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肩 寝返りで肩が痛い…それ、腱板断裂かも?見分け方と対処法を専門医が解説

「夜中に寝返りをうつと肩がズキッと痛むんです…」
そんなご相談をよく受けます。日中はそれほど痛みを感じなくても、夜になると肩がうずいて眠れないという方は少なくありません。実はこのような症状、腱板断裂(けんばんだんれつ)と関係している可能性があります。
今回は、寝返り時の肩の痛みと腱板断裂との関係、見分け方、そしてその対策についてわかりやすくご紹介します。
この記事の内容
寝返りで肩が痛むのはなぜ?
まず、肩は非常に可動域が広い関節で、多くの筋肉や腱(けん)が複雑に絡み合って動いています。その中でも「腱板(けんばん)」と呼ばれる筋肉の束は、肩の動きを安定させる重要な役割を果たしています。
ところが、加齢や使いすぎ、転倒などによって腱板に傷がついたり、完全に切れてしまうことがあります。これが「腱板断裂」です。
腱板が傷ついていると、体重がかかる寝返り動作で強い痛みが出ることがあります。特に、肩を下にして寝たときや、無意識に腕を動かしたときにズキッとくるのが特徴です。
どんなときに困る?こんな場面で痛みが…
腱板のトラブルがあると、以下のような日常動作がつらくなります:
- 横向きで寝られない
- 上着を着るときに肩が痛む
- 洗髪や洗顔で腕を上げるのがつらい
- 買い物袋を持ち上げると痛む
特に夜間痛(夜に肩がうずくような痛み)は、腱板断裂の大きなヒントになります。
腱板断裂ってなに?五十肩との違いは?
「五十肩(肩関節周囲炎)じゃないの?」と思われる方も多いでしょう。確かに似たような症状が出るため、混同されやすいのですが、腱板断裂と五十肩にはいくつか違いがあります。
比較項目 | 腱板断裂 | 五十肩 |
---|---|---|
原因 | 腱の損傷・断裂 | 炎症や癒着 |
発症年齢 | 50代以降に多い | 40〜60代に多い |
夜間痛 | 強く出やすい | 比較的軽度 |
自力で腕を上げられるか | 難しい(他人に持ち上げてもらえば動くことも) | 痛みで動かせないことが多い |
自然に治る? | 治りにくいことが多い | 多くは自然に回復傾向 |
腱板断裂は、自然に放置すると悪化するケースが多いため、早めの診断と対応が大切です。
どんな検査や治療がある?
整形外科では、問診や肩の動きを確認したうえで、超音波検査やMRI検査を行い、腱板の損傷を確認します。
治療は、症状の程度に応じて以下のような方法があります。
保存療法(手術をしない治療)
- 安静(肩を酷使しない)
- 痛み止め(内服薬や外用薬)
- リハビリテーション(可動域を保つ体操)
- 肩のサポーターや装具
手術療法
腱が完全に切れていて、日常生活に支障がある場合は、関節鏡(かんせつきょう)を使った縫合手術が行われることもあります。
最近注目される治療法
近年では、腱の修復を促す再生医療(PRP療法や幹細胞治療)も検討されることがあります。ただし、まだすべての症例に適応できるわけではなく、医師と相談しながら選択することが重要です。
自宅でできる予防とセルフケア
腱板断裂を防ぐ、または悪化を抑えるためには、日常の肩の使い方や筋力維持がカギとなります。
無理な動作を避ける
高い棚の物を無理に取るなど、急な腕の動きは避けましょう。
軽い肩のストレッチ
痛みのない範囲で、毎日ゆっくりとストレッチを行うことが大切です。
肩甲骨周囲の筋肉を鍛える
肩を安定させるために、肩甲骨まわりの筋肉を鍛える体操も効果的です。
よくある質問・誤解への回答
Q. 肩が痛いときは動かさない方がいいの?
→ 一概に「安静」がベストとは限りません。動かさなさすぎると、関節が固まり「凍結肩(フローズンショルダー)」になることも。痛みのない範囲でゆっくり動かすことが大切です。
Q. 腱板断裂は自然に治る?
→ 部分断裂なら保存療法で改善することもありますが、完全断裂は自然に治癒することはほとんどありません。
まとめ:年齢のせいとあきらめないで
寝返りで肩が痛む症状は、年齢のせいだと片づけられがちですが、腱板の損傷が隠れていることも多くあります。放っておかずに一度専門医に相談することで、痛みの原因がはっきりし、適切な対策が見つかることがほとんどです。
「もう歳だから…」とあきらめる前に、一歩踏み出してみませんか?私たちは、肩の痛みで困っている方に寄り添い、快適な生活を取り戻すお手伝いをしています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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