コラム COLUMN
膝 膝が痛いときのウォーキング|歩く量の決め方と休むべきサイン

膝が痛いときのウォーキングは、痛みの原因と、歩いたあとの症状で続けるかを判断します。変形性膝関節症などの慢性的な痛みでは、状態に合わせた運動が役立つ一方、急な強い痛みや腫れがあるときは無理に歩かないことが大切です。原因には関節の変化だけでなく、半月板の損傷や膝周囲の炎症などもあります。まず歩く時間や距離を控えめにし、歩行中・帰宅後・翌朝の変化を確認しましょう。体重をかけられない、膝が赤く熱を持つ、発熱を伴う場合は、ウォーキングを中止して早めに受診してください。
この記事の内容
膝が痛いとき、ウォーキングは続けてもよい?
慢性的な軽い痛みで、腫れが増えず、普段どおりに歩ける場合は、量を調整して続けられることがあります。ただし、初めての痛みや原因が分からない痛みでは、先に整形外科で相談しましょう。
変形性膝関節症とは、軟骨や半月板、骨などの変化に伴い、膝の痛みや動かしにくさが生じる病気です。日本整形外科学会の診療ガイドラインでは、痛みや身体機能の改善を目的とした運動療法が推奨されています。joa.or.jp
一方で、痛みを我慢して歩き続ける必要はありません。「運動が大切」という説明は、どのような膝の痛みでも長距離を歩くべき、という意味ではありません。
| 膝の状態 | ウォーキングの考え方 |
|---|---|
| 診断済みの慢性的な軽い痛みで、歩き方が崩れず、翌朝も普段と変わらない | 短時間から、症状を見ながら継続する |
| 歩くほど痛む、足を引きずる、帰宅後や翌朝に症状が増える | その日の運動は切り上げ、量や方法を見直す |
| 急な強い痛み、目立つ腫れ・熱感、体重をかけられない | 運動を中止し、原因の確認を優先する |
この表は運動を調整する目安であり、安全を保証する判定表ではありません。医師から体重をかける量や運動の制限を指示されている場合は、その指示を優先してください。
膝に無理のない歩く量はどう決める?
歩く量は、年齢だけで決めず、現在の症状と生活全体の負担に合わせます。歩数や距離の達成より、翌日の日常生活に痛みを持ち越さないことを優先しましょう。
まずは症状が増えない短い時間から始める
運動を始めてよいと確認できた方は、たとえば平らな道を5分程度歩くなど、短い時間から試します。5分は全員に適した処方ではなく、開始方法の一例です。それより短くても痛む場合は、無理に続けないでください。
休憩しやすい場所や、すぐに自宅へ戻れる道を選ぶと調整しやすくなります。長く続けて歩く代わりに、短時間に分ける方法もあります。
歩行中・帰宅後・翌朝の3回で確認する
歩いている間だけでなく、時間がたってからの反応も確認します。次の項目を、歩く前の普段の状態と比べてください。
| 確認するタイミング | 確認すること | 調整の目安 |
|---|---|---|
| 歩いている最中 | 痛みが増えていないか、足を引きずっていないか | 痛みが増す、歩き方が崩れる場合は切り上げる |
| 帰宅後 | 痛みが落ち着くか、新たな腫れや熱感がないか | 症状が残る場合は次回の時間や距離を減らす |
| 翌朝 | 痛み・腫れ・こわばりが普段より増えていないか | 悪化していれば歩行量を戻し、続く場合は受診する |
翌朝の状態は、運動量を調整する実用的な目安です。「翌朝までに治まれば、どれほど強い痛みでも歩いてよい」という意味ではありません。
増やすときは時間・速さ・坂道を同時に変えない
同じ量で症状が安定していることを確認してから、歩く時間を少し延ばします。時間を延ばした日に、早歩きや坂道も追加すると、何が負担になったか分かりにくくなります。
増やしたあとに症状が悪化したら、直前まで無理なくできていた量に戻してください。毎日歩くことにこだわらず、休む日や別の運動を行う日を設けても構いません。
買い物や通勤で歩いた分も含める
膝への負担は、運動としてのウォーキングだけで決まりません。買い物、通勤、階段、立ち仕事、重い荷物を運ぶ作業なども関係します。
外出でよく歩いた日は、追加のウォーキングを短くするか休みましょう。「散歩の時間・普段より多かった活動・翌朝の症状」を簡単に記録すると、自分に合った量を探しやすくなります。
ウォーキングで膝が痛くなる主な原因
