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腰 慢性的な腰の痛みはなぜ続く?治療の選択肢と自宅でできる対策を専門医が解説

「朝起きると腰が重い」
「長く立っていると腰がつらくなる」
「湿布や痛み止めで一時的には楽になるけれど、また痛くなる」
「年齢のせいだと思って、ずっと我慢している」
このような慢性的な腰の痛みに悩む方は、とても多くいらっしゃいます。
腰痛は、誰にでも起こりうる身近な症状です。ただ、痛みが3か月以上続く場合や、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合は、単なる疲れや一時的な筋肉痛ではなく、腰を支える筋肉、関節、椎間板、神経などに何らかの負担が続いている可能性があります。
特に50代以降では、背骨や椎間板の変化、筋力低下、姿勢の崩れ、歩き方の変化などが重なり、腰の痛みが慢性化しやすくなります。
慢性的な腰の痛みは、すぐに手術が必要という意味ではありません。むしろ多くの場合、保存療法、運動、生活習慣の見直しによって改善を目指すことができます。日本整形外科学会も、腰痛では原因や病態に応じた正確な診断が重要で、治療には薬、ブロック注射、装具療法、理学療法、運動器リハビリテーション、手術などがあると説明しています。
この記事の内容
慢性的な腰の痛みはどんな場面で困る?
慢性的な腰の痛みでは、日常生活の中で次のような困りごとが出てきます。
朝、布団から起き上がるときに腰が固まったように感じる。洗面台で前かがみになると痛い。台所に立っていると腰が重くなる。掃除機をかける、庭仕事をする、雪かきをするなどの中腰姿勢がつらい。長く歩くと腰やお尻、太ももが痛くなる。椅子から立ち上がるときに腰を伸ばしにくい。
こうした症状が続くと、外出や運動の機会が減ってしまいます。すると筋力が落ち、腰を支える力がさらに弱くなり、痛みが出やすくなるという悪循環に入りやすくなります。
「痛いから動かない」
「動かないから筋力が落ちる」
「筋力が落ちるから、さらに痛くなる」
この流れを断ち切ることが、慢性的な腰の痛みの治療ではとても大切です。
慢性的な腰の痛みの原因
筋肉のこわばりと筋力低下
腰は、背骨だけで支えられているわけではありません。お腹、背中、お尻、太もも周りの筋肉が協力して、体を支えています。
加齢や運動不足によってこれらの筋肉が弱くなると、腰の骨や関節にかかる負担が増えます。また、長時間同じ姿勢でいると筋肉がこわばり、血流が悪くなり、痛みが続きやすくなります。
特に座っている時間が長い方、前かがみ姿勢が多い方、足腰の筋力が落ちてきた方は、腰痛が慢性化しやすい傾向があります。
椎間板や背骨の関節の変化
背骨の骨と骨の間には、椎間板というクッションがあります。これは、座布団のように衝撃を吸収する役割をしています。
年齢とともに椎間板の水分が減ったり、厚みが少なくなったりすると、腰の動きが硬くなり、痛みにつながることがあります。また、背骨の後ろ側にある小さな関節に負担がかかると、反る動作や立ちっぱなしで痛みが出やすくなります。
レントゲンで「年齢相応の変化があります」と言われることがありますが、画像の変化がそのまま痛みの強さを決めるわけではありません。画像だけでなく、痛みの出方、姿勢、筋力、神経症状などを合わせて判断することが重要です。
腰部脊柱管狭窄症
50代以降で注意したい病気のひとつが、腰部脊柱管狭窄症です。
これは、腰の神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫される病気です。腰だけでなく、お尻、太もも、ふくらはぎ、足先に痛みやしびれが出ることがあります。
特徴的なのは、長く歩くと足が痛くなったりしびれたりして、少し休むとまた歩けるようになる症状です。これを間欠跛行といいます。日本整形外科学会も、腰部脊柱管狭窄症では歩行と休息を繰り返す間欠跛行が特徴的な症状であると説明しています。
「腰痛だと思っていたら、実は神経の通り道が狭くなっていた」というケースもありますので、歩く距離が短くなってきた方は早めの受診をおすすめします。
腰椎すべり症
腰椎すべり症は、腰の骨が少し前後にずれることで、神経の通り道が狭くなる病気です。
