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膝 立ち上がる時の膝の痛みを解消!5分でできる簡単ストレッチと運動を整形外科専門医が解説

椅子から立ち上がろうとした瞬間、膝に「ズキッ」とした痛みが走り、思わず「よっこいしょ」と手をついてしまう。そんな経験はありませんか。
私のクリニックには、日々多くの膝の悩みを抱えた患者さんがいらっしゃいます。 「昔はすっと立てたのに、今は一度どこかに捕まらないと怖いんです」 「朝、布団から起き上がる時が一番つらくて、動き出すまで時間がかかります」 このような声を聞くたびに、膝の痛みがどれほど日常生活の質を下げ、心にまで負担をかけているかを痛感します。
膝の痛みは、単なる体の不調ではありません。行きたい場所へ行くのをためらわせ、趣味や友人との交流を遠ざけてしまう、心のブレーキにもなり得るものです。しかし、専門医としての知見から申し上げれば、その痛みの多くは適切な知識と、ちょっとした日々のケアで和らげることが可能です。
今回は、特にご相談が多い「立ち上がる時の膝の痛み」に焦点を当て、その原因と、ご自宅でわずか5分でできるストレッチや運動をご紹介します。
この記事の内容
なぜ立ち上がる時に膝が痛むのでしょうか
立ち上がるという動作は、実は膝にとって非常に大きな負担がかかる動きです。 座っている状態から立ち上がる際、膝関節には体重の数倍もの負荷がかかると言われています。特に50代を過ぎてくると、多くの方が「以前とは違う違和感」を覚え始めます。
具体的には、以下のような場面で困っている方が多いようです。 ・ソファから立ち上がる時に膝の前面が痛む ・床から立ち上がる時に膝の内側に鋭い痛みを感じる ・バスや電車から降りる一歩目が怖い ・階段の上り下りで膝がガクガクする
こうした症状があるとき、膝の中では一体何が起きているのでしょうか。難しい医学用語を使わずに例えるなら、膝は「クッション」と「潤滑油」を備えた高性能な部品のようなものです。
長年使い続けていくうちに、クッション(軟骨)が少しずつ薄くなったり、表面がささくれたりしてきます。また、関節をスムーズに動かすための潤滑油(関節液)の質が変化し、中の動きがぎこちなくなることもあります。この状態で急に力を入れると、摩擦が起きたり、周囲の組織が引っ張られたりして「痛み」の信号が出るのです。
これを専門的には「変形性膝関節症(へんけいせいしずかんせつしょう)」の初期段階と呼ぶことが多いですが、怖がる必要はありません。大切なのは、膝だけに負担を集中させない体づくりを知ることです。
膝の痛みの正体を知りましょう
膝の痛みを引き起こす大きな要因は、主に3つあります。
1つ目は、関節を支える筋力の低下です。 特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)は、膝を支える天然のサポーターのような役割をしています。この筋肉が弱くなると、本来筋肉が受け止めるはずだった衝撃が、ダイレクトに関節へ伝わってしまいます。
2つ目は、関節の柔軟性の低下です。 長時間座りっぱなしでいると、膝の周りの筋肉や組織が硬くなります。冷え固まったゴムを急に伸ばそうとするとパチンと切れるのと同じで、硬くなった膝を急に動かそうとすると、強い痛みを感じやすいのです。
3つ目は、関節内の微細な炎症です。 軟骨の破片などが関節の中を刺激すると、火事のボヤのような炎症が起こります。これが「水がたまる」状態や、重だるい痛みの原因になります。
これらの原因に対して、私たちができる最も効果的で副作用のない対策が「正しく動かすこと」です。安静にしすぎると、逆に筋肉は衰え、関節はどんどん硬くなってしまいます。痛みのない範囲で適切にアプローチすることが、膝を若々しく保つ秘訣なのです。

