
コラム COLUMN
膝 転倒後の膝の痛み|打撲と靭帯損傷の見分け方

「転んで膝を打ったけど、ただの打撲かと思ったら、なかなか痛みが引かない…」
そんな経験はありませんか?
転倒後に膝の痛みが続くと、不安になりますよね。
打撲なら自然に治ることが多いですが、場合によっては靭帯損傷といった重いケガが隠れていることもあります。
本記事では、転倒後の膝の痛みの原因と、打撲と靭帯損傷の見分け方、そして治療の必要性や対処法について、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
膝を打った直後に起こること
転倒して膝を地面にぶつけた場合、多くは**「打撲(うちみ)」によるものです。
これは皮膚の下にある軟部組織が損傷を受け、腫れや内出血(あざ)**が起こる状態です。
痛みはあるものの、時間とともに徐々に改善するのが特徴です。
一方、転倒時に膝が不自然にひねられたり、強い衝撃が加わると、靭帯損傷(じんたいそんしょう)や半月板損傷が起きることがあります。
この場合は、自然経過で治るとは限らず、放置することで関節の不安定性や将来的な関節炎につながるリスクがあります。
打撲と靭帯損傷の違いを見分けるポイント
以下のポイントを参考に、単なる打撲か、靭帯損傷の可能性があるのかを見極めてください。
1. 痛みの部位と性質
- 打撲:ぶつけた箇所がピンポイントで痛む。皮膚にあざができることが多い。
- 靭帯損傷:膝の内側や外側、関節の奥にズーンとした痛み。動かしたときに痛みが増す。
2. 腫れや内出血の広がり
- 打撲:打った直後から腫れる。数日で改善傾向。
- 靭帯損傷:腫れが時間とともに強くなる。膝全体が腫れることもある。
3. 関節の安定感
- 打撲:歩行や階段昇降に大きな支障はない。
- 靭帯損傷:膝が「ガクッ」とする感じや、不安定感を感じることがある。
4. 可動域
- 打撲:動かすと多少痛むが、可動域は比較的保たれている。
- 靭帯損傷:膝を伸ばしたり曲げたりする動作で、強い痛みや引っかかりを感じる。
特に注意が必要な靭帯損傷とは?
靭帯損傷にはいくつかのタイプがありますが、転倒によって起こりやすいのは以下の2つです。
内側側副靱帯(MCL)損傷
膝の内側にある靭帯で、外からの衝撃で痛めやすい部位です。
内側に圧痛や腫れが出ます。
前十字靭帯(ACL)損傷
ジャンプや急な方向転換、転倒で膝がねじれるような力が加わったときに損傷します。
スポーツ選手に多いですが、一般の方でも転倒時に起こることがあります。
膝に力が入らなくなる感じや、強い腫れが特徴です。
自分でできる応急処置と注意点
転倒直後はまずRICE処置が基本です。
- Rest(安静):膝に負荷をかけないようにしましょう。
- Ice(冷却):腫れや炎症を抑えるため、15〜20分を目安に冷やします。
- Compression(圧迫):包帯などで軽く圧迫して腫れを防ぎます。
- Elevation(挙上):膝を心臓より高く保つと、腫れが軽減します。
ただし、痛みや腫れが長引く場合や、膝に力が入らない、不安定感があるといった症状がある場合は、整形外科を早めに受診してください。
早めの診断と治療が将来を左右する
靭帯損傷を放置してしまうと、膝が不安定なままになり、将来的に変形性膝関節症へとつながる可能性もあります。
また、治療のタイミングが遅れると、保存療法では回復が難しくなり、手術が必要になるケースも出てきます。
一方で、早期に診断し、適切な治療(装具療法、リハビリ、PRPや再生医療など)を行えば、手術を避けながら改善できることも少なくありません。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞をひざ関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
まとめ
転倒後の膝の痛みは、軽い打撲から重大な靭帯損傷までさまざまです。
「そのうち治るだろう」と放置せず、少しでも不安な症状がある場合は、早めの受診が大切です。
早期対応が、膝の健康と将来の生活の質を守る第一歩になります。


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