立っているとつらい、歩くとお尻や太ももが痛くなる、少ししゃがんで休むと楽になる、といった症状が出ることがあります。日本整形外科学会は、腰椎変性すべり症では腰部脊柱管狭窄症と同じような症状が出ることがあると説明しています。
心理的ストレスや睡眠不足
慢性的な腰の痛みには、体だけでなく心の状態も関係します。
痛みが長く続くと、「また痛くなるのでは」と不安になり、体を動かすことが怖くなります。睡眠不足やストレスが続くと、痛みに敏感になり、同じ刺激でも強く痛みを感じやすくなることがあります。
これは「気のせい」という意味ではありません。痛みは、体と脳が一緒に感じるものです。だからこそ、腰だけを見るのではなく、生活全体を整える視点が大切です。

慢性的な腰の痛みに対する治療の選択肢
保存療法が治療の基本
慢性的な腰の痛みに対して、まず基本となるのは保存療法です。保存療法とは、手術以外の治療全般を指します。
薬物療法、リハビリテーション、運動療法、装具療法、生活指導、姿勢や動作の改善などが含まれます。
痛みが強い時期には、痛み止めや湿布を使って炎症や痛みを抑えることがあります。ただし、薬は痛みを一時的にやわらげる役割であり、腰を支える筋力や姿勢そのものを改善するものではありません。
「薬で楽になったから終わり」ではなく、痛みが落ち着いた時期に運動や生活改善へつなげることが大切です。
リハビリテーションと運動療法
慢性的な腰の痛みでは、リハビリテーションがとても重要です。
リハビリでは、腰だけでなく、股関節、骨盤、太もも、お尻の筋肉の状態も確認します。腰痛の方の中には、股関節が硬くなっているために腰へ負担が集中している方も多くいらっしゃいます。
自宅で行いやすい運動としては、膝を抱えるストレッチ、太もも裏のストレッチ、腹式呼吸、お腹に軽く力を入れる体幹トレーニング、椅子からの立ち座り運動などがあります。
痛みを我慢して強い運動をする必要はありません。大切なのは、少し楽にできる運動を、毎日続けることです。
コルセットや装具の使い方
腰が不安定で痛みが強いときには、コルセットが役立つことがあります。外出時や長時間立つ作業のときに使うことで、腰への負担を減らせます。
ただし、コルセットに頼りすぎると、腰を支える筋肉を使う機会が減ってしまうことがあります。痛みが強い時期には支えとして使い、落ち着いてきたら少しずつ外す時間を作るのがよいでしょう。
注射治療やブロック治療
痛みが強い場合や、神経の炎症が疑われる場合には、注射治療やブロック治療が検討されることがあります。
ブロック治療は、痛みの原因となっている神経やその周囲に薬を届ける治療です。痛みをやわらげることで、歩行やリハビリに取り組みやすくなることがあります。
一方で、注射だけで腰痛の根本原因がすべて解決するわけではありません。注射で痛みが落ち着いたタイミングを活かして、姿勢改善や筋力維持につなげることが大切です。
なお、ヒアルロン酸注射は主に膝関節などで使われることが多い治療で、慢性的な腰の痛みに対して中心となる治療ではありません。腰痛の原因が筋肉、神経、背骨の関節、椎間板など多岐にわたるため、「注射をすれば治る」と考えすぎない方がよいでしょう。
手術が必要になるケース
慢性的な腰の痛みがあるからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。
ただし、足のしびれや筋力低下が進んでいる、歩ける距離が著しく短くなっている、排尿や排便の異常がある、保存療法を続けても日常生活が大きく制限される場合には、手術が検討されることがあります。
手術は最後の手段というより、「必要な方にとっては生活を取り戻すための選択肢」です。大切なのは、現在の状態を正しく評価し、保存療法で改善を目指せる段階なのか、手術も含めて考える段階なのかを見極めることです。
自宅でできる腰痛対策
長時間同じ姿勢を避ける
腰にとってつらいのは、重い物を持つことだけではありません。長時間同じ姿勢でいることも、腰には大きな負担になります。
30分から1時間に一度は立ち上がり、軽く背伸びをしたり、数歩歩いたりしましょう。小さな動きでも、腰周囲の血流改善に役立ちます。
中腰を減らす
