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FAQ膝 膝の手術リスクでよくある7つの質問に専門医が回答|手術の前に知っておくべきこと

「手術を勧められたけれど、本当に受けていいのだろうか」
その迷いは、決して間違いではありません。手術は身体に大きな負担を強いるものであり、一度行うと元の膝には戻せない「不可逆的」な治療だからです。
当院では、安易に手術を選ぶ前に知っておくべきリスクと、手術を回避するための新たな選択肢について、よくある7つの質問にお答えしています。
この記事の内容
Q1. 膝の手術には、具体的にどのようなリスクがありますか?
手術には、細菌感染、静脈血栓(エコノミークラス症候群)、神経麻痺、術後の持続的な痛みなどの合併症リスクが伴います。 医療技術は進歩していますが、体にメスを入れ、骨を削る以上、これらのリスクをゼロにすることは不可能です。「手術をすれば魔法のように元通り」ではなく、身体への侵襲(ダメージ)が大きい治療であることを理解する必要があります。
Q2. 手術後の「感染症」が怖いのですが、もし起きたらどうなりますか?
人工関節の手術後に細菌感染が起きると、非常に厄介です。抗生剤で治まらない場合、せっかく入れた人工関節を一度抜去し、感染が治まるのを待ってから再手術をする……という長期間の闘病が必要になることもあります。 確率は低いとはいえ、万が一ご自身に起きた場合、生活の質(QOL)が著しく低下する可能性がある重大なリスクです。
Q3. 高齢での入院や全身麻酔は、体に負担がかかりませんか?
大きな負担になります。特に入院生活による筋力の低下や、環境の変化による認知機能の衰え(せん妄)は、高齢の方ほど懸念されます。 「膝は良くなったけれど、入院中に足腰が弱って寝たきりになってしまった」というケースもゼロではありません。全身麻酔も心臓や肺に負担をかけるため、持病がある場合は慎重な判断が求められます。
Q4. 手術をすれば、すぐに痛みが取れて歩けるようになりますか?
いいえ、手術翌日からスタスタ歩けるわけではありません。術後は傷口の痛みや腫れがあり、数ヶ月にわたる辛く地道なリハビリテーションが必須です。 「手術さえすれば楽になれる」と思って受けると、術後の痛みの強さやリハビリの大変さに精神的に参ってしまう方もいらっしゃいます。ご本人の強い意志と体力が必要です。
Q5. 人工関節にも「寿命」があると聞きました。
はい、人工関節は一生モノではありません。一般的に15〜20年程度で摩耗やゆるみが生じる可能性があります。 もし60代で手術をした場合、80代になってから部品を入れ替える「再置換術」が必要になるかもしれません。再手術は初回の手術よりも難易度が高く、体への負担もさらに大きくなるため、安易に早い段階で手術をすることは避けるべきです。
Q6. 手術のリスクを避けるために、何かできることはありますか?
「手術しかない」と言われる前に、自分の治癒力を生かす「再生医療」を検討してください。 ご自身の血液や細胞を利用して膝の炎症を抑え、組織の修復を促す治療法です。入院や手術の必要がなく、日帰りの注射だけで済むため、感染症や血栓症といった手術特有の重篤なリスクを避けることができます。
Q7. なぜ、手術の「前に」再生医療を勧めるのですか?
一度人工関節の手術をしてしまうと、自分の骨や軟骨は失われ、もう二度と再生医療を受けることができないからです(後戻りができません)。 しかし、再生医療を先に試して、万が一効果が不十分だった場合に、最終手段として手術を選ぶことは可能です。「自分の膝を残すチャンス」は手術の前しかありません。まずは切らない治療の可能性を探ることを強くお勧めします。
手術は、あらゆる保存療法を試しても効果がなく、生活が立ち行かない場合の「最後の最後の手段」です。
「年齢のせいだから手術しかない」と諦める前に、リスクの少ない治療法で改善できる可能性がないか、一度私たち専門医にご相談ください。
再生医療という新しい選択肢

近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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