
コラム COLUMN
腰 突然の下半身まひ?「脊髄梗塞」とは|症状・原因・治療法を専門医が解説

脊髄梗塞(せきずいこうそく)は、背骨の中を通る「脊髄」と呼ばれる神経の束に血流障害が起こり、突然まひや感覚障害を引き起こす病気です。発症は突発的で、脳梗塞と似たような仕組みで起こるため、「脊髄の脳梗塞版」と表現されることもあります。
この病気は非常にまれですが、発症すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。特に中高年層では、動脈硬化や大動脈の病気を背景に発症するケースが多くみられます。
脊髄梗塞の主な症状
脊髄梗塞の症状は、障害を受けた脊髄の部位によって異なります。代表的な症状は以下の通りです。
- 突然の下肢まひ(両足に力が入らない)
- 腰から下の感覚が鈍くなる、または消失する
- 排尿・排便が困難になる(膀胱直腸障害)
- 痛みを感じにくくなるが、逆に熱さや冷たさには敏感になることもある
特に特徴的なのは、「突然」「非対称に」「両下肢」に起こるまひで、初期には歩行困難を自覚して来院される方が多くいます。
脊髄梗塞の原因と危険因子
脊髄への血流が途絶える原因として、以下のような要因があります。
- 動脈硬化:高血圧・糖尿病・高脂血症が背景にあることが多い
- 大動脈解離や大動脈瘤の手術後:血流の変化によって脊髄が虚血状態になる
- 血栓・塞栓(血のかたまり):心臓や大血管からの血栓が流れ着くことがある
- 低血圧や心停止後の循環不全
- 外傷や脊椎の手術後:血管が傷ついたり、圧迫されたりすることで発症する
また、原因が特定できない「特発性脊髄梗塞」も一定数あります。
診断の方法
脊髄梗塞の診断には、症状と画像診断が重要です。以下の検査が行われます。
- MRI(脊髄造影):脊髄内の異常な信号(梗塞部位)を確認
- CTやMRA(血管造影):大動脈の解離や動脈閉塞の有無をチェック
- 血液検査:炎症や凝固異常の有無を調べる
発症から時間が経っていない場合、MRIでは明らかな所見が出ないこともあります。そのため、症状と臨床所見が診断のカギとなります。
脊髄梗塞の治療法
脊髄梗塞には、脳梗塞と違ってt-PAなどの急性期治療薬がないため、基本は対症療法とリハビリになります。
- 血液循環を保つ治療(点滴・血圧管理)
- 神経保護のためのステロイド投与(必要に応じて)
- 血栓予防の抗血小板薬や抗凝固薬の使用
- 早期からのリハビリテーション
特に重要なのがリハビリです。発症直後から理学療法士による運動療法を導入し、筋力低下や関節拘縮を防ぐことが、回復を左右します。
予後と回復の見込み
脊髄梗塞の予後は、その重症度やリハビリのタイミングにより異なります。
- 軽症の場合:歩行能力が回復し、日常生活もほぼ元通りになるケースもある
- 中等症~重症の場合:排尿障害や歩行困難が長期間残ることも
ただし、脳梗塞と比較して自然回復の可能性はやや高いとも言われており、適切なリハビリで改善する例も多く報告されています。
脊髄梗塞の予防法
予防には以下のような生活習慣病対策が有効です。
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症のコントロール
- 禁煙と節酒
- 適度な運動
- 定期的な健康診断で大動脈疾患の早期発見
また、心臓病や動脈硬化の既往がある人は、血液をさらさらに保つ薬の服用や、医師との定期的な相談が推奨されます。
まとめ
脊髄梗塞は、発症すると生活に大きな影響を与える怖い病気です。しかし、早期発見・早期対応・早期リハビリによって、機能の回復も十分に期待できます。
「足に力が入らない」「急に下半身がしびれた」などの症状が出たら、迷わずすぐに医療機関を受診してください。早い段階で適切な対応をとることで、後遺症を軽減できる可能性があります。


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