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その他 ロキソニンとカロナール、関節痛にはどっちが効く?違いと正しい使い分けを専門医が解説

この記事の内容
「手元にある痛み止め、飲んでも大丈夫?」その迷い、よくわかります
「先生、家にあるロキソニンを飲んでもいいですか?」 「以前もらったカロナールが残っているんですけど、膝の痛みに効きますか?」
診察室で、患者さんからこのような質問をいただくことが本当によくあります。 特に50代、60代と年齢を重ねるにつれ、膝や腰の痛みが日常的になってくると、毎回病院に行くのも大変ですよね。手元にある薬でなんとかしたい、と思うのは当然のことです。
しかし、有名な「ロキソニン」と、病院でよく処方される「カロナール」。名前は聞いたことがあっても、その「中身の違い」まで詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
実はこの2つ、痛みを抑えるというゴールは同じでも、そこへ向かうルート(作用の仕方)がまったく違います。ここを間違えると、効果が不十分だったり、思わぬ体調不良を招いたりすることもあります。 今回は、整形外科医の視点から、この2つの薬の違いを専門用語を使わずにやさしく解説していきますね。

ロキソニンは「火消し役」、カロナールは「情報の遮断役」
まずは、それぞれの薬が体の中でどんな働きをしているのか、イメージしてみましょう。
ロキソニン(成分名:ロキソプロフェン)
ロキソニンは「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれるグループの薬です。 関節が痛むとき、その場所では炎症という「火事」が起きています。ロキソニンは、火事の現場に直接駆けつけて、**炎症そのものを鎮める「強力な火消し役」**です。 腫れや熱を持っているような鋭い痛みには、とてもよく効きます。しかし、強力な分だけ胃腸への負担がかかりやすく、胃が痛くなったり荒れたりするリスクがあります。
カロナール(成分名:アセトアミノフェン)
一方のカロナールは、脳にある「痛みを感じるスイッチ」に働きかけます。 炎症(火事)そのものを消す力は弱いのですが、脳に「痛い!」という情報が伝わるのをブロックしてくれます。いわば**「痛みの情報を遮断するフィルター役」**ですね。 ロキソニンに比べると効き目はマイルドですが、その分、胃や腎臓への負担が少なく、お年寄りや他のお薬を飲んでいる方でも比較的安心して使えるのが大きな特徴です。
どっちを選べばいいの? 場面別の使い分け
では、具体的にどんなときにどちらを選べばよいのでしょうか。一般的な目安をお伝えします。
ロキソニンが向いているケース
- 急に膝が腫れて熱を持っているとき
- 「ズキッ」とする鋭い痛みがあるとき
- 痛みが強く、とにかく早く抑えたいとき
- 胃腸が丈夫で、短期間の使用で済む場合
カロナールが向いているケース
- 慢性的にシクシクと痛むとき
- 胃腸が弱く、ロキソニンだと胃が痛くなる方
- 高齢の方(75歳以上など)
- 腎臓の機能が少し低下していると言われたことがある方
- インフルエンザなど熱があるときの関節痛
整形外科の現場では、最初はロキソニンでガツンと痛みを抑え、長引くようなら体に優しいカロナールに切り替える、といった使い分けをすることもあります。
薬はあくまで「一時しのぎ」。根本的な解決ではありません
ここで一つ、専門医として大切なことをお伝えさせてください。 痛み止めは、あくまで「痛みを感じなくさせている」だけであり、すり減った軟骨を治したり、変形した骨を元に戻したりするものではありません。
「薬を飲んで痛くないから」といって無理に動いたり、逆に「薬がないと不安だから」と何ヶ月も漫然と飲み続けたりするのは、実はとても危険です。痛みの原因を放置したままでは、関節の寿命を縮めてしまうことになりかねません。
整形外科でできる「薬以外」の選択肢 薬に頼りすぎないためには、以下のような治療や対策を組み合わせることが重要です。
- リハビリテーション(運動療法): 関節を支える筋肉を鍛えることで、骨への負担を減らします。これが最も副作用のない、根本的な治療法です。
- ヒアルロン酸注射: 膝などの関節内に潤滑油を補い、滑りを良くして痛みを和らげます。
- 装具療法: サポーターやインソール(靴の中敷き)を使って、関節にかかる力のバランスを整えます。
- 再生医療(PRP療法など): 最近注目されている治療法です。ご自身の血液に含まれる成分を利用して、炎症を抑えたり組織の修復を促したりします。「手術はしたくないけれど、今の治療では痛みが取れない」という方の新しい選択肢として広がっています。
よくある質問(Q&A)
診察室でよく聞かれる疑問にお答えします。
Q. 痛いときは、まったく動かないほうがいいですか?
A. 急な激痛や腫れがあるときは安静が必要ですが、慢性的な痛みの場合は「動かさないこと」が逆効果になることがあります。動かさないと筋肉が落ち、関節が固まってさらに痛くなる「悪循環」に陥ります。痛みのない範囲で少しずつ動かすことが大切です。
Q. ロキソニンとカロナール、一緒に飲んでもいいですか?
A. 基本的には、自己判断での併用はおすすめしません。作用の仕方が違うため、医師の指示で組み合わせることはありますが、副作用のリスク管理が必要です。効かないからといって追加で飲む前に、必ず医師に相談してください。
Q. 市販のロキソニンと病院のロキソニンは違うのですか?
A. 成分は同じですが、市販薬には胃薬の成分などが最初から配合されているものもあります。ただ、病院で処方する場合は、患者さんの全身状態を見て量や回数を調整しています。
「年齢のせい」と諦めないでください
「もう歳だから、この痛みとは付き合っていくしかない」 そう諦めている患者さんにたくさんお会いしてきましたが、適切な治療とケアを行えば、70代や80代でも痛みなく歩けるようになる方は大勢いらっしゃいます。
痛み止めは、上手に使えば活動的な生活を取り戻すための素晴らしい味方です。でも、それだけが全てではありません。 「ロキソニンが良いか、カロナールが良いか」と迷う痛みがあるなら、それは体が「助けて」とサインを出している証拠です。
まずは一度、お近くの整形外科で「今の関節の状態」をチェックしてみませんか? 薬の調整はもちろん、あなたに合った運動や、最新の治療の選択肢も含めて、痛みのない生活を取り戻すお手伝いができるはずです。 いつまでもご自分の足で、行きたい場所へ行ける人生をサポートさせていただきます。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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