整骨院や接骨院、整体など、体をケアしてくれる場所がたくさんあります。どこに行けばいいのか迷ってしまう方も多いでしょう。しかし、膝の関節の内部で何が起きているのかを正確に診断できるのは、医師のいる整形外科だけです。
整形外科が専門とする範囲
整形外科は、骨、関節、軟骨、筋肉、靭帯(じんたい)、神経といった「運動器」の疾患を扱う専門外来です。 膝を曲げると痛いという症状があるとき、レントゲンや超音波(エコー)、必要に応じてMRIなどの検査を行い、骨の変形具合や軟骨のすり減り、炎症の有無を医学的な根拠に基づいて判断します。
痛みの原因が「単なる使いすぎ」なのか、それとも「加齢による変形」なのか、あるいは「早期の治療が必要なケガ」なのかを見極めることが、改善への第一歩となります。
受診を検討すべき「痛みのサイン」
「これくらいの痛みで病院に行ってもいいのかな」と遠慮される方がいらっしゃいますが、以下のようなサインがあれば、迷わず整形外科のドアを叩いてください。
・膝が腫れている、あるいは熱を持っている感じがする ・膝を曲げきることができない、または伸ばしきれない ・立ち上がりや階段の最初の一歩が特に痛い ・膝の中に水が溜まっているような違和感がある ・安静にしていてもズキズキと痛む
これらの症状は、膝の中で炎症が起きている、あるいは構造的な問題が生じているサインです。早期に適切な診断を受けることで、手術を回避し、保存療法(手術をしない治療)で改善できる可能性が高まります。

なぜ膝を曲げると痛むのか?主な原因と病気
膝の関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、そして膝のお皿(膝蓋骨)が組み合わさってできています。これらの骨の表面は、滑らかな「軟骨」で覆われており、さらに「半月板(はんげつばん)」というクッションのような組織が衝撃を吸収しています。
膝を曲げる動作は、これらの組織に大きな圧力がかかる動作です。痛みの原因として多いものをいくつか挙げてみましょう。
変形性膝関節症(軟骨がすり減る病気)
50代以降の膝の痛みで最も多いのが、この「変形性膝関節症(へんけいせいしざかんせつしょう)」です。 長年の使用により、膝のクッションである軟骨が少しずつすり減り、関節の中で炎症が起きることで痛みが生じます。
初期の段階では、動き出しのときに痛みますが、少し動いていると楽になるのが特徴です。進行すると、膝を深く曲げることが困難になり、正座ができなくなったり、歩行時にも常に痛みを感じるようになったりします。
半月板の損傷
膝の中にある三日月型の軟骨のような組織、半月板(はんげつばん)が傷つくことで痛みが出ることがあります。 若い方の場合はスポーツ中の怪我が原因となることが多いですが、50代以降の方は、加齢によって半月板が脆くなり、階段の上り下りなどの日常的な動作で少しずつ傷ついてしまう「変性断裂」が多く見られます。
膝を曲げたときに「引っかかる感じ」や「何かが挟まっているような痛み」がある場合は、半月板のトラブルを疑います。
膝の炎症と「水」の正体
「膝に水が溜まった」という話をよく耳にすると思います。この水は、医学的には「関節液(かんせつえき)」と呼びます。 関節内で炎症が起きると、火事を消し止めようとする反応のように、体の中から大量の液が出てきます。これが溜まりすぎると、膝がパンパンに張ってしまい、曲げようとしたときに圧迫感や強い痛みが生じるのです。
水を抜くと癖になるという迷信がありますが、それは間違いです。水が溜まる「原因」が治っていないから、また溜まるのであって、適切に原因を治療することが重要です。

