
コラム COLUMN
再生医療 PRP療法とは?成長因子で関節を修復する仕組み

関節の痛みで悩んでいるけれど、「手術はしたくない」「できるだけ自分の組織で治したい」――そんな方に注目されているのが**PRP療法(多血小板血漿療法)**です。
PRP療法は、自分自身の血液から“成長因子”を取り出し、それを関節に注射することで組織の修復や炎症の抑制を促す再生医療です。ヒアルロン酸注射や痛み止めでは改善しなかった方にも、新たな選択肢として注目されています。
ここでは、PRP療法の仕組みや対象となる関節疾患、治療の流れ、安全性について、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
PRP療法とは?血液の中の「修復力」に注目
PRPとは「Platelet-Rich Plasma」の略で、日本語では「多血小板血漿」と呼ばれます。血液中の血小板を多く含む成分を濃縮したもので、この血小板が持つ**成長因子(グロースファクター)**が、細胞の修復や炎症抑制を助けるとされています。
この成長因子は、ケガをしたときに自然に働く「治す力」の一部です。PRP療法では、それを高濃度で患部に届けることで、関節の修復を積極的に促すのです。
どんな関節の痛みに効くのか?
PRP療法は、以下のような関節疾患や症状に適応があります:
- 変形性膝関節症
- 変形性股関節症
- 肩の腱板損傷
- テニス肘・ゴルフ肘
- 足関節の炎症
- スポーツによる関節や腱の障害
特に、「ヒアルロン酸注射ではもう効かない」「手術以外の選択肢を探している」という方に、体への負担が少ない選択肢として利用されています。
PRP療法の流れと治療の回数
PRP療法の基本的な流れは以下の通りです。
- 採血(20ml程度)
- 専用の遠心分離機で血液を分離
- 血小板が豊富に含まれた部分(PRP)を抽出
- 患部(関節や腱)に注射
治療自体は1回15〜30分ほどで終了します。状態によっては、1回で効果が出る場合もあれば、数回の治療を重ねることが望ましい場合もあります。
注射後は、しばらくの間軽い炎症(腫れや痛み)が出ることもありますが、数日で落ち着くことが多く、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
ヒアルロン酸注射やステロイド注射との違い
従来、関節の痛みに対してはヒアルロン酸注射やステロイド注射がよく使われてきました。これらは一時的な痛みの緩和には効果的ですが、根本的な「組織の修復」は期待できません。
一方でPRP療法は、修復を促進する成長因子の力で、組織そのものの回復を目指します。根本的な治療を望む方や、薬の副作用を避けたい方には、PRP療法のような再生医療が有望な選択肢となります。
安全性と副作用について
PRP療法は、自分自身の血液を使う自己由来の治療であるため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いという特徴があります。
ただし、以下のような注意点もあります:
- 採血や注射による内出血や腫れが起こることがある
- 効果の感じ方には個人差がある
- 重度の変形性関節症には効果が限定的な場合もある
治療前には、医師との十分なカウンセリングが重要です。
PRP療法はどこで受けられる?
PRP療法は、再生医療等提供計画の届出がなされた医療機関でのみ提供されています。受ける前に、そのクリニックが厚生労働省に届出を行っているかどうかを確認することが大切です。
また、PRPの抽出方法や濃度にも差があり、施設によって効果に違いが出ることもあります。症例実績や治療方針を事前に確認すると安心です。
最後に:関節の再生医療としての可能性
「手術しかない」「年齢だから仕方ない」と諦める前に、自分の血液を活用した手術をしない治療法としてPRP療法を知っていただきたいと思います。
私たちのクリニックでも、膝の痛みやスポーツ障害に悩む多くの方がPRP療法を受け、日常生活に復帰されています。まずは気軽に相談してみてください。
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を3,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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