
コラム COLUMN
股関節膝 変形性膝関節症と股関節症の違いとは?同時に起こるケースや治療法も解説

「歩くとひざや股関節が痛む」「階段の昇り降りがつらい」と感じていませんか?中高年になると増えてくるこれらの症状の原因として多いのが、変形性膝関節症や変形性股関節症です。どちらも「関節の変形」によって痛みや機能障害を引き起こす病気ですが、症状の出方や治療法に違いがあります。また、同時に発症するケースもあります。本記事では、これら2つの関節症の違いや共通点、治療の選択肢まで、整形外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝関節の軟骨がすり減り、関節の隙間が狭くなることで痛みや腫れ、歩行障害などが起こる疾患です。特に日本では、60歳以上の女性に多く見られる傾向があります。
初期症状では、「立ち上がるときに膝がこわばる」「歩き始めに違和感がある」といった軽度の症状が中心です。しかし、進行するにつれて階段の昇り降りがつらくなり、やがて正座や歩行そのものが困難になることもあります。
変形性股関節症とは?
一方、変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、股関節の軟骨が摩耗し、骨同士が直接ぶつかることで痛みや可動域の制限が生じる病気です。日本では先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全といった背景を持つ女性に多く発症します。
初期段階では、「立ち上がるときや歩き始めに股関節の前側が痛む」と感じることが多く、進行するにつれて靴下を履く、足の爪を切るといった動作が難しくなります。最終的には歩行困難に至ることもあり、生活の質に大きな影響を及ぼします。
ひざと股関節、症状の違いと共通点
膝関節と股関節は、いずれも体重を支える「荷重関節」であるため、日常的な動作で大きな負担がかかります。そのため、両方とも軟骨がすり減りやすく、痛みや可動域制限が起こります。
違いとしては、痛みの出る場所と動作です。膝関節症では膝の前面や内側に痛みが出やすく、歩行時や階段昇降で症状が強くなります。一方、股関節症では鼠径部(脚の付け根)に痛みを感じることが多く、長時間の歩行や起立動作で痛みが増す傾向にあります。
共通点としては、いずれも関節の変形が進行する疾患であり、早期発見・早期治療が重要であるという点です。また、関節をかばって歩くことで別の関節に負担がかかり、ひざと股関節の両方に痛みが出るケースも珍しくありません。
同時に起こることはあるの?
はい、あります。特に加齢や肥満、長年の生活習慣により両方の関節に負担がかかっている方は、膝と股関節の両方に変形性関節症を発症する可能性があります。また、片側の関節をかばう歩き方が、反対側の関節に悪影響を与える「連鎖的な負担」によって、症状が広がることもあります。
たとえば、右ひざの痛みで左側に重心をかけ続けた結果、左の股関節に痛みが出てくるというようなケースです。このような「多部位関節症」は診断や治療も複雑になるため、早めの整形外科受診がとても重要です。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
自分の関節の状態を知ることが第一歩
「年齢のせいだから」と痛みを我慢していると、知らないうちに症状が進行してしまうことがあります。変形性関節症は早期発見が重要です。最近、ひざや股関節に違和感がある、動かしにくくなった、歩き方が変わったと感じた方は、ぜひ一度整形外科の診察を受けてみてください。
当院では、MRIなどの画像診断を活用し、患者さん一人ひとりの関節の状態に応じた最適な治療法をご提案しています。再生医療を含む幅広い治療選択肢を通じて、より多くの方が「もう一度歩く喜び」を取り戻せるよう、全力でサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 変形性膝関節症と股関節症の違いは何ですか?
A. 主に痛みの出る部位と動作が異なります。膝は歩行や階段昇降で痛みが出やすく、股関節は脚の付け根に痛みが出て可動域が制限されることがあります。
Q2. 膝と股関節の関節症が同時に起こることはありますか?
A. はい、あります。年齢や生活習慣、かばい歩きの影響で両方の関節に変形が生じる「多部位関節症」が発生することがあります。
Q3. 変形性関節症に再生医療は効果がありますか?
A. PRPや幹細胞治療などの再生医療は、軟骨の修復や炎症の抑制を目的とした新しい治療法で、手術を避けたい方に選ばれています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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