病院で行われる主な治療法と自分でもできる対策
整形外科を受診した後は、診断結果に基づいて治療が進められます。多くの場合、まずは体を傷つけない「保存療法」からスタートします。
痛みを和らげる保存療法
痛みが強い時期には、まずはその炎症を抑えることが優先されます。 飲み薬や貼り薬といった消炎鎮痛剤を使用するほか、関節の中にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。ヒアルロン酸はもともと関節内にある成分で、潤滑油のような役割を果たし、動きを滑らかにして摩擦を減らす効果が期待できます。
また、理学療法士によるリハビリテーションも非常に有効です。固くなった筋肉をほぐし、膝に負担のかからない体の使い方を学びます。
膝の負担を減らす生活習慣のコツ
日常生活の中でのちょっとした工夫が、膝の痛みを大きく変えます。
・洋式生活への切り替え 畳に座る、布団から起き上がる、といった和式の動作は膝に大きな負担をかけます。椅子やベッド、洋式トイレを使用する「洋式生活」にシフトするだけで、膝へのダメージを劇的に減らすことができます。
・靴選びとインソール クッション性の高い靴を選びましょう。また、O脚(がに股)気味の方は、足の外側が高くなったインソール(足底板)を使うことで、膝の内側にかかる負担を外側に分散させることができます。
・体重の管理 膝にかかる負担は、歩行時で体重の約3倍、階段では約5倍と言われています。わずか1キロの減量でも、膝にとっては数キロ分の負担軽減になるのです。
無理のない範囲で始める筋力トレーニング
膝を守るために最も大切なのは、太ももの前の筋肉である「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」を鍛えることです。この筋肉がしっかりしていると、膝関節にかかる衝撃を筋肉が吸収してくれます。
簡単な運動としておすすめなのが「足上げ運動」です。 仰向けに寝た状態で、片方の膝を立て、もう片方の足をまっすぐ伸ばしたまま20センチほど持ち上げます。そのまま5秒間キープして、ゆっくり下ろします。これを左右10回ずつ、無理のない範囲で毎日続けてみてください。これだけでも膝の安定感が増していきます。

よくある質問:膝の痛みに関する疑問にお答えします
診察の際によくいただく質問をまとめました。
Q1. 痛みがあるときは動かさない方がいいですか?
A1. 激しい炎症がある時期(熱を持って腫れているとき)は安静が第一ですが、それ以外の時期は「適度に動かす」ことが推奨されます。 全く動かさないでいると、関節を支える筋肉が衰え、関節自体も固くなってしまいます。これを「拘縮(こうしゅく)」と呼び、かえって治りを遅くすることがあります。痛みの出ない範囲でのストレッチやウォーキングは、むしろ治療の一部と考えて良いでしょう。
Q2. 膝を温めるのと冷やすのは、どちらが効果的ですか?
A2. 症状の状態によって使い分けが必要です。 急に痛みが出て、膝が熱を持って腫れているときは「冷やす」のが正解です。氷嚢などで15分ほど冷やして炎症を抑えましょう。 一方で、慢性的な重だるい痛みや、お風呂で温まると楽になるような場合は「温める」のが効果的です。血行を良くすることで、筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぎます。
Q3. サポーターは四六時中つけていても大丈夫ですか?
A3. サポーターは外出時や、膝を使う作業をするときなどの「ここぞという時」に使うのが理想的です。 サポーターを付けると膝が安定し、精神的な安心感も得られます。しかし、24時間頼り切ってしまうと、本来自分の筋肉で支えるべき力が弱まってしまう懸念があります。家の中でリラックスしているときなどは外し、メリハリをつけて活用しましょう。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:未来の歩行を守るために今できること
膝を曲げると痛いという症状は、体からの大切なサインです。 「年だから仕方ない」「周りもみんな痛がっているから」と諦めてしまうのは、非常にもったいないことです。現在の医療では、手術に至らなくても痛みをコントロールし、以前のように散歩や旅行を楽しめるようになる方法がたくさんあります。
まずは何科に行くべきか悩む時間を、一歩踏み出す時間に変えてみてください。整形外科を受診し、自分の膝の状態を正しく知ることから、新しい生活が始まります。
膝の健康は、一生自分の足で歩き続けるための財産です。痛みと上手に付き合い、改善していくためのパートナーとして、私たち専門医をぜひ頼ってください。あなたの毎日が、痛みから解放されてより豊かなものになることを心から願っています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約






