コラム COLUMN
変形性膝関節症膝の治療再生医療膝 変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、骨が変形する中高年に多い疾患です。初期には動作の開始時に痛みがあり、休むと痛みが和らぎますが、進行すると正座や階段の昇降が困難となり、最終的には安静時にも痛みが取れず、歩行が困難になることもあります。治療法は大きく分けて、運動療法や薬物療法などの保存療法と、手術療法の2つがあります。そして最近では関節の再生医療による治療が注目されています。本記事では、変形性膝関節症の治療法について詳しく解説します。
保存療法
運動療法
運動療法は、膝周りの筋肉を鍛えることで、関節の安定性を高め、膝への負担を軽減する方法です。適度な運動は痛みを和らげ、関節の動きを改善します。ただし、激しい運動は症状を悪化させる可能性があるため、無理のない範囲で行うことが重要です。
太もものトレーニング
- 背もたれのある椅子に深く腰掛けます。
- 片足をゆっくり水平まで持ち上げます。
- 5秒間キープします。
- ゆっくりと元に戻します。
膝の動きをよくするトレーニング
- 足を伸ばして座り、あればかかとの下にタオルを置きます。
- かかとをゆっくりとお尻に近づけて、できるだけ膝を曲げます。
- かかとをゆっくりお尻から遠ざけて、できるだけ膝を伸ばします。
薬物療法
変形性膝関節症の薬物療法は、炎症と痛みを抑えることを目的としています。使用される薬には、外用薬、内服薬、座薬、注射薬があります。
外用薬 – 抗炎症剤
外用薬には、クリーム、軟膏、ゲル、湿布があります。非ステロイド系抗炎症剤が含まれ、炎症を起こしている局所で腫れや痛みを抑えます。冷湿布は急性期の腫れや痛みに、温湿布は慢性的な痛みに適しています。
内服薬 – 消炎鎮痛剤
内服薬は、比較的短時間で効果が出るため、急な痛みの緩和に使用されます。非ステロイド系消炎鎮痛剤として、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、インドメタシンなどがあります。長期使用は副作用のリスクがあるため、症状が軽くなったら外用薬に切り替えるのが一般的です。
座薬 – 消炎鎮痛剤
胃腸が弱く内服薬が使えない場合や、特に痛みが激しい場合には座薬が用いられます。インドメタシンやジクロフェナクの座薬があります。
関節内注射 – ヒアルロン酸
ヒアルロン酸注射は、関節の滑りを滑らかにし、衝撃を和らげる効果があります。週に1回、計5回の注射で効果が期待できます。
保存療法の注意点
薬物療法は炎症を抑えて痛みを軽減することが目的であり、病気そのものを治すものではありません。日常生活習慣の見直しや、適切な運動習慣を身につけることが重要です。また、医師の指示に従い、正しく薬を服用しましょう。
手術療法
保存療法で効果が見られない場合、手術療法が検討されます。代表的な手術療法には、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術の3つがあります。
関節鏡視下手術
軽度から中程度の症例に適しています。膝の皮膚を小さく切開し、関節鏡を挿入して軟骨の破片を取り除く手術です。入院期間は短く、翌日から歩行が可能です。
高位脛骨骨切り術
脛骨の一部を切り取って膝への荷重を矯正し、関節の力を均等にする手術です。リハビリ期間が長く、回復までに半年ほどかかります。若い人や筋力のある人に適しています。
人工膝関節置換術
重度の症例に適しています。膝の関節軟骨と骨を削り、人工関節に置き換える手術です。人工関節は耐用年数が10~15年とされており、寿命が来たら再手術が必要になる場合があります。
再生医療
最近では関節の再生医療による治療が注目されています。それぞれについて解説していきます。
幹細胞療法
幹細胞療法は、患者さま自身の幹細胞を使用して、膝関節の損傷した組織の修復・再生を促す治療法です。脂肪組織から摘出されるこれらの細胞は、軟骨細胞をはじめとする様々な細胞への変化が可能で、その力を利用して膝の損傷箇所を回復させることが期待されております。
期待される効果
膝関節の軟骨を修復・再生する効果が期待できます
幹細胞療法の主な目的は、膝関節の軟骨を修復したり再生させることです。これにより、膝の痛みが軽くなり、機能が改善されること、さらには軟骨の損傷の進行を遅らせることも期待できます。
PRP療法
PRP療法は、患者さまの血液から血小板を豊富に含む「PRP」を取り出し、患部に注入することで、組織の修復を助けます。血小板には成長因子が含まれており、これが膝関節の自然な治癒プロセスを促進するとされています。 このため、PRP療法は膝関節のトラブルを抱える人々に希望を与える治療法として注目されています。皆さんがよくご存知のあの有名メジャーリーガーや、プロゴルファーもPRP治療を受けました。
期待される効果
膝関節の痛みを軽減させ、組織の修復を促す効果が期待できます
膝関節の炎症を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できます。
さらにこの治療法は、組織の修復を促し、関節機能の向上にも役立つことがあります。
予防と日常生活の注意点
変形性膝関節症を予防するためには、日常生活で以下の点に注意しましょう。
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える
- 正座を避ける
- 肥満の場合は減量する
- 膝を冷やさず、温めて血行を良くする
- 洋式トイレを使用する
まとめ
変形性膝関節症の治療法は、症状の進行状況に応じて選択されます。保存療法として運動療法や薬物療法を試し、それでも効果がない場合は手術療法が検討されます。早期に治療を始めることで、日常生活の質を維持することが可能です。医師と相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
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