膝の痛みは、歩きすぎだけでなく、関節や半月板、腱などの問題でも起こります。痛む場所は診断の手がかりになりますが、場所だけで病名は決められません。
| 症状や経過の特徴 | 考えられる原因の例 |
|---|---|
| 歩き始めや立ち上がりに痛む、階段がつらい | 変形性膝関節症 |
| ひねったあとに痛む、引っかかる、曲げ伸ばしで痛む | 半月板損傷など |
| 膝の内側のやや下や外側に痛みがあり、歩く量を増やしてから悪化した | 鵞足炎や腸脛靱帯炎など、膝周囲の腱・靱帯付近の炎症 |
| お皿の周囲が痛み、階段やしゃがむ動作で悪化する | お皿と太ももの骨の間の関節の問題など |
| 急に強い痛みが出て、体重をかけるとつらい | 半月板損傷や軟骨の下の骨に生じる小さな骨折など |
| 急に腫れて熱を持つ | 偽痛風、感染による関節炎など |
特に中高年の方では、大きなけががなくても半月板や骨に問題が起こる場合があります。「年齢のせい」「筋力不足」と決めつけず、いつから、どの動作で痛み始めたかを確認することが大切です。hosp.juntendo.ac.jp
膝に負担をかけにくい歩き方と自宅での対策
まずは平らで歩きやすい場所を選び、無理な大股や早歩きを避けましょう。歩き方だけで解決しようとせず、筋力や膝の動きも整えることが大切です。
歩幅を広げすぎず、安定した靴で歩く
- 痛みをかばわずに歩ける速さにする
- 無理に歩幅を広げず、自然に足を運ぶ
- 長い下り坂、階段、でこぼこ道を避ける
- 足に合い、かかとが安定して滑りにくい靴を選ぶ
- 荷物を軽くし、途中で休める経路にする
歩き方を意識するあまり、膝を無理に伸ばしたり、かかとを強く地面に打ちつけたりしないでください。足を引きずる場合は、歩行指導や杖などの補助具も検討します。
札幌では、凍結した道で無理に歩く必要はありません。滑りにくく平らな屋内通路など、安全に歩ける場所を選びましょう。
ウォーキング以外の運動も組み合わせる
歩くだけでは、膝を支える筋肉を十分に鍛えられない場合があります。状態に応じて、太ももの筋力運動や膝をゆっくり曲げ伸ばしする運動を組み合わせます。
たとえば、安定した椅子に座り、片脚ずつ膝をゆっくり伸ばして戻す運動があります。痛みが増えない範囲で行い、回数や保持時間は医師・理学療法士と相談してください。japanpt.or.jp
陸上を歩くと痛む場合は、水中歩行や低い負荷の固定式自転車が選択肢になります。ただし、急な腫れや原因不明の強い痛みがある場合は、別の運動へ自己判断で切り替える前に受診しましょう。
冷やす・温めるは膝の状態に合わせる
歩いたあとに熱っぽさや腫れがある場合は、運動を中止し、タオルで包んだ保冷剤などで短時間冷やすと楽になることがあります。皮膚に直接当てたり、長時間冷やしたりしないでください。
腫れや熱感がなく、慢性的なこわばりが気になる場合は、入浴などで温めると動かしやすくなることがあります。日数だけで冷却から温熱へ切り替えるのではなく、膝の状態で判断します。
体重が多い方は、食事を含めた無理のない体重管理も有用です。ただし、高齢でやせている方や筋肉量が少ない方に、一律の減量は勧めません。
ウォーキングを休み、整形外科を受診した方がよいサイン
急な強い痛みや腫れ、歩行の困難がある場合は、ウォーキングより診断を優先します。以前に変形性膝関節症と診断されていても、いつもと違う症状が出たら再評価が必要です。
当日中の受診を考える症状
- 膝が赤く、熱を持って大きく腫れている。特に発熱や悪寒を伴う
- 急に体重をかけられなくなった、けがのあとから歩けない
- 膝が引っかかったまま伸びない、動かせなくなった
発熱がなくても、強い熱感や腫れがあれば感染を否定できません。受診先に迷う場合は、医療機関へ電話で相談してください。
早めに相談したい症状
- 歩く量を減らしても痛みが改善せず、繰り返す
- 夜間や安静時にも痛み、眠りが妨げられる
- 膝の腫れや、ガクッと力が抜ける感じが続く
- 買い物や通勤など、日常生活に支障が出ている
「休む」とは、負担になる運動を一時的に減らすことです。医師から安静を指示されていなければ、一日中寝て過ごす必要はありません。ただし、室内移動でも強く痛むときは、無理に歩かず相談しましょう。
整形外科ではどのような検査・治療をする?
診察では、画像だけでなく、痛みの始まり方、腫れ、筋力、歩き方、生活で困っている動作を合わせて評価します。治療は原因に応じて、運動の調整や薬などから検討します。
レントゲンと痛みの強さは一致しないことがある
レントゲンでは骨の変形や関節の隙間を確認します。必要に応じて、体重をかけた立位で撮影します。ただし、変形が軽く見えても痛みが強い場合や、変形があっても比較的動ける場合があります。
急な強い痛みがある、症状をレントゲンだけで説明しにくい、半月板や骨の病変が疑われる場合は、MRIを検討します。軟骨の下の小さな骨折などは、初期にはレントゲンで分かりにくいことがあります。hosp.juntendo.ac.jp
超音波検査は関節液や膝周囲の腱などの評価に役立ちます。強い腫れでは、関節液を採って結晶や細菌を調べることもあります。すべての方に同じ検査が必要なわけではありません。
保存療法で歩ける状態を整える
保存療法とは、手術以外の治療です。変形性膝関節症などでは、次の方法を状態に合わせて組み合わせます。
- 運動療法:筋力や膝の動き、歩き方を改善する
- 生活の調整:歩行量、階段、立ち仕事などの負担を見直す
- 薬物療法:外用薬や内服薬で痛みを和らげる
- 補助具:杖、装具などで歩行を助ける
- 関節内注射:病態に応じてヒアルロン酸やステロイドなどを検討する
運動療法、薬物療法、装具などは、変形性膝関節症の保存療法として用いられています。joa.or.jp
内服薬は胃腸や腎臓への影響、持病や併用薬を確認して選びます。注射の効果には個人差があり、注射後の痛みや、まれな感染などのリスクもあります。痛みが軽くなっても、歩く量は急に増やさないことが大切です。
手術は画像だけで決めない
半月板損傷があっても、必ず手術が必要とは限りません。一方、膝が引っかかって伸びない場合や、損傷の種類によっては、早めの手術相談が必要です。
変形性膝関節症では、適切な保存療法でも痛みや生活の制限が続くときに、骨切り術や人工膝関節などを検討します。年齢だけでなく、活動量、変形の状態、本人が望む生活を踏まえて判断します。生活への支障が大きいまま、無理に手術を先延ばしする必要もありません。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ|歩数より、膝の反応を目安にする
膝が痛いときのウォーキングは、一律の歩数ではなく、原因と症状に合った量で行うことが大切です。
- 慢性的な軽い痛みでは、状態に合わせた運動が役立つ場合がある
- 歩行中・帰宅後・翌朝の症状を比べ、悪化する場合は量を減らす
- 買い物や通勤など、生活全体の歩行量も含めて調整する
- 急な強い痛み、腫れや熱感、体重をかけられない状態では受診を優先する
- 運動療法や薬などを組み合わせ、必要に応じて手術も含めて検討する
歩くことを怖がりすぎる必要はありませんが、痛みを我慢して歩数を達成する必要もありません。症状が続く場合は整形外科で原因を確認し、自分の膝に合った運動方法を相談しましょう。
よくある質問
膝が痛いときも、健康のために1日1万歩を目指した方がよいですか?
1万歩を目指す必要はありません。膝の状態や普段の活動量によって、無理なく歩ける量は異なります。歩数が少なくても症状が悪化するなら減らし、翌朝の状態や日常生活への影響を見ながら調整してください。
サポーターを着ければ、長くウォーキングしても大丈夫ですか?
サポーターを着けても、歩く量を増やしてよいとは限りません。痛みや不安定感を軽くできる場合がありますが、原因を治すものではありません。締めつけによるしびれや皮膚トラブルにも注意し、症状に合う種類を相談しましょう。
湿布や痛み止めが効いていれば、いつもの距離を歩いてもよいですか?
痛みが軽くなっただけでは、いつもの距離が適切とは判断できません。薬は運動療法を助けますが、歩く量は段階的に戻しましょう。薬が効いている間だけでなく、帰宅後の腫れや翌朝の状態も確認してください。
膝がポキポキ鳴ります。ウォーキングをやめた方がよいですか?
音だけで、痛み・腫れ・引っかかりがなければ、通常は音を理由に中止する必要はありません。音と一緒に痛む、腫れる、膝が動かなくなる場合は、半月板などの問題も考えられるため整形外科へ相談してください。
参考文献
- 日本整形外科学会『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』:Mindsガイドラインライブラリ
- 日本整形外科学会:変形性膝関節症
- 日本理学療法士協会:理学療法ハンドブック シリーズ7 変形性膝関節症
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院:変形性膝関節症
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院:大腿骨内顆骨壊死
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約


