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股関節 靴下が履きにくくなったら要注意。股関節の動きを取り戻すために今できること

椅子に座って靴下を履こうとすると、足が上がりにくい。床に座って前かがみになると、股関節のあたりがつっぱる感じがする。以前は何気なくできていたことが、いつの頃からかひと苦労になってきた。
こんな経験、思い当たりませんか?
クリニックには「靴下が自分で履けなくなってきた」「爪を切るのも一苦労で」と、股関節の動きにくさを訴えて来院される方が多くいらっしゃいます。特に50代以降の方に多い悩みで、「年齢のせいかな」と長い間放置してしまっているケースも少なくありません。
しかし、靴下が履きにくいという症状は、股関節が発しているSOSのサインである可能性があります。早めに原因を知り、適切なケアを始めることが、将来の生活の質を守ることにつながります。
この記事の内容
靴下が履きにくいとき、他にこんな症状はありませんか?
股関節の動きに問題が起きている場合、靴下が履きにくいという症状と合わせて、次のような困りごとが重なっていることがよくあります。
脚を外側に開く動作(あぐらをかくなど)がしにくくなった。歩き始めの一歩目に足の付け根あたりが重たい感じがする。長く歩いたあとや、階段の上り下りで股関節のあたりが痛む。車の乗り降りで足を持ち上げるのがつらい。左右の足の長さが違うように感じる、または歩き方が変わってきた。
これらの症状が複数当てはまる方は、股関節に何らかの変化が起きているサインかもしれません。「ちょっと不便なだけ」と見過ごさず、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
なぜ股関節が動きにくくなるのか
股関節は「球と受け皿」でできている関節
股関節は、太ももの骨(大腿骨)の丸い頭の部分が、骨盤のくぼみ(臼蓋)にはまり込んだ「球と受け皿」のような構造をしています。この構造のおかげで、前後左右・回転と、あらゆる方向に脚を動かすことができます。
この関節の表面も、膝と同じように「軟骨」という薄いクッション材で覆われています。軟骨が滑らかなうちは、骨どうしが擦れることなくスムーズに動きますが、加齢や体重負荷、姿勢の癖などによってすり減っていくと、動きが硬くなり、痛みや可動域の制限が起きてきます。
変形性股関節症という病気
股関節の軟骨がすり減ることで痛みや動きにくさが生じる状態を「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」といいます。日本では特に女性に多く、50〜60代以降に症状が現れてくる方が増えてきます。
この病気の特徴は、初期には「なんとなく動きにくい」「少し痛む」程度で自覚しにくく、気づいたときには軟骨のすり減りがかなり進んでいる、というケースが多い点です。靴下が履きにくくなるのは、股関節を内側に回したり曲げたりする動きが制限されてくるためで、変形性股関節症の初期〜中期に出やすいサインのひとつです。
筋力低下と姿勢の影響も大きい
股関節の動きを支えているのは、関節そのものだけではありません。お尻や太もも周りの筋肉が、股関節を安定させて動かすための重要な役割を担っています。これらの筋肉が衰えると、関節への負担が増え、動きのぎこちなさや痛みにつながります。
また、長年の姿勢の癖や骨盤の傾きも、股関節の動きを制限する原因になります。「脚を組む癖がある」「片側に体重をかけて立つことが多い」という方は、股関節への負担が偏りやすい傾向があります。

股関節の動きを改善するために、今日からできること
股関節まわりのストレッチを習慣にする
股関節の可動域を保つうえで、ストレッチは最も手軽で効果的なセルフケアです。特にお勧めなのが、仰向けに寝て片膝を胸に引き寄せるストレッチです。太もも裏と股関節まわりをゆっくり伸ばすことができます。
お風呂上がりなど体が温まったタイミングで、左右それぞれ20〜30秒を目安にゆっくりと行いましょう。痛みが出る場合は無理に伸ばさず、「気持ちいい」と感じる範囲にとどめてください。
お尻と太ももの筋肉を鍛える
股関節を支える筋肉として最も重要なのは、お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋)と太もも前面の大腿四頭筋です。
仰向けになってお尻を持ち上げる「ヒップリフト」、椅子に座ったまま片脚を前に伸ばしてキープする「脚上げ運動」などが、自宅で安全に行える基本的なトレーニングです。毎日少しずつ、無理なく続けることが大切です。
体重管理で股関節への負担を減らす
股関節には、立っているだけで体重の約3倍の負荷がかかるといわれています。体重を少し減らすだけで関節への負担は大幅に軽減されます。極端なダイエットは筋肉を落とすため逆効果です。たんぱく質をしっかり摂りながら、バランスのよい食事で少しずつコントロールしていきましょう。
靴と歩き方を見直す
クッション性の低い靴やかかとが不安定な靴は、股関節への衝撃を増やします。かかとがしっかり固定されたクッション性のある靴を選ぶとともに、歩くときは「背筋を伸ばし、かかとから着地する」意識を持つだけでも、股関節への負担は変わります。

病院ではどんな治療が受けられる?
「ストレッチや運動を試したけれど改善しない」「すでに痛みがある」という方は、整形外科での診察を受けることをお勧めします。
保存療法として、痛み止めの内服薬や貼り薬、理学療法士によるリハビリテーションが基本となります。股関節への注射治療も選択肢のひとつですが、ヒアルロン酸注射については一時的な症状の緩和に使われることがある一方、軟骨そのものを修復する効果は乏しく、継続的な通院が必要なわりに実感が得られにくいという患者さんも多いのが実情です。
進行した変形性股関節症に対しては、人工股関節置換術が選択されることもありますが、手術に至る前に保存療法をしっかり行うことで、手術回避につながるケースも多くあります。「手術しかないと言われた」と感じた場合は、セカンドオピニオンを検討してみることもひとつの選択肢です。
よくある質問
Q. 股関節が痛いとき、動かさずに安静にしていた方がいいですか?
A. 急性期の強い痛みには無理は禁物ですが、痛みが落ち着いているときも「ただ安静にしているだけ」は逆効果になることがあります。動かさないでいると股関節まわりの筋肉が衰え、かえって関節への負担が増してしまいます。水中ウォーキングや自転車運動など、股関節に負担の少ない運動から少しずつ始めることが大切です。
Q. 靴下が履きにくいのは、手術が必要なほど悪い状態ですか?
A. 靴下が履きにくいという症状だけで、すぐに手術が必要とはいえません。股関節の動きにくさはさまざまな段階があり、初期〜中期であれば、ストレッチ・筋力トレーニング・リハビリなどの保存療法で改善できるケースがほとんどです。まずは整形外科で検査を受け、現在の状態を正確に把握することが先決です。
Q. 股関節の痛みは左右どちらかに出ることが多いですか?
A. 変形性股関節症は、片側だけに症状が出ることも、両側に出ることもあります。多くの方が最初は片側から気になり始めますが、反対側をかばうことで逆側にも負担がかかりやすくなります。「左だけ痛いから右は大丈夫」と思わず、両側のストレッチや筋力維持を意識することが大切です。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:靴下が履きにくくなったら、そのままにしないでください
靴下が履けない、爪が切りにくい、足を上げるのがつらい——こうした日常の「小さな不便」は、股関節が変化し始めているサインです。「年齢のせいだから仕方ない」と流してしまいがちですが、早めにケアを始めることで、症状の進行を十分に抑えることができます。
ストレッチや筋力トレーニング、体重管理、靴の見直し。どれも今日から始められることばかりです。そして、症状が気になるなら、ひとりで抱え込まずに専門医に相談してください。
あなたの股関節はまだ、十分に守れる可能性があります。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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