
コラム COLUMN
肩 夜間に肩がうずく?腱板損傷や石灰沈着性腱炎の可能性を専門医が解説

夜寝ているときに「肩がズキズキ痛む」「横向きで眠れない」という経験はありませんか。日中はそれほど痛まないのに、夜になると肩がうずいて目が覚めてしまう…。そんな症状で困っている方は少なくありません。50代以降の方に多く、放置すると日常生活にも影響することがあります。この記事では、夜間の肩の痛みの原因として代表的な「腱板損傷」と「石灰沈着性腱炎」について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
この記事の内容
夜間に肩が痛むときのよくある体験談
患者さんからは次のような声をよく耳にします。
「布団に入って少しすると肩がうずいて眠れない」
「反対側を下にして寝ると楽だけど、寝返りを打つと痛みで目が覚める」
「日中は物を持ち上げたり腕を回すと痛い程度なのに、夜はじっとしていても痛みが強い」
こうした夜間痛は、肩の組織に炎症や損傷があるサインのひとつです。
どんなときに痛む?生活への影響
夜間の肩の痛みは、睡眠不足による疲労感だけでなく、日常生活にも大きく影響します。例えば、
- 洗濯物を干す、棚の上に手を伸ばすときの痛み
- 髪を後ろで束ねる動作の困難
- ゴルフやテニスなどスポーツ中の違和感
このように、日常の動作や趣味の継続が難しくなり、生活の質が低下してしまいます。
肩の夜間痛の代表的な原因
腱板損傷
腱板とは、肩を支える4つの腱の総称です。これが加齢や繰り返しの使用で傷んだり、部分的に切れたりするのが腱板損傷です。
- 特徴:夜間痛が強い、腕を横や上に挙げると痛みが出やすい
- 背景:50代以降に多く、日常生活やスポーツでの酷使も影響します
石灰沈着性腱炎
腱の中にカルシウム(石灰)が沈着して炎症を起こす病気です。
- 特徴:突然の激しい痛みで発症し、夜眠れないほど痛むこともある
- 背景:女性にやや多く、特に40~60代に好発します
いずれも「年齢のせいだから仕方ない」と片づけられがちですが、適切な治療で改善できるケースが多いのです。
治療法と対策
保存療法(まずは手術をしない方法)
- 安静と薬物治療:炎症を抑える消炎鎮痛薬を使用
- 注射治療:痛みが強い場合は関節内注射で炎症を和らげる
- リハビリ・運動療法:肩周囲の筋肉をバランスよく鍛えることで再発予防につながります
生活習慣の工夫
- 横向きで寝るときは痛くない側を下にする
- 肩の高さ以上に腕を挙げる動作を控える
- 冷やす・温めるなど症状に合わせたセルフケアを取り入れる
再生医療を含む新しい選択肢
近年では、PRP(多血小板血漿)治療や幹細胞治療といった再生医療も注目されています。自分の細胞を用いることで副作用が少なく、腱の修復を促す可能性が報告されています。手術を避けたい方や保存療法で改善が乏しい方にとって、新しい選択肢となり得ます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 痛みがあるときは肩を動かしてはいけないの?
A. 強い痛みがあるときは安静が必要ですが、完全に動かさないと関節が硬くなる恐れがあります。無理のない範囲で軽く動かすことが大切です。
Q2. 腱板損傷は必ず手術が必要ですか?
A. 小さな損傷や部分断裂であれば、リハビリや注射などの保存療法で改善する場合もあります。大きな断裂や強い症状が続く場合に手術を検討します。
Q3. 石灰沈着は自然に治ることもありますか?
A. 石灰が体に吸収されると症状が軽くなることがあります。ただし、強い痛みがあるときは適切な治療を受けた方が安心です。
Q4. 再生医療は誰でも受けられますか?
A. 体の状態や既往歴によって適応が変わります。まずは専門医の診察を受けてご相談ください。
まとめ:肩の痛みは「年齢のせい」と諦めないで
夜間の肩の痛みは、腱板損傷や石灰沈着性腱炎といった病気が隠れていることがあります。眠れないほどの痛みは体にも心にも大きな負担となりますが、治療法は複数あり、改善できる可能性があります。
「もう年だから仕方ない」と諦めずに、一度専門医に相談してみましょう。適切な治療と日常の工夫で、再び快適な生活を取り戻すことができます。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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