洗顔、掃除、草むしり、雪かき、荷物の持ち上げなど、中腰姿勢は腰に負担がかかります。
物を持ち上げるときは、腰だけを曲げるのではなく、膝と股関節を使ってしゃがみ、体に近づけて持ち上げるようにしましょう。
体重管理と筋力維持
体重が増えると、腰や膝、股関節への負担が増えます。ただし、極端な食事制限で筋肉を落としてしまうと、かえって腰痛が悪化することがあります。
たんぱく質をしっかり摂り、無理のない範囲で歩行や筋力トレーニングを続けることが大切です。
睡眠とストレスを整える
慢性的な腰の痛みでは、睡眠の質も重要です。眠れない日が続くと、痛みを強く感じやすくなります。
寝具が柔らかすぎる、寝返りがしにくい、朝起きたときに腰がつらいという方は、寝具の見直しも考えてみましょう。また、入浴で体を温める、軽いストレッチをする、日中に少し日光を浴びることも、睡眠リズムを整える助けになります。

よくある質問
Q. 慢性的な腰の痛みがあるときは、動かさない方がいいですか?
A. 強い痛みがある急性期には、無理に動く必要はありません。ただし、長期間安静にしすぎると筋力が落ち、腰痛が長引くことがあります。
痛みが落ち着いている範囲で、軽いストレッチや散歩から始めることが大切です。「動くと悪化しそうで怖い」という方は、自己流で無理をせず、整形外科やリハビリで運動内容を相談しましょう。
Q. レントゲンで異常がないと言われたのに腰が痛いのはなぜですか?
A. レントゲンでは骨の形や大きな変形は確認できますが、筋肉、神経、椎間板、炎症の状態までは十分にわからないことがあります。
また、慢性的な腰の痛みは、画像だけでは説明できないこともあります。姿勢、筋力、歩き方、生活習慣、睡眠、ストレスなどが複雑に関係している場合もあります。痛みが続く場合は、必要に応じてMRI検査や詳しい診察を受けることが大切です。
Q. 慢性的な腰の痛みは手術しないと治りませんか?
A. いいえ、慢性的な腰の痛みの多くは、まず保存療法で改善を目指します。薬、リハビリ、運動、生活習慣の見直し、装具などを組み合わせることで、日常生活が楽になる方は多くいらっしゃいます。
ただし、足のしびれや力の入りにくさが進んでいる場合、歩行障害が強い場合、排尿・排便の異常がある場合は、早めに専門医へ相談してください。状態によっては手術を含めた治療選択が必要になることもあります。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて「再生医療」という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体が本来持つ自然治癒力を引き出し、関節や組織の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を点滴で投与することで、膝や股関節だけでなく、腰痛などの慢性疼痛に対しても炎症を抑えたり、組織の修復を促したりする効果が期待されています。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無を医師がしっかり診断したうえで治療を検討することが大切です。

まとめ:慢性的な腰の痛みは、年齢のせいと諦めないでください
慢性的な腰の痛みは、筋力低下、姿勢の崩れ、椎間板や背骨の変化、神経の圧迫、生活習慣など、さまざまな原因が重なって起こります。
大切なのは、「腰が痛いから仕方ない」と我慢し続けることではありません。痛みの原因を見極め、保存療法、運動療法、装具、生活習慣の見直しなどを組み合わせることで、改善を目指せる可能性があります。
腰痛は、早めに向き合うほど、できる対策が増えます。
朝の起き上がりがつらい、長く歩けない、足のしびれがある、痛みが3か月以上続いている。そのような場合は、ひとりで抱え込まず、整形外科に相談してください。
年齢のせいと諦める前に、今の腰の状態を知ることから始めましょう。毎日の小さな工夫と適切な治療で、腰の痛みをやわらげ、動ける生活を取り戻せる可能性があります。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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