5分で完了!膝を楽にするストレッチと運動
それでは、今日から始められる簡単な運動をご紹介します。無理は禁物ですので、呼吸を止めず、気持ち良いと感じる範囲で行ってください。
1. 膝の準備運動:足首クルクル回し
まずは血流を良くしましょう。椅子に座ったまま、片足ずつ足首を大きく回します。外回し5回、内回し5回。これだけで膝周りの血行が促進され、動きがスムーズになります。
2. 太ももに力を入れる運動(クアドセッティング)
これが最も重要です。膝の痛みを防ぐ「天然のサポーター」を鍛えます。 ・足を伸ばして座る(椅子でも床でもOK) ・膝の裏を床(または椅子の面)に押し付けるように、太ももの前に力を入れる ・5秒間キープして、一気に脱力する これを左右10回ずつ繰り返します。膝を動かすというより、太ももの筋肉をギュッと固めるイメージです。
3. 膝を伸ばすストレッチ
座った状態で、片方の足を真っすぐ前に上げます。つま先を天井に向け、太ももの筋肉を意識しながら5秒キープ。これを繰り返すことで、立ち上がる時に必要な筋力が養われます。
4. お皿のセルフマッサージ
膝のお皿(膝蓋骨)の周りを、指で優しく円を描くようにほぐします。お皿の動きが良くなると、膝全体の可動域が広がり、立ち上がりの引っかかり感が軽減されます。
これらを一通り行っても5分程度です。特におすすめなのは「動き出す前」に行うこと。朝起きてすぐや、椅子から立つ前に行うと、膝への衝撃を大幅に和らげることができます。

日常生活で気をつけるべきポイント
運動と合わせて、生活習慣を少し工夫するだけで膝への負担はさらに減ります。
まず、床に座る生活から椅子に座る生活へのシフトを検討してみてください。和室での「正座」や「あぐら」から立ち上がる動きは、膝にとって最も過酷な仕事です。ソファやダイニングチェアを使うようにするだけで、膝の寿命はぐんと延びます。
また、靴選びも大切です。クッション性の高い靴を履くことで、歩行時の衝撃を吸収してくれます。家の中でも、底に厚みのあるスリッパを履くことが有効な場合もあります。
もし、痛みが強くて運動ができないという場合は、無理をせず専門医に相談してください。現在、整形外科ではヒアルロン酸の注射(関節の動きを滑らかにするもの)や、お薬、専門の理学療法士によるリハビリテーションなど、手術以外にも多くの選択肢があります。
患者さんの中には「注射は癖になるから嫌だ」とおっしゃる方もいますが、それは誤解です。痛みを抑えて動けるようになることで、結果的に筋力が維持され、将来の歩行困難を防ぐことができるのです。

よくある質問:膝の痛みに関するQ&A
膝の悩みについて、外来で特によく受ける質問にお答えします。
Q:痛みがあるときは、なるべく動かさない方がいいのでしょうか?
A:激しい腫れや熱感がある「急な痛み」のときは安静が必要ですが、慢性的な痛みの場合は「動かさないこと」が逆効果になることが多いです。 動かさないでいると、膝を支える筋肉がさらに細くなり、関節が硬くなってしまいます。これを「廃用(はいよう)」と呼びます。痛みのない範囲で、先ほど紹介したストレッチや水中ウォーキングなど、負担の少ない運動を継続することが、実は回復への近道です。
Q:サポーターは毎日ずっと着けていても大丈夫ですか?
A:サポーターは外出時や階段の上り下りなど、膝に負担がかかる場面で使うのは非常に効果的です。膝のぐらつきを抑え、安心感を与えてくれます。 ただし、家の中でリラックスしているときや寝ているときまで着け続けると、筋肉がサポーターに頼りきってしまい、自前の筋力が衰える原因になります。状況に合わせて「賢く使い分ける」のがベストな活用法です。
Q:膝の痛みは、結局「年のせい」で治らないのでしょうか?
A:確かに年齢とともに軟骨の変化は起こりますが、痛みの強さと年齢が必ずしも比例するわけではありません。80代でも元気に歩いている方はたくさんいらっしゃいます。 「もう年だから」と諦めてしまうと、活動量が減り、体全体の機能も落ちてしまいます。適切なケアを行えば、軟骨の状態がそのままであっても、痛みをコントロールして快適に過ごすことは十分に可能です。諦める前に、まずは今の自分にできる小さなケアから始めてみましょう。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:いつまでも自分の足で歩き続けるために
立ち上がる時の膝の痛みは、体からの「もう少し労わってほしい」というサインです。そのサインに耳を傾け、適切な対策を始めることに遅すぎるということはありません。
今日ご紹介した5分間のストレッチや、生活習慣のちょっとした改善。それらは一見小さなことに思えるかもしれませんが、積み重ねることで1年後、5年後のあなたの膝の状態を劇的に変える力を持っています。
膝が楽になれば、お買い物に行くのが楽しくなります。孫と一緒に散歩へ行くことも、旅行を楽しむこともできるようになります。私たちはその一歩を全力でサポートしたいと考えています。
「最近、膝の調子が悪いな」と感じたら、まずはご紹介した運動を試してみてください。そして、もし不安が解消されないときは、いつでも専門の医療機関の扉を叩いてくださいね。あなたの前向きな一歩が、健やかな未来へとつながっています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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