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膝 膝の偽痛風とは?突然の腫れ・熱感が出る理由と診断・治療を解説

膝の偽痛風(ぎつうふう)は、関節にたまった「ピロリン酸カルシウム」という結晶が炎症を起こし、突然の強い痛み・腫れ・熱感を生じる病気です。高齢の方に多く、痛風と名前は似ていますが、尿酸が原因ではありません。治療は炎症を抑える薬や関節液の排出などが中心で、通常、発作だけで手術が必要になることはありません。ただし、細菌感染による関節炎もよく似た症状を起こします。急に膝が腫れたときは無理に歩かず、特に発熱や歩けないほどの痛みがある場合は、当日中に医療機関へ相談してください。
この記事の内容
膝の偽痛風とは?痛風との違い
偽痛風とは、ピロリン酸カルシウム結晶によって起こる急性の関節炎です。結晶が関節に沈着する「CPPD」の病態の一つで、膝や手首などに起こります。
「偽」という名前でも、痛みが軽いわけではありません。膝を少し動かすだけで痛み、立ち上がることが難しくなる場合もあります。KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
| 比較する点 | 偽痛風 | 痛風 |
|---|---|---|
| 炎症の原因 | ピロリン酸カルシウム結晶 | 尿酸塩結晶 |
| 起こりやすい部位 | 膝、手首など | 足の親指の付け根など。膝にも起こる |
| 年齢の傾向 | 高齢の方に多い | 中年男性に多いが、ほかの年代にも起こる |
| 尿酸を下げる治療 | 偽痛風そのものには用いない | 尿酸塩結晶を減らすために検討する |
尿酸値だけでは両者を区別できません。偽痛風の方に高尿酸血症が併存することもあり、痛風でも発作中の尿酸値が高くない場合があります。
なぜ突然、膝が腫れて熱くなるのでしょうか
軟骨などに沈着した結晶が関節液の中に放出され、免疫細胞が反応すると、強い炎症が起こります。炎症によって関節液が増えるため、「膝に水がたまる」状態になることがあります。
加齢や関節の変化が関係する
結晶ができる仕組みには不明な点もありますが、加齢や変形性関節症、過去のけが・手術などとの関連が知られています。はっきりしたきっかけがなく発作が起こることもあります。
比較的若い年齢で発症した方や繰り返す方では、必要に応じて、血液中のマグネシウム不足や副甲状腺の病気など、背景にある病気を調べます。KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
結晶があっても、いつも痛むとは限らない
結晶が沈着していても、症状のない方がいます。レントゲンで石灰化が見つかったからといって、すべての膝の痛みを偽痛風で説明できるわけではありません。
診療では「以前から続く歩行時の痛み」と「今回、急に出た腫れや熱感」を分けて考えます。変形性膝関節症に偽痛風の発作が重なる場合もあるためです。
どのような症状なら早めに受診すべきですか
急に膝が腫れて熱を持った場合は、自己判断せず早めに受診してください。発熱、強い痛み、歩行困難がある場合は当日中の相談が必要です。
- 痛くて体重をかけられない、膝をほとんど動かせない
- 発熱や寒気を伴い、膝が赤く腫れている
- 数時間から一日で痛みや腫れが急に強くなった
- 膝の注射や手術の後に、痛み・熱感が増してきた
- 人工関節の入っている膝が急に腫れた
発熱がなくても、感染による関節炎は否定できません。ぐったりしている、受け答えが普段と違うなど、全身状態が悪い場合は救急受診を検討してください。
特に見逃したくないのは化膿性関節炎
化膿性関節炎とは、細菌が関節内で増えて炎症を起こす病気です。偽痛風と症状が似ていますが、抗菌薬や関節の洗浄など、迅速な治療が必要になります。Cute.Guides at 九州大学 Kyushu University
以前に偽痛風と診断された方も、今回の腫れが同じ原因とは限りません。初回と違う症状や強い全身症状がある場合は、改めて原因を確認します。
整形外科ではどのような検査をしますか
偽痛風は、症状の経過、診察、画像検査、必要に応じた関節液検査を組み合わせて診断します。特に急な腫れでは、結晶の確認と細菌感染の評価が大切です。
診察と血液検査
痛みが始まった時期、発熱、過去の発作、けが、注射や手術の有無を確認します。
血液検査では炎症の程度や腎機能などを調べますが、炎症反応が高いだけで偽痛風と感染を区別することはできません。
レントゲン・超音波・MRIの役割
レントゲンでは、半月板や関節軟骨の石灰化、膝の変形を確認します。超音波では関節液や炎症、結晶沈着を示す所見を調べ、関節液を採取するときの補助にも使います。
レントゲンで石灰化がはっきりしなくても、偽痛風は否定できません。反対に、石灰化があっても、今回の痛みの原因が別の病気である場合があります。
MRIは、偽痛風の結晶を確認するための第一選択ではありません。診察で骨や半月板など別の病変が疑われた場合に、必要性を判断します。ard.bmj.com
関節液を調べる検査
膝にたまった液を針で採取する処置を「関節穿刺(かんせつせんし)」といいます。採取した液を顕微鏡で調べ、結晶の種類を確認します。感染が疑われる場合は、細菌の検査や培養も行います。
結晶が見つかっても、細菌感染が同時に起きている可能性は残ります。また、結晶を一度の検査で確認できない場合もあるため、症状やほかの検査結果と合わせて判断します。一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR)
膝の偽痛風はどのように治療しますか
治療の中心は、急性の炎症を抑え、痛みと腫れを軽くすることです。薬、関節液の排出、注射などから、持病や服薬状況に合った方法を選びます。
炎症を抑える薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを使用します。ただし、腎臓病、胃潰瘍、心不全がある方や、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方では、使える薬や期間に注意が必要です。市販の痛み止めを自己判断で重ねて飲まないでください。
内服のステロイドや、炎症を抑えるコルヒチンを検討する場合もあります。ステロイドによる血糖値の上昇、コルヒチンによる下痢や他の薬との飲み合わせなどを考慮し、使用の可否を判断します。コルヒチンの偽痛風への使用は、国内の承認適応や保険上の扱いを医師が確認する必要があります。American College of Rheumatology
関節液の排出とステロイド注射
関節液が多く、膝が張って痛い場合は、液を抜くことで負担が軽くなることがあります。採取した液は、原因を調べる検査にも役立ちます。
感染が疑われないと判断したうえで、関節内にステロイドを注射することがあります。薬や注射は炎症を抑えるための治療であり、軟骨に沈着した結晶をすべて取り除く治療ではありません。一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR)
どのくらいでよくなるのか
治療により数日で軽快し始める場合もありますが、腫れや痛みが落ち着くまで1〜2週間程度、あるいはそれ以上かかることもあります。症状の強さや持病によって経過は異なります。American College of Rheumatology
治療を始めても改善する傾向がない、いったん軽くなった後に悪化した、発熱が続く場合は、予定の診察日を待たずに相談してください。感染などの別の原因や、治療内容を見直す必要があります。
自宅では冷やす?歩いてもよい?
膝が腫れて熱を持つ間は、負担を減らして冷やすことが基本です。炎症が治まってきたら、医師の指示に沿って少しずつ動きを戻します。
腫れ・熱感が強い間
- 長距離の歩行、階段、正座、深くしゃがむ動作を控える
- 保冷剤などをタオルで包み、皮膚を確認しながら短時間ずつ冷やす
- 強いマッサージや、痛みを我慢するストレッチを避ける
- 長風呂など、膝を積極的に温めることは控える
冷却は症状を和らげる補助であり、受診の代わりにはなりません。足をつけないほど痛い場合は、無理に歩いて移動せず、家族の介助などを利用してください。
痛みと腫れが軽くなってから
長く寝たきりで過ごすと、膝が硬くなったり筋力が落ちたりします。診断と治療方針を確認したうえで、痛みが増えない範囲の曲げ伸ばしや短い距離の歩行から再開しましょう。一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR)
受診時には、症状が始まった日時、体温、歩けるかどうか、服用中の薬を伝えると役立ちます。腫れの写真を残す方法もありますが、記録のために受診を遅らせる必要はありません。
手術が必要になることはありますか
通常の偽痛風発作は、薬や関節穿刺などで治療し、手術を第一に選ぶことはありません。ただし、別の病気や進行した関節障害がある場合は、手術を検討することがあります。
例えば、変形性膝関節症を合併し、発作が治まった後も歩行や日常生活に大きな支障が残る場合には、保存療法の経過を踏まえて人工関節などを検討します。一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR)
一方、細菌感染による関節炎では、早急に関節を洗浄する手術が必要な場合があります。「偽痛風なら手術は不要」と自己判断して、感染の治療を遅らせないことが重要です。
よくある質問
偽痛風になったら、カルシウムの多い食品は控えた方がいいですか?
通常、偽痛風だけを理由に乳製品などを控える必要はありません。結晶の名前にカルシウムが含まれていても、一般的な食事のカルシウム制限は標準的な治療ではありません。処方薬やサプリメントも自己判断で中止せず、医師に確認してください。
痛みがなくなれば、偽痛風は完治したと考えていいですか?
発作が治まっても、結晶がなくなったとは限りません。現在、結晶を確実に溶かす標準的な治療はなく、再発することがあります。頻繁に繰り返す場合は、背景の病気や予防的な薬の必要性を医師と相談します。
膝の水を抜くと、何度もたまる癖になりますか?
水を抜くこと自体で癖になるわけではありません。炎症が続いていると関節液が再び増えることがあります。再び腫れたときは、液を抜くかどうかだけでなく、炎症の原因や治療の効き方も確認します。
偽痛風は何科を受診すればよいですか?
膝の急な痛みや腫れは、まず整形外科に相談できます。複数の関節の症状や再発を繰り返す場合は、リウマチ科などと連携することもあります。強い発熱や歩行困難がある場合は、当日対応できる医療機関に相談してください。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ
- 膝の偽痛風は、尿酸とは異なる結晶によって起こる関節炎です。
- 急な腫れや熱感では、細菌感染による関節炎との区別が重要です。
- 診察、画像、必要に応じた関節液検査を組み合わせて原因を確認します。
- 治療は炎症を抑える薬や関節液の排出などが中心で、通常は手術を必要としません。
- 急性期は負担を減らし、改善後は無理のない範囲で動きを戻します。
突然の膝の腫れや熱感は、いつもの膝痛として我慢しないことが大切です。発熱や歩行困難があれば当日中に相談し、症状が続く場合も整形外科で原因を確認しましょう。
参考文献・参考情報
- 日本リウマチ学会「偽痛風」
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「ピロリン酸カルシウム結晶沈着症、偽痛風」
- JA愛知厚生連 稲沢厚生病院「偽痛風について」
- 「結晶誘発性関節炎の関節液所見の特徴」整形外科と災害外科、2021年
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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