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腰 腰の痛みに幹細胞点滴は効く?再生医療による新しいアプローチを専門医が解説

「慢性的な腰痛が治らない」「薬や注射を続けてもすぐに痛みが戻る」――そんなお悩みを抱える方は多くいらっしゃいます。加齢とともに腰の筋肉や椎間板が衰え、痛みが慢性化することも少なくありません。最近では、「幹細胞点滴」という再生医療の方法が注目されています。この記事では、整形外科専門医の立場から、腰痛に対する幹細胞点滴の仕組みや効果、安全性についてわかりやすく解説します。
この記事の内容
腰痛の原因は「筋肉・椎間板・神経」のトラブル
腰痛といっても、原因は人によってさまざまです。多くの方に見られるのは、以下の3つのタイプです。
① 筋肉のこわばりによる腰痛
長時間の座り姿勢や運動不足により、腰の筋肉が硬くなり血流が悪化して痛みを感じるタイプです。体を動かすと楽になるのが特徴です。
② 椎間板や関節の変性による腰痛
年齢とともに椎間板(骨と骨の間のクッション)がすり減り、骨同士がぶつかることで痛みが出るケースです。変形性腰椎症や椎間板ヘルニアの初期にも見られます。
③ 神経の圧迫による腰痛(坐骨神経痛など)
椎間板や骨の変形が神経を圧迫し、腰から足にかけて痛みやしびれを感じるタイプです。歩くと痛みが強くなり、休むと軽くなる特徴があります。
このように「腰痛」とひとことで言っても、筋肉・骨・神経など複数の要因が関係しているため、根本的な治療には“組織の修復”が必要になることもあります。
幹細胞点滴とは?体の修復力を高める再生医療
幹細胞点滴とは、自分の脂肪などから採取した「幹細胞(かんさいぼう)」を培養・抽出し、点滴で全身に投与する再生医療の一つです。幹細胞には、傷ついた組織を修復したり、炎症を抑えたりする働きがあります。
投与された幹細胞は血液を通して全身に運ばれ、損傷した部位の修復を助ける「サイトカイン」と呼ばれる成長因子を分泌します。これにより、腰の炎症や筋肉の緊張がやわらぎ、慢性的な痛みの改善が期待されます。
なぜ腰の痛みに幹細胞点滴が注目されているのか
従来の腰痛治療は、痛みを抑える対症療法が中心でした。薬やブロック注射は一時的に炎症を抑えることができますが、組織自体を修復する力はありません。
一方、幹細胞点滴は「体の回復力そのものを高める」という点で根本的な治療に近づく方法といえます。特に、以下のような方に適していると考えられています。
- 長年、慢性腰痛に悩んでいる
- 椎間板の変性や脊柱管狭窄症と診断されている
- 手術は避けたいが、痛みを根本から改善したい
- 薬の副作用や長期使用に不安がある
幹細胞のもつ「抗炎症作用」「血流改善」「組織修復促進作用」により、腰部の環境を整え、自然治癒をサポートすることが期待されます。
治療の流れと所要時間
幹細胞点滴は外来で受けられる比較的負担の少ない治療です。一般的な流れは以下の通りです。
- 診察・検査:MRIなどで腰痛の原因を確認します。
- 採取:自分の脂肪から幹細胞を抽出します。
- 投与:培養・精製された幹細胞を点滴で静脈から投与します(約60分程度)。
- 経過観察:数ヵ月~1年かけて、徐々に炎症の改善や痛みの緩和を実感される方が多いです。
体への負担が少なく、仕事や日常生活を続けながら治療できる点も大きなメリットです。
幹細胞点滴はどんな腰痛にも効くの?
すべての腰痛に万能というわけではありません。筋肉疲労や急性のぎっくり腰などは、安静と保存療法で回復します。一方、長引く慢性腰痛や、椎間板や神経へのダメージを伴う場合には、幹細胞点滴が有効なケースがあります。
また、幹細胞点滴は手術の代替ではなく、「手術を避けたい」「再発を防ぎたい」方のサポート治療として位置づけられます。医学的な適応を見極めるために、整形外科専門医の診断を受けることが大切です。
よくある質問
Q. 幹細胞点滴は安全ですか?
A. 自分の細胞を使用する場合、拒絶反応の心配はほとんどありません。感染症対策や細胞の品質管理が徹底された施設で行えば、安全性は高いとされています。
Q. 効果はどのくらい持続しますか?
A. 症状や体質によって個人差はありますが、何年にもわたって痛みの軽減を感じる方もいます。炎症を抑えるだけでなく、関節や筋肉の環境を整えることで再発予防にもつながります。
Q. 保険は使えますか?
A. 幹細胞点滴は自由診療(自費治療)となります。料金は施設や使用する細胞の種類によって異なりますので、事前に説明を受けてから検討しましょう。
まとめ:腰痛治療の新しい選択肢としての幹細胞点滴
腰の痛みは、年齢や生活習慣による慢性変化が関係することが多く、従来の治療では「根本的な改善」が難しい場合もあります。幹細胞点滴は、痛みの原因となる炎症や組織の損傷を修復し、再び「動ける体」を取り戻すための再生医療です。年齢のせいと諦めず、専門医に相談して、自分に合った治療法を見